参議院議員選挙2016
広すぎて回り切れない合区、ネット選挙浸透する?―鳥取・島根選挙区 (2016/7/6 島根大学研究・学術情報機構戦略的研究推進センター特任助教 本田正美)
私の所属する島根大学が所在する島根県とお隣の鳥取県が合区されることになりました。
2015年に行われた公職選挙法の改正を受けて、今回の参議院選挙から、鳥取県と島根県、徳島県と高知県が1つの選挙区になったのです。これが合区と呼ばれるもので、1票の格差を是正するために、隣接する2つの県がひとつの選挙区とされました。
特例で選挙カー2台の使用可
人口は、島根県が約69万人、鳥取県が約57万人。面積は、島根県が約6,700キロ平方メートル、鳥取県が約3,500キロ平方メートルとなっており、人口・面積ともに島根県が上回っています。
島根県の西端から鳥取県の東端までは300キロを超え、これは東京から名古屋間に相当します。その選挙区の広大さもあって、通常は1選挙区1台しか使用できない選挙カーが特例で2台使用できます。その他、一般の選挙区では期間中に5回可能な新聞広告の掲載が10回になるなど選挙運動の数量に係る制限が一般の選挙区の倍になる特例が認められるものの、選挙期間は全国と同様です。島根県には島嶼(とうしょ)部もあり、期間中に選挙区内を隈なく回ることすら困難を極めるような難しい戦いが候補者には強いられています。
七つ道具は両県で配布
大変なのは候補者だけではなく、事務を担う選挙管理委員会も同様です。
法改正を受けて、2015年10月に、「鳥取県及び島根県参議院合同選挙区選挙管理委員会」が設置されて、実際の選挙に備えて準備がなされてきたはずです。立候補の届け出は島根県庁で受け付けられましたが、選挙事務所の表札など選挙に際して提供される「七つ道具」は合区の両方の県で配布されました。島根県庁には鳥取県の担当者が詰めて、情報共有を図っていたようです。
選挙には各種の「ローカルルール」のようなものがあるので、その擦り合せに選挙期間中も選挙管理委員会は追われているのではないかと想像します。
候補者は、届け出順に、国領豊太、福島浩彦、青木一彦の3氏。
国領氏は島根県松江市氏出身で、幸福実現党の公認候補。2012年の衆議院議員選挙で同党の比例中国ブロックで立候補したのに続いての国政への挑戦。
福島氏は鳥取県米子市出身で、千葉県我孫子市の市議や市長、消費者庁長官、中央学院大学教授などを務め、野党の統一候補として無所属で立候補。
青木氏は島根県出雲市出身で、島根選挙区選出の現職参議院議員で国土交通大臣政務官などを務め、2期目を目指して自民党公認候補として立候補。
広すぎて回り切れず…合区からネット選挙浸透も?
なお、鳥取選挙区選出で今回改選となる予定だった議員の浜田和幸氏は、2010年の選挙で自民党から公認を得て当選するも、以降、国民新党などを経て、今回は無所属で東京選挙区から立候補しています。
そこで、自民党は現職の青木氏を擁立し、野党は福島氏を擁立。そこに幸福実現党の国領氏も挑んでいくという構図です。
島根大学のある松江市内でも、選挙カーは見かけませんし、候補者の演説の機会にも私自身は接していません。候補者の情報はWeb経由ということで、合区からネット選挙が浸透していくのかもしれません。
- 著者プロフィール
島根大学研究・学術情報機構戦略的研究推進センター特任助教 本田正美
1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、島根大学研究機構戦略的研究推進センター特任助教。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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