震災に負けない奇跡の浜ユリ、その酵母を使ったビールが釜石に誕生 (2015/11/28 ジモトのココロ)
2011年3月に発生した東北大震災の影響から「来年は咲かないのではないか…」と言われていた花があります。岩手県釜石市の花「浜ユリ」です。岸壁に咲く花のため津波の被害を受け、もう咲かないのではないかと心配されていましたが、その翌年には綺麗な花を咲かせました。そんな震災に負けない力強い浜ユリを使った商品が、地元のビール蔵「いわて蔵ビール」と北里大学の協力によって完成しました。
奇跡の花でビールは作れるのか
北里大学 海洋バイオテクノロジーはこれまで、岩手県釜石地域で県内の有用微生物の研究を行っていました。東日本大震災の津波の影響で研究施設が全部流されてしまい、研究サンプルも殲滅したと思われていましたが、瓦礫の中から発見された冷蔵庫に、岩手県盛岡市にある巨大な花崗岩の割れ目から育った石割桜の酵母がありました。
その酵母を使用したビール醸造の共同研究先として世嬉の一酒造のいわて蔵ビールと出会います。1年間の研究結果の末、東北復興支援ビール「福香(ふくこう)」が完成しました。
この縁をきっかけに、東北復興支援ビールの第2弾として、釜石市の花・浜ユリをつかったビール醸造事業「釜石はまゆりプロジェクト」がスタートします。
地元住民の了解を得て、釜石市佐須地区・蛇島の崖から10輪の浜ユリの花から酵母を採取し、商品開発がスタートしました。
野生の酵母をビールに使うことは珍しいといいます。1年かけて完成した浜ユリ酵母のビールは、釜石市の職員のアイデアから渚に咲くビールとして「渚咲~Nagisa~」と名づけました。そして今年11月20日、ビール完成の発表とともに、販売が開始されました。
浜ユリを意識した深い琥珀色のビールは、女性にも飲みやすいようにフルーティで苦味を抑えた味わいに仕上げました。津波をかぶりながらも強い生命力で再び咲いた浜ゆりのビールは、全国の飲食店ならびに県内の道の駅やインターネット販売で購入できます。
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