【社会】参院選終わるまで待った? 東電の情報発信姿勢を海外紙が批判 NewSphere(ニュースフィア) 2013年7月25日
東京電力は22日、福島第一原子力発電所の観測用井戸から放射性物質が検出されている問題で、「汚染水が海に流出している可能性」を初めて認めた。ただ、今回の汚染が事故直後の放射性降下物が原因か、または他の原因で最近漏れたのかは不明だとしている。
また、地下水の水位が潮位に連動していることや、港湾内の海水に含まれる放射性物質の濃度が1リットルあたり2300ベクレルまで上昇したことから、「港内の海水と地下水が行き来している」との見方を示した。
なお原子力規制委員会は10日、東電に対して「海洋漏れが疑われる」と指摘したが、東電側は証拠がないとの見解を述べていた。
茂木経済産業相は23日、「データ開示が大変遅れたことは非常に残念だ」と批判した。
海外各紙は、対応の遅さなど、東電の不誠実な姿勢を否定的に報じている。
東電の鈍い対応
東電は先週分析を終えていたにかかわらず、公式公表を遅らせた。その理由として、21日の参院選が終わるのを待ったのではとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。
また今回の問題は、安倍政権が推進する、成長戦略に盛り込まれた「原発再稼働」をめぐる議論に影響する可能性があると同紙は報じた。調査によると、国民の半数以上はこの再稼働に反対しているという。
「東電はなぜ漏れを認めることにそんなに慎重だったか理解に苦しむ」との東京海洋大学の神田穣太教授のコメントをブルームバーグは掲載した。福島事故の周辺海洋への影響を研究している専門家にとって、海洋漏れは常識だったという。
東電の過去の発表
東電は過去にも4度、海洋漏れの可能性に触れてきたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。ただ、過去の場合は原因を特定して対応ができたが、汚染水がどこから来るかが不明なのは今回が初めてだと同紙は指摘した。
最近では昨年4月に、東電は「12トンの汚染水が配管から漏れ出し、海に流出したとみられる」と発表していた。
フィナンシャル・タイムズ紙は情報開示の問題は過去にもあったと指摘。つい先週も、専門家の指摘で推計方法を変え、甲状腺被ばく者の作業員数を10倍に増やしたばかりだと報じた。
魚汚染の問題
福島県漁連の野崎哲会長は「政府に(2011年12月の)事故収束宣言の撤回を求めたい」と語った。同連合内では東電発表に反し、漏れを疑う声が上がっていたという。
一方、魚汚染問題は海外に広まっているとブルームバーグは指摘した。
福島第一原発の事故後、2011年8月に米カリフォルニア州サンディエゴ沖で水揚げされたマグロから検出された放射性セシウムが、前年の10倍であることが判明した。これについて、2012年5月発行の全米科学アカデミー紀要に発表された研究によると、放射能は福島からという「明確な証拠」があるが、人体に有害なレベルではなかったという。