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町村議会議員の政務活動費、大半は支給されず平均月額は1万円以下 (2017/12/20 政治山 市ノ澤充)

関連ワード : 地方議会 政務活動費 

 2012年9月の地方自治法改正(2013年3月1日施行)により、政務調査費の名称は「政務活動費」に、交付目的は調査研究から「調査研究その他の活動」に資するためと改められました。具体的に政務活動費を充てることのできる経費の範囲は条例によって定められています。

 かつての政務調査費、そして現在の政務活動費の不正受給については枚挙にいとまがありませんが、こと不祥事にまつわる報道等では、すべての議員が高額な報酬に加えて第2の給料と揶揄される「せいかつひ」を受け取っているかのような、誤った印象を与えてしまうケースが少なくありません。そこで本稿では、政務活動費の交付状況と議員報酬の実態について紹介します。

町村議会議員は大半が受け取っていない

 全国町村議会議長会が公表している「町村議会実態調査結果の概要」によると、2016年7月1日現在、全国927町村のうち政務活動費に関する条例を制定しているのは194町村(20.9%)で、月額換算した平均交付額は9,541円となっています。

 約1万1千人の町村議会議員の大半は政務活動費を受け取っておらず、交付している自治体でも約半数が月額1万円に満たないというのが実状です。

政務活動費の1人あたり交付額月額

月額10万円超えの基礎自治体は4%

 次に、一般的に町村よりも予算規模が大きくなる市区の議会を見てみます。全国市議会議長会が公表している「市議会の活動に関する実態調査結果」によると、2015年12月31日現在、全国813市区(総数は814)のうち政務活動費が交付されていないのは100市で、交付されている713市の月額は、概ね自治体の規模に応じる形で月1万円~5万円の議会が多くなっています。月額が10万円を超えるのは70自治体で、町村と合わせた全国の基礎自治体(1741)のうちわずか4%にとどまっています。

政務活動費の議員1人あたりの交付月額

同じ議会の議員で交付額が異なることも

 続いて47都道府県を見てみると、すべての議会で政務活動費は交付されており、その月額は東京都の60万円を筆頭に、平均30万円以上となっています。

 また、議会によっては会派への所属の有無によって交付額が異なるケースが散見されますが、その場合は会派に所属しない議員が減額されています(福岡市や柏市、京都府や京都府下の一部など)。

月額報酬の平均は町村議21万円、市区議42万円

 さらに報酬について見てみると、町村議会議員の平均月額は、議員21.3万円、議長29.0万円、副議長23.4万円でした(「町村議会実態調査結果の概要」)。この他に期末手当が平均3.3か月分加算され、平均年収は約330万となります。

 また、市区議会議員の報酬の平均は、議員42.1万円、議長51.7万円、副議長45.6万円で、最高額は横浜市の95.3万円、最低額は北海道夕張市の18.0万円でした(「市議会議員報酬に関する調査結果」)。

 なお、都道府県議会議員の報酬は平均で約80万円、最高額は東京都の102.2万円、最低額は山形県の74.6万円でした。

不祥事への怒りで本質を見誤ってはならない

 政務活動費と議員報酬の実態を見てみると、約3万3千人の地方議員のうち3人に1人は政務活動費が交付されていないこと、「第2の給料」と言われるほどの規模で交付されているのはごく一部に過ぎないことが分かります。

 また、上記の報酬額から各種税金や年金、健康保険料が差し引かれるわけですが、2011年には議員年金が廃止され、退職金は支給されず、健康保険は国民健康保険への加入であるため、議員報酬だけでは不足する議員も少なくありません。

「議員年金廃止から5年、いまどき地方議員の将来事情」

 さらに言えば、都議会で1日1万円以上支給されていたことから「第3の給料」などと批判された費用弁償(議会や委員会への出席に応じて交付)は約3分の1の議会で支給されていますが、その平均は1日1,500円ほどで、多くの場合は交通費の実費の範囲に収まっています。

 懐事情が厳しいからと言って不正受給が正当化されるわけはなく、使途の説明責任を免れるものでもありませんが、物事の一面だけを見て感情的に批判してもより良い制度に改めることはできません。また、議員という職を貶めることは、議員を選ぶ私たち自身を貶めていることに他なりません。

 批判の高まりを受けて政務活動費を減額し議員報酬を増額するような小手先の対応ではなく、なぜ議員活動に政務活動費は必要なのか、必要であるならば適正な額はいくらなのか、どのように運用すれば有権者の信を得られるのか、堂々と主張し開かれた議論が行われることを期待します。

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