子供にツケをまわさない!公会計のあり方を問う(2/2) (2014/8/5 政治山)
自治体経営そのものも民営化できる
2日目の講義ではじめに登壇したのは、アメリカと日本でPPP(パブリックプライベートパートナーシップ、公民連携)の研究と実践を重ねる、K.サム田渕東洋大学大学院教授。
2005年12月に市政全体を民間企業に委託した米ジョージア州サンディスプリング市における先進的な取り組みについて、「PFI(プライベートファイナンスイニシアティブ)では不十分。企画段階から民間がかかわるPPPなら自治体予算も職員数も半分以下に減らし、かつ新たな雇用を創出し住民満足度を向上させることが可能」とし、その成果を紹介した。
国内では2007年に岩手県紫波町が東洋大学と協定を結び、2009年には「紫波町公民連携基本計画」を策定、日本初のアメリカ式PPP開発が現在進行しているという。
また、複雑多岐にわたる自治体経営のプロとしてシティマネージャー制度の必要性を説くとともに、「議員ははるかな高みから首長の行政運営をチェックしなければならない」とし、住民の代表であり公僕でもある首長と議員の役割について見直すべきと主張した。
コウノトリのエサ代は3500万円
次に登壇した野口理佐子 人と自然の研究所代表(一般社団法人C.W.ニコル アファンの森財団理事・事務局長)は、生物多様性と環境の視点から税金の使い道について問題を提起した。
野口代表は「地球上の生物は既知数で約170万種。今は1年間に4万種が絶滅している。いったん絶滅したり絶滅の危機に瀕した生物を復活させ保護するには莫大なコストがかかる」として、日本トキやコウノトリの事例を紹介。中長期的に見れば生態系を損なわない都市計画こそが自治体財政の健全化につながると結論付けた。
子供にツケをまわさないための公会計を
続いて、財政研の事務局を務める日本税制改革協議会(以下、JTR)内山優会長から、小さな政府を目指すJTRの成り立ちと「子供にツケをまわさない!」という理念について解説があり、増税など次世代にツケをまわす政策に反対の意思を表明する「納税者保護誓約書」に多くの首長や議員、候補者がサインしている現状が報告された。
会の最後には、栃木県大田原市の実際のバランスシートを参考にしながら、吉田代表の手引きで参加者自身がバランスシートを作成した。
主体的な政治参加は「知る」ことから始まる
今回が2度目の参加となる県会議員は、「公会計のあり方について体系的に学べる機会は少ない。もっと多くの人に会計を通じて行政や議会の実状を知ってほしい」と、同僚の議員を連れて再度参加したという。
情報公開やオープンデータの推進などで行政に関する情報はこれまでより身近なものとなったが、その情報をどのように読み解けば本質を理解することができるのか、といった視点もこれからは重要となるだろう。
財政研は年4回開催されており、次回は10月に行われる予定とのこと。また、要請があれば地方での開催にも応じている。
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