ふるさと納税で大ヒット!不況直撃の工場を救った「ままごとキッチン」 (2015/11/9 ジモトのココロ)
宮崎の片田舎にある小さな家族経営の工場が急成長を遂げているという話を入手しました。にわかには信じられないのですが、いま全国で活発に行われている地域活性化事業をきっかけに、さらに成長を続けているというのです。しかも、子供向けに作られたたったひとつの商品だけで、数ヶ月先の予約まで埋まっているというのだから驚きです。
工場の危機を救ったのは、おままごと玩具
そんなミラクルを起こしたのは宮崎県小林市にある「川崎建具店」の川崎賢広さん。先代の父が開業した小さな工場を継いだ当初は、ただひたすらに父の依頼通りに住宅用の木製品を作り続けていたそうです。
しかし2008年の不況の折、工場への仕事は減る一方で、一時は工場をたたむまでの危機にさらされたそう。そんな状況を抜けるきっかけとなったのは、なんと子供向けのおままごと玩具でした。
「お前が木製品を作ったら、俺のショップで売ってやるよ」。子供向け玩具を作る事になったきっかけは、ネット通販ショップ「ホビナビ」を運営する同級生の一言だったそうです。同級生の知恵を借りてデザインを考え、作り始めたのが「ままごとキッチン」でした。
川崎さん自身も、建具以外を作ったことがない中で、試行錯誤してようやく作り上げた完成品第1号は、ネットショップに掲載して数日で友人から「売れたぞ!」との連絡があったそう。
「使う子供のことを考えて、怪我をしないように角を落とし、でも木のぬくもりを肌で触って感じられるような商品にしました。木目の美しさや自然の匂いを感じてもらえるように、余計な加工はあえてしていません」。
「見た目の美しさは、こだわりのドイツ製もみの木のおかげです。白っぽい優しい色味のあるものがいいと思い、この材木を選びました。以前は桐を使っていたのですが、こちらの方が黒く変色しやすい桐よりも見た目も良いし、適度に重さがある点も気に入っています。樹齢100年以上のものを使っていて、寒い地域で育った木ということで、とても丈夫なんですよ」。
ドイツ製といっても仕入先は地元の工場。その工場も、以前は宮崎県のもみの木を卸していいましたが、今は地元の木が激減してしまったこともあり、輸入品を仕入れるようになっているそうです。
川崎さんの作るままごとキッチンは、定価で3万円以上と、子供のおもちゃとしては決して安くはない商品です。にもかかわらず数日で、しかもネットショップという現品に触れることのできない方法でも販売できた。川崎さんのこだわりが伝わった結果に違いありません。
ふるさと納税で嬉しい悲鳴も
徐々に売れ行きが伸びていった川崎さんのままごとキッチンは、地方紙や雑誌などで紹介されるほどの人気商品にまで成長しました。そんな中、新たな試みとしてチャレンジしたのが、地域活性化事業のひとつ、「ふるさと納税」への参画です。
宮崎県小林市にふるさと納税をすると受け取れる返礼品のひとつとして、2014年11月からままごとキッチンが登場しました。きっかけを作ったのは、小林市市役所で、ふるさと納税のプロジェクトなどを担当する佐藤友和さん。「彼の情熱はわかりました。でも、これ(ままごとキッチン)はヒットするかもしれないという予感がよぎったんです」。そんな佐藤さんの提案によって、ままごとキッチンを返礼品のひとつとして取り入れました。
寄付金額10万円以上~11万円未満という、ふるさと納税の中でも高額な返礼品のひとつとして受け取れることになったままごとキッチン。2014年度はクリスマスプレゼントの時期と重なり、一時はネットショップでの販売をストップせざるを得ないほどの申し込みが入ったんだとか。
「日のあたらないところでコツコツやっていたものが、ふるさと納税でガラッと変わりました」という川崎さんの言葉通り、2015年の年末を控えるこの時期も、既にふるさと納税経由での注文が立て続けに入っているそうです。
「ままごとキッチンを手伝ってくれる人が昨年から一人減ってしまいまして、この年末はひたすらままごとキッチンを作り続けることになりそうですよ」という嬉しい悲鳴も漏れていました。
お客さんの言葉が一番の活力に
「ちょっと待っててくださいね」と、川崎さんが奥の部屋からおもむろに持ってきたのは、ふるさと納税をきっかけにままごとキッチンを受け取った方からの感謝のお手紙です。
「サンタさんからのプレゼントだと話して娘にプレゼントしました。私(母親)の小さな頃にもこんなすばらしいおままごとセットで遊びたかったなあと羨ましく思います」というお手紙とともに、ままごとキッチンで遊ぶお子さんのお写真も同封されていました。
ブログで商品を紹介をしてくれる購入者の方もいらっしゃるそうで、「こういうお手紙やあたたかい言葉をいただけるので、お客さんには感謝しています。頑丈に作っているので、いずれ親から子へと引き継いで遊んでもらえたら一番いいですね」と川崎さん。
購入される方は首都圏の方が多いんだとか。やはりお子さんへのプレゼントに贈る方が多いのかと思いきや、意外にも部屋のインテリアやディスプレイに使う人もいるそうです。
「リビングに飾ってママ友に自慢するんです」という方や、「本の収納に使っている」という方もいるようです。確かに、上質な木製家具とひけを取らないほど、丁寧に上品につくられたままごとキッチンは、お部屋にあるだけで優しい雰囲気を感じられそうです!
年末に控えるクリスマスを前に、既に目一杯の注文を抱える川崎建具店。工場のカレンダーには、毎日納品した台数が記入されていました。「すべて手作りなうえ、1台しかない機械を父の作業と交代しながら使っているので、毎日5~6台作るのが限界ですね」。
ふるさと納税では、今年のクリスマスイブまでに到着する納品数が残りわずかとのこと。お子さんへのプレゼントをお考えの方は、早めのお申込みをした方が良さそうです。
ふるさと納税をきっかけに、新しい販路開拓ができた川崎建具店の今後の目標は「新しい工場をたてること」だそう。ご自宅と併設された今の工場も、まるでジブリに出てきそうな趣ある素敵な工場なのに…と思ってしまいましたが、これをきっかけに小林市発の木製玩具が日本中に広まる日を期待しています。
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