特権ではない前例を積み上げて、子育てしやすい議会へ―WOMAN SHIFT座談会・後編 (2018/1/24 WOMAN SHIFT)
――どういう議会だと子育てと両立しやすい?それぞれ希望するもの、やめてほしいものに投票してもらいました。
- 公費で託児(熊本の市議さんが求めていたところ)
希望する 0票、やめてほしい 3票 - 控室で自費でシッターやファミリーサポートの利用
希望する 3票 - 空いている部屋を使わせてもらう
希望する 6票 - 議会規則を変える
希望する 1票 - イベントなどへの子連れ参加
希望する 4票 - 本会議や公式会議への子連れ参加
希望する 0票、やめてほしい 1票
- 有里
- 公費でってすごく微妙なんですよね。庁舎に保育所をつくるのはすごくやりたくて、実際に新庁舎にできました。ですが、ちいさい子ども連れて、荷物持って満員電車にのって、連れてきて議会何時に終わるのがわからないのに預けておいて、やっぱり現実的ではありませんでした。
- 森
- 普通にシッター使うのに区から補助が出る、つまり区民と一緒だったらそれは受けたい。でも、議員のみに託児が付いた場合、落ち着いたら議員特権だと騒がれるよね。
- 鈴木
- そう!区民と一緒だったら、公費使ってのシッター補助とかもあったら嬉しい。ただ、議員のみの特権は嫌。
- 中村
- 「控室」じゃなくて「議員室」にしたほうがいい(※現在多くの地方議会では本会議や委員会の待ち時間等に控えておく部屋という意味の議員控室がありますが、本会議開催のときにしか入れないところもあります)。控室だと公務しか使えないという定義がある。だけど、議員室だと特に問題はない。
- 有里
- うちもです。議会がないときにも働いているので、執務室にしたいという話も出ています。
- 森
- 地方に行くと結構厳密にやっているところもあって、議会が開く日しか、使えないとか。議会の本会議のときの控える部屋だからと。
- 有里
- 控室は会派でつかっているから、連れてくるの気が引けちゃう。
- 子籠
- 新しい庁舎の控室だとパーテーションとかで配置を変えられるので、空いている部屋をそういった場所に使えればいいなと思います。
- 有里
- 地方議員で20~30代の女性は1%以下です。その中で子どもを産んだ人は140人位。まずは東京など都市部から。全国的な議論に発展するのはまだまだ難しいのかもしれない。
- 子籠
- 松本市議会は子ども控室がある。そこで授乳とかもしていいし、預けられる。傍聴者のためが最初の制度設計。無料だけど、そのかわり傍聴者の方と同じで1週間前に言ってくださいというような。そういった傍聴者用の制度設計に乗り出している議会もある。そういったものを議員も使えるようにするというのは、半歩でも一歩でも前に踏み出す事になりうると思う。
参考:松本市議会「議会子ども控室について」 - 鈴木
- 議員活動って議会だけじゃない。保育の点数の点で、そこは少し怖いかもしれない。むしろ、議会の開催中だけ託児室が使えてしまうと、なんとかなるでしょ?と思われてしまうのは困る。無料だとなるとさらに。
(※編集注:保育園に入園するための点数は各自治体によって異なるため新宿の場合ということ) - 森
- 私は就学前の集団生活の機会を親が議員だからといって、子どもが受けられなくなるのはよくない、と思います。
- 南雲
- 同時におかあさんと一緒にいる子どもの権利もあるので、最終的にはどちらか選べるくらいになったらいいと思う。
- 森
-
傍聴者は託児ができたほうがいいのか、一緒に聞けたほうがいいのか、両方あったほうがいいのか?新庁舎の議論をしているところだけれども、その中では親子傍聴室の検討をしている。親子だけではなく、不意に声が出てしまうような障害がある方も使えるような。
議会規則は?豊島は出産事例が2件以上あるのに、出産が欠席の事由に組み込まれていないですね。全国の標準議会規則には、会議を欠席する事由として「出産」が組み込まれている。
- 鈴木
- 規則を変えるフェーズは終わっていて、権利を勝ち取るのではなく、うまくやることが大事なんじゃないかと思う。運用であっても、「うまく」やる。全てルール化することが逆にマイナスになることもあるかもしれない。だから、議場に子どもを連れて行くことのルール化は望まない。
- 南雲
- 逆にルール化されてしまうと、連れてこないことに何か言われそう。女性なんだから子ども産んで当たり前でしょ?とも言われたくない。ルール化せず、ゆるくやっていけたほうがいい。
- 子籠
- 悩ましいところですね。
――理解がある議長のときに、ルールとして固められるとことは固める。該当者がいる場合は実際に実施してみて前例をつくるのも手だし、いない場合にはルールとして整備しておくのも手ですね。私たちにできることはなんでしょうか?
- 森
- 「前例をつくる」子育ては女の人だけの話だけじゃないから、自分も議場に子どもを連れていこうかな!というのは冗談ですけど、理解してもらえないなら炎上したほうが理解してもらえるかもしれない、とは思います。先日、会派の団体ヒアリングのときに娘を同行させてもらいました。
- 鈴木
- 実際の体験をもとに、アドバイスをしまくる!支える側からも、いろいろ聞かれます。
- 中村
- 前例をつくって、発信・共有。できる議会からはじめて徐々に広まっていったらいい!うちの会派メンバーは、私以外は全員子育て中の男性なんです。おもしろいのが、森さんが他の議員のお子さんの面倒をみたりすることもあるので、中野区は男性のそういった事例が結構ありますね。
- 子籠
- 少しずつ形にしていきたい。自分が議長のうちに、変えられるものから。
- 南雲
- 議会の中で前例をつくることもできることの一つだし、区民としてつかえるサービスをつかって、感想を発信する(ファミサポとか)。もう一つは、全然自分の感覚をわかってくれない人というのがネックだと思うので、理解してもらえるよう当事者として伝えて、みんなで実現していければいい。
――うまく先輩方や当事者じゃない人にわかってもらって、巻き込んでいくのは大事ですね。
- 森
- 議会の中でセクハラが・・・という話もあったけど、実は支援者や区民からもセクハラがあったように、子育てと議会活動の両立でも同じような構図があると思う。だからこそ、ツイッターで子どもと遊んでいることを発信したりを積極的にやっている。
- 有里
- 議会規則を作りたいと思ってはいるけど、今まで運用でやってきたところもあるので、先輩たちのやってきたことを尊重する必要もある。でも、他の議会が当たり前にやっていることだと、自分の議会でも何の問題もなく変わっていくことも多い。新しい年代のネットワークによって、周りの議会はやっているのになんでやっていないの?って言われるくらいの状況になってほしい。こういうネットワークを増やしてほしい!
- 中村
- 特に23区は横並び意識が高い!市部も26市で比較するよね。
- 有里
- マスコミの議会改革ランキングに、かなり議会の人は注目しているので、その項目に子育てしやすいかとかも入れてほしい。育児項目をマスコミ側で入れてもらえると大変ありがたい。豊島区は議会報告会やっているとポイントが上がるとか、そういった項目に、子育てしやすさとか出産議員がどれだけいるか?とか。
最後に
熊本の件は、今回参加したメンバーは自分だったらやらないという方ばかりでしたが、せっかくここまで大きなニュースとなったこともあり、それぞれの議会や立場で取り組みをしていきたいと思います。
ルール化するということだけではなく、規則に明文化することも重要ですが、0か100かではなく、前例を少しずつつくり共有していくことで、半歩でも前にすすめていくことが私たち政治家の仕事でもあります。
また、今後「女性議員のための結婚・妊娠・出産ハンドブック」をWOMAN SHIFTとしてはつくっていきたいと考えています。ぜひ、対象者の皆様、ご協力いただけると幸いです。
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