「これからの都市に必要なエリアマネジメントとは何か」をまちづクリエイティブの寺井さんとHITOTOWAの荒さんが探るインタビューシリーズが始まります (2016/1/21 マチノコト)
2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えることもあり、各地で再開発が進められています。
こうした開発では、単に作るだけではなく、その後の維持管理・運営(マネジメント)の方法、つまり「育てること」までを視野に入れること、そして、既成市街地等においても維持管理・運営を行い、地域を「育てること」への注目度が高まっています。
こうした考え方や手法は「エリアマネジメント」と呼ばれており、そのアプローチは様々。そこでマチノコトでは、ひとつのインタビューシリーズをスタートさせます。
まちづクリエイティブの寺井元一さんとHITOTOWAの荒 昌史さんと共に、エリアマネジメントに関わるプレイヤーにインタビューしていき、「つづくまちの開発論」と題して、これからの日本に必要な都市開発、エリアマネジメントとは一体どういったものなのかを探っていきます。
まちづクリエイティブとHITOTOWA
まちづクリエイティブとHITOTOWAは、これまでマチノコトにも登場してもらったことがある、まちづくりや地域、コミュニティデザインといった領域で活動するプレイヤーです。
今回は、シリーズのキックオフ記事として、お二人がどうしてこの企画をスタートするに至ったのかを伺っていきます。
――どういった経緯で共同で企画をやろうという話になったんですか?
寺井さん「まちづクリエイティブでは、千葉県松戸市の松戸駅前エリアで『MAD City』という活動を行ってきました。このプロジェクトは、松戸という街の一角で、ずっとその土地に居るまちづくり会社を目指して始めたもの。
「まちづくり」と言われる仕事の多くを占めるコンサルタント業は、短期間でその街の事業づくりを応援し、それが終われば次の街に移っていくところがあります。まちづクリエイティブはその真逆をやろうとしたんです。4年ほどやってきてありがたいことに、不動産など、MAD Cityに暮らす人々に提供するサービスの収入で事業が自立するようになってきました。
この収入は民間企業のものですが、私たちは一方で、これを税金に近いお金だと捉えて使うべきだと感じています。このお金を預かって、どうMAD Cityを運営していくか。それを考えていく上で、自分たちにはないサービス内容を持っている人たちと話をしようと考えるようになりました。」
そう考えた寺井さんは、自分たちと荒さんたちがやっていることは、ちょうどよく自分たちとはずれていることに着目。
荒さん「HITOTOWAではマンション単体のコミュニティづくりから、より広域なエリアマネジメントを受託することが増えてきました。そのなかで特にソフト面のコミュニティをつくって地域の課題の解決や、活性した状態がつづく仕組みをつくっています。
まちづクリエイティブとはやり方は異なるけれど、互いに都市の開発の足りない部分を補完しようとしています。寺井さんとは10年以上の旧知の仲で、都市の足りない部分を埋めていくような活動を一緒にやっていければと話をするようになりました」
デベロッパーの人たちの話が聞きたい
――今回、インタビューの対象はデベロッパーの方々がほとんどですが、なぜデベロッパーに関心を持ったのでしょうか。
寺井さん「まちづクリエイティブが最初に立ち上げた企業ウェブサイトには、「地域デベロッパーになりたい」ということを書いていたんですね。
当時、具体的に見えていたのは、地域で活動するアーティストやクリエイターといった人たち。まちづくりの現場では、お金がなさそうで重視されていない人たちが、実は地域にとってものすごく大切なのではと考えていたんです。
実際にまちづくりの業界を見たとき、アーティストやクリエイターのための支援を一番しているのは、森ビルや三菱地所、三井不動産のような大手デベロッパーだったりします。大手のデベロッパーは長期的な視点も持っていますし、シンパシーを感じる部分も実は多かったんです」
荒さん「普段、仕事でデベロッパーの方々とご一緒することがとても多いのですが、迷いを持ちながら仕事している方も多い印象を受けます。今の住宅は、家が不足していた時代のソリューションがそのまま続いています。その結果、家が余っている。
社会的価値観と提供している価値にギャップがあるんですよね。でも、このギャップがなかなか埋まらない。シェアや古いものを残す、といった価値観が注目されるようになってきている一方で、提供しているサービスはそうではなかったりする。
既存のサービスのほうが売れてしまうという現状もあったりするので、より迷いますよね。デベロッパーの人たちが、今後どうしていくべきなのか、が気になっていて」
小さなプレイヤーと大きなプレイヤーの交流
――インタビューを通じて、どういったことを探っていきたいとお考えですか?
寺井さん「かつては、フリーランスのようなはたらき方をする人はごく僅かで、就職した人は定年まで勤めあげるのが当たり前でした。今では、若手社員が勤めあげることも稀になり、フリーランスや起業というはたらき方も珍しくない。さらに言えば社外に出た人間が、社外ならではの経験を積んで再び戻ってくることもあります。
こうした変化は各所で起きていて、個人や小規模の事業体が、トライ・アンド・エラーの一角を担うようになっています。これからは、小規模の事業者が得た知見を、大きな事業者とどう結びつけていくかということも重要になってくると感じます。そう考えたときに、僕らのような小規模なまちづくり事業者と、ディベロッパーの世界がどう繋がるのか、改めて探ってみたいと思いました。」
荒さん「今後、都市の再開発が進んでいく中で、高層化が進み、住宅と商業、さらには医療の複合施設が増えていきます。そうすると、どんどん街が同じになってしまっていく懸念があります。それに対する危機感はあります。
もちろん、高層化したほうが良いエリアもあると思います。大手デベロッパーは、資金力もあり、技術力もあり、ちゃんと研究もしている。その資産が生かされていないのは、もったいないと思うんですよね。
僕は都市に対して、課題意識はあるけれど、都市や建築学を専攻してきたというわけではありません。自分が持つ問題意識を専門家の人たちにぶつけていくことで、輪郭をはっきりさせていきたいですね」
「世の中のいろんな人たちにもっと「まち」を好きになってほしいんですよね」と語る寺井さん。様々な課題意識を持つお二人が伺っていく色々な方のインタビューを通じて、みなさんにもぜひ街を好きになるきっかけを提供していけたらと思います。お楽しみに!
- junyamori
ジャーナリスト、編集デザインファーム「inquire」代表。1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。未来の探求と社会の編集をテーマに『THE BRIDGE』『マチノコト』『IDENTITY名古屋』『soar』など複数のメディア運営に携わる。NPO法人マチノコト理事、一般社団法人HEAD研究会フロンティアTF副委員