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“前代未聞”質問漏洩問題の本質 (2019/11/8 衆議院議員 中谷一馬)

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 森ゆうこ参院議員(国民民主党)が政府側に通告した質問内容が事前に流出したとされる事例に関して、質問主意書を提出した中谷一馬衆院議員(立憲民主党)に寄稿していただきました。

中谷一馬 衆院議員

中谷一馬 衆院議員

前代未聞の“流出”

 過去に国会議員が省庁に通告した質問要旨が、当該国会議員の許可なく質問前に公に広く流出および漏えいした事例は本件以外には誰も知りません。

 武田良太国家公務員制度担当大臣も「本件以外に承知していない」と質疑の中で述べられておりましたが、普通に考えればこの質問漏洩は前代未聞の大事件だということを政府は自覚する必要があります。

 現政権になってから改ざん、隠ぺい、ねつ造、漏えいなどの事件が常態化し、あたりまえのようになっておりますが、「国家公務員法第100条」には「秘密を守る義務」が記載されており、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」という規定があります。

 「2019年度 人事院の進める人事行政について」という資料にも、冊子に規律の保持という項目があります。この中には、標準的な処分量定の例という項目があり、故意に行った秘密漏洩や決裁文書の改ざんについては、免職、または停職という項目にマークが示されており、「秘密を守る義務に違反した場合などは刑事罰の対象になります」と記載されております。

 守秘義務違反は刑事罰の対象にもなる大変重要な事でありますから充分な配慮が必要なことは言うまでもありません。

武田良太 国家公務員制度担当大臣

武田良太 国家公務員制度担当大臣

“秘密”の定義と解釈

 一宮なほみ人事院総裁も答弁をされていましたが、本条の「秘密」とは、非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるもののことを言うとされております。

 議員から通告を受けた質問要旨がこの秘密に値するということは、私は当然であると思います。当たらないという意見は、国権の最高機関である国会を形成する国民の代表である議員の質問権をあまりにも馬鹿にしていると思います。

 また、本件に関しては、自民党の森山裕国対委員長も「事前に質問通告が漏れ、質問の前に批判にさらされるようなことがあっては、国会議員の質問権という問題を考えるときに遺憾だ」と述べられており、武田大臣も「質問権は絶対に守らなければならないものだ」と賛同されております。

 この点に関しては私も森山国対委員長、武田大臣と同感でありまして、少なくとも誰かのミスを揉み消すために国会議員の質問権に関する解釈を恣意的に捻じ曲げようとする卑しい論調があるとすれば、それは言語道断であります。

 そもそも参考人招致を求めている人に議員の許可なく質問要旨を事前通告してもよいとされている根拠(エビデンス)もないのに、個々の裁量で勝手に質問を流出させており、時の権力者が自分たちの裁量で自分たちにとって都合の良い解釈で物事を進める行政には違和感があります。

 国家公務員は、憲法第15条により「全体の奉仕者」として公正・中立な職務遂行が常に求められております。そして公務員制度改革は、行政ニーズに即応した人材を確保・育成し、公務員が国民全体の奉仕者として、志を持って行政に専念できる環境を整備することにより、政府のパフォーマンスを高めることを目指すものでありますから今後こうした問題が起こらないようにシステムを改善する必要があると思います。

一宮なほみ 人事院総裁

一宮なほみ 人事院総裁

“秘密”に関する取り扱い

 その中で、今回の事件では何を秘密事項とするか内部規定や例示すら定めておらず、秘密の保持を組織的に怠っていた状態があります。まず政府としてはこのあたりからしっかりと改善をして、秘密や守秘義務に関する意識をしっかりと持つべきです。

 また、北村誠吾大臣が先日「私人が質問内容を第三者に伝えることについて定めがない」と答弁されましたが、国家戦略特区ワーキンググループの座長代理など、今回のように様々な機微にふれる情報を取り扱うことになる人物が、無制限に第三者へ情報を流すような状況を未然に防ぐことが重要だと思います。

 そうした観点から今後は、政府や大臣から委嘱する民間有識者にも秘密保持の覚書や守秘義務契約をお願いすることを検討すべきです。

 また先日、北村大臣が直接の漏洩が判明した場合は「責任を取る」と仰いました。しかしながら政府が自分たちのしでかしことを自分たちで調査して大丈夫ですと言ってもあたりまえですが、説得力がありません。

 国民からの疑念を晴らすためにも公平中立な第三者機関への調査を依頼して、ことの真相を明らかにしていただいた方が政府にとっても国民にとってもよいと思いますので、引き続き対応を求めて参りたいと思います。

◆記事の詳細については衆議院 内閣委員会(2019年10月30日)の質疑をご覧ください。

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