【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4)◆主戦場は米債券市場◆ 株式会社フィスコ 2017年5月28日
利上げシナリオ巡る攻防、静かに仕掛け的動き
普段目にしないデータだが、23日付ブルームバーグは「16日時点の10年物米国債先物建玉が24万10枚の買い越し、07年12月以来の大きさになった」と伝えた。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータで、ヘッジファンドなど投機筋が利上げシナリオ「後退」に掛けていることを示す。世界的にリスクが膨らみ、とりわけトランプ政権のスキャンダル、景気刺激策遅れへの懸念、期待外れの経済指標などが背景としている。なかには、「竜巻が近づいているが、隠れ場所が無い」との声(スウェーデンの北欧最大のプライベートエクイテイ会社EQTパートナーズ、未公開会社の投資会社の最高責任者で5/8付けインタビュー記事)も底流にあると考えられる。
昨日、その動向に影響する5月FOMC議事録が公開された。市場の受け止め方はバラバラだった様だが、金利先物市場では「6月13-14日FOMCでの利上げ」確率は83%で変わらず、「さらに年末までに1回利上げ」確率は46%と週初の50%台から低下した。6月分は「まもなく追加の利上げ適切」との表現に反応、その後については「最近の経済指標の弱含みが一時的とのさらなる証拠を待つのが賢明と判断した」に呼応したものと見られる。債券市場で10年物国債利回りは2.2519%(前日2.2830%)に低下。FOMC議事録以外に、中国格下げ(ムーディーズ)、5年債入札の堅調などが背景。債券が買われる(金利低下)との期待感は変わらなかった様だ。つれて、ドルが売られたが、株式市場は「金利正常化」の流れが確認(6月利上げ)できたとして、S&P500が最高値を更新、NYダウも2万1000ドル台を回復した。ただ、出来高が薄く、力強さは無い。漂う相場の発信源は利上げシナリオを巡る強弱対立の膠着感にあると考えられる(米債券市場26日短縮、29日メモリアルデー休場なので、雇用統計攻防は30日から始まると見られる)。
トランプ批判の動向もカギを握るが、ハーバード大ケネディスクールが行った7つの主要メディアの調査(就任100日間)で、トランプ政権を報じる内容は「ネガティブ」が8割、「ポジティブ」は2割に過ぎないと発表した。CNNとNBCがネガティブ93%で最も厳しく、FOXがネガティブ52%で中立的とされた。100日間のネガティブ比率はオバマ政権は41%、ブッシュ政権57%、クリントン政権60%。ネガティブ対象は、移民政策、医療保険、ロシア関与疑惑、国際貿易の順。少なかったのは経済政策で、ネガティブ比率は54%にとどまった。シリア攻撃はポジティブ79%。予算教書が発表され、メディアの批判の声が経済政策にも強まるかどうかが大きな焦点になる。加えて、ポジティブ比率を高める対北朝鮮政策、対中政策などがあるかも注目点となろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/25号)
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