消費税増税を延期することで日本の経済はどうなる? (2016/6/15 JIJICO)
増税延期により日本経済にとってどのような影響があるのか
安倍晋三首相は6月1日、通常国会の閉幕を受けて首相官邸で記者会見を行い、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げを、2019年10月まで2年半延期することを正式に表明しました。この再延期は日本経済にどんな影響を与えるのでしょう。
2019年は東京五輪開催の前年に当たります。日本は現在東京五輪開催に向けて需要が増しており、緩やかな景気の上昇気流の中にあります。また、失業率が過去最低水準に戻るなど、雇用も順調に増えています。少子高齢化による人材難と、時間外労働の短縮による、企業の採用枠の増加により、しばらくは労働者の所得増加が見込まれています。
では、政府が見込んでいる経済成長率はどうでしょう。経済の成長には、企業業績が大きく影響します。企業業績は、内需の増加と、外需によってもたらされます。外需からの業績は、円相場の影響を大きく受けます。
最近の円高により、輸出に関わる企業は来期の利益予想を大きく下方修正しています。
日本経済は年換算で1.5%程度の経済成長率で推移しています。雇用の増大により所得は上向きですが、それが実際の国内消費に結びつくかどうかが鍵になります。
消費税増税の延期により、一旦増税前の駆け込み需要は無くなりました。住宅や、自動車などの耐久消費財購入を急ぐ顧客は既に減ってきています。一方、通常の消費はどうかというと、五輪開催に向けての好景気感が継続しています。また、雇用に関しては上場企業だけでなく、地方の雇用も増大しています。人手不足の状態が続いているのです。
増税延期による国債格下げは行われていない
では、企業の業績に大きく影響を与える、円ドル為替相場はどのように推移していくでしょう?現在、日本企業が好ましいとされている円ドル為替相場は、1ドル120円程度だと言われています。日銀がマイナス金利政策で株高円安を作り出そうとしていますが、今のところ大きな成果をあげていません。しかし、消費税増税延期における円ドル為替相場への影響はほとんど見られていません。
今回、消費税増税延期で懸念されていたのは、国債の評価の格下げでした。日本国債は現在、上から5番目のA評価でしたが、6月2日現在国債の格下げは行われてはいないようです。
日本の将来のためこれ以上の増税延期は許されない
結論として、東京五輪開催への好景気感が内需を牽引していく傾向は続いていくでしょう。しかし、消費税10%への増税は、国際協約というだけでなく、国の歳出と債務を均衡させていくという目的のもと、必ず実行されるべき方策です。
日本経済がオリンピック景気の好影響を受けているこの期間に実施がされないと、増税する機会を失ってしまいます。次回は、絶対に延期できない。このことだけは、政府が肝に銘じるべきです。
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