神戸から東北へ「自立」を目指した支援を継続 スポーツ×復興。アシックスがイベント開催 (2016/3/31 東北復興新聞)
3月7日、株式会社アシックスの主催する「東北復興あすへの集い in TOKYO-これまでの5年と未来に向けて-」が開催され、NPOやスポーツの関係者ら約100名が参加した。
スポーツを通じた復興支援活動を行う団体や元アスリートによるパネルディスカッションでは、マラソン大会の開催による観光振興、産業振興に取り組む一般社団法人東北風土マラソン&フェスティバルの竹川隆司さんが「マラソンをきっかけに東北を知った方が、来場できなくても繋がり続けられる、東北の食や日本酒がグローバルブランドとなるための大会として続けていきたい」と発言。
ヤフー株式会社で、宮城県での自転車イベント「ツール・ド・東北」の運営に携わる足達伊智郎さんは「ヤフーは社会の課題解決エンジンを目指しており、震災からの復興こそ日本最大の課題解決という思いから、10回は『ツール・ド・東北』を続けると宣言している。年間を通してサイクルツーリズムに取り組もうという機運が、開催地の自治体から出てきた。今後は岩手、福島でも開催を目指したい」と、スポーツを通じた地域活性化の広がりに手応えを感じている。
シドニー、アテネ、北京と3大会連続でオリンピックに出場した元競泳選手の中西悠子さんは「東北や日本がもっと活性化していくためにスポーツ選手をイベントなどに呼んで、使って欲しい」と話した。
「スポーツは勝ち負けがあるからこそ、悔しいとか嬉しいとか気持ちが見る人の心を動かす」というのは、福島県いわき市出身で震災後に一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションを設立し福島市の屋内運動施設「キッズパーク」の運営や、子どもがスポーツに親しむきっかけ作りに取り組んできた諸橋寛子さん。今後は直接的な支援ではなく自立支援に力を入れ、子どもを持つ親に向けた健康、発達に関する情報提供などを行いたいという。
神戸から東北へ アシックスの継続的支援
アシックスは、継続的震災支援プログラム「A Bright Tomorrow Through Sport―あしたへ、スポーツとともに―」を実施しており、震災孤児が19歳になるまで継続的にスポーツ用品を提供する活動や、東北の子どもを神戸に招待し、震災から蘇った神戸の街の様子を見てもらうプログラムを行っている。
また、東北各地で開催するスポーツイベントの支援も行い、大規模イベントだけでなく、石巻市雄勝町の運動会や大槌町のバスケットボール大会など、地域のスポーツ大会にも関わっている。いずれも、スポンサーとして資金を出すだけでなく企画や運営に携わったり、CSR部門だけでなく一般社員の参加を募ったりと、深く入り込んで関わっていることが特徴だ。メインスポンサーとなっている東北風土マラソン&フェスティバルでは、2015年4月の開催時に社員約40人以上が参加した。今年4月の大会も同規模での参加を予定している。
アシックスの本社は、1995年の阪神大震災で被災した兵庫県神戸市にある。20年の街の歩みを見てきたからこそ感じている支援のポイントは「継続」だ。
アシックスCSR・サスティナビリティ部長の吉本譲二さんはイベントの締めくくりに、「これからの支援から徐々に自立支援へと移っていこうと考えている。各県のNPOなどと協力してスポーツイベントを開催しているが、それを地元の方によって継続的に開催できるものにしていきたい。アシックス1社でできるものではなく、今後も皆さんと協力しながら東北を力強くバックアップしていきたい」と挨拶した。
「スポーツ」を切り口に、自立に向けた支援を。アシックスと東北との関係は続いていく。
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