マイナンバー特集「マイナンバー導入前夜」
税理士・社労士に委託すれば安心というものではない (2015/12/9 政治山)
総務省は当初、マイナンバーの通知カードを11月中に全世帯へ配布する予定でしたが、12月にずれ込むと発表しました。また、誤配や返送が相次ぎ、来年1月からのスタートを前に早くも対応の遅れが出ています。
今後はもっと大きな混乱が起こるかも……
こうした事態を早くから予測するとともに、「今後はもっと大きな混乱が起こるかもしれない」と警鐘を鳴らしているのが、社会保険労務士でマイナンバー管理運用コンサルタントの萩原京二さんです。今年6月から中小企業を対象にしたマイナンバー周知セミナーを月2回のペースで開催し、啓発活動にいそしんでいます。
10月11日に出版された『誤解だらけのマイナンバー対策』(幻冬舎)では、各企業が社員などから個人番号を取得・保管する「管理ステージ」だけでなく、番号を取り出して、役所などの第三者に渡す利用・提供の「運用ステージ」に注意する必要がある、と説いています。
具体的には、管理を完全に自社で対応する場合は、紙媒体での保管かPCデータでの保管か、利用する際は手書きかPC入力か、提供する際は電子申請か対面、郵送か、履歴管理は自動か入力か、手書きかといった11パターンに分類できます。管理を外部に委託する場合も同様に17パターンに分類し、それぞれのパターンに応じたリスク対策の必要性を訴えています。
肝心な管理運用の情報が少なすぎる
また現在、マイナンバーに関する書籍やセミナーが数多くある中で、「それらはほとんど使い物にならない」と喝破しています。ほとんどが制度の解説に終始しており、具体的な管理運用について言及していないからです。萩原さんは制度の是非やあり方よりも管理体制の構築や、取り扱いルールの作成、苦情・相談窓口の設置法など、企業が講じるべき対策についてパターンごとに解説しています。
「セミナーに来られる方でもほとんどマイナンバーに対する予備知識がないケースが多く、一般企業には全く浸透していないと実感しています。電子申請できるシステムを導入している企業は全体の1割くらいですが、マイナンバーをどういう形で収集するかまで計画している企業はもっと少ない」と危機感を抱いています。
委託先から漏えいしても委託元は管理責任問われる
予備知識がある企業経営者でも、税理士や社労士に委任して安心してしまっているケースがあまりに多いと強調します。「マイナンバー流出は人為的にどこで起こるか分からないので、外部に委託すれば安心というものではありません。横浜市の杭打ちデータ改ざん問題と同じで、1次や2次の下請けに任せて安心せず、そこでどんな運用をしているかも監査する責任があるのです」と、マイナンバー管理の難しさを訴えます。
「外部委託した結果、データ流出しても最終的に責任を負うのは企業です。たとえ個人情報保護法やマイナンバー法の罰則規定に抵触していなくても、個人情報を管理できない会社というレッテルを貼られれば対外的な信用が失墜し、経営破たんのきっかけにもなりかねません」として、外注システムに丸投げして安心せず、徹底管理する意識づけをするよう主張しています。
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