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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2)◆警戒抱えながらの輸出依存◆  株式会社フィスコ 2017年5月28日

関連ワード : 貿易 金融経済 

トランプ通商政策睨み、輸出攻防

1-3月期GDP速報は5四半期連続のプラス成長だったが、「外需依存の構造変わらず」とされ、政府が目指す内需との好循環には至っていない。その貿易統計4月速報が昨日発表された。輸出は前年同月比7.5%増、輸入は原油高を反映し、同15.1%増。貿易収支は4817億円の黒字(市場予想5207億円の黒字)だった。17日に発表された3月機械受注が前年比0.7%減に止まり(1-3月期は前期比1.4%減、4-6月期見通し同5.9%減)、設備投資に停滞感が続いていることと比べ、当面、外需依存の構図は変わらないことを示唆する。

4月輸出は米向け+2.6%、中国+14.8%。不安を抱えながらも中国依存の構図が支えている。品目では、半導体製造装置+29.9%、鉄鋼+18.1%、原動機+16.4%など。昨年4月が熊本地震の影響で落ち込んだため、押し上げられた面があるが、3月までの二ケタ増に息切れ感も指摘されている。第一にトランプ通商政策の不透明感、第二に北朝鮮問題の急展開リスクや中国景気後退懸念などアジア向けの低迷懸念、第三に牽引役の半導体製造装置の息切れリスク(4月の半導体製造装置販売額3カ月移動平均値は前年同月比41%増、8カ月連続プラス)。半導体製造装置は波の大きい業界で、3月から中国向けがピークアウト、4月は韓国需要が支え、北朝鮮リスクと連動する恐れが高い。北米向けは自動車・部品が中心と見られ、通商摩擦を懸念し、慎重な運転を行っていると思われる。

まだ、期待のインフラ投資関連、医療関連、農水産物、航空機関連などの次の柱が支える構図に至っていないこと、22日までに開催されたTPP11関係国協議、APEC、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は、目立った成果が無かったこと(方向性としては日本主導の貿易枠組み作りが認知された)、トランプ通商政策の協議が控え、為替も不安定なこと、などが課題として指摘されている。なお、対米黒字は4月前年同月比4.2%減の5867億円、2ヵ月連続の減少だが、年間6-7兆円規模にある。

22日に発表されたドイツの第1四半期貿易統計で、対米輸出は前年同期比8%増、貿易黒字は最大規模の140億ユーロ(約1.7兆円)に達した。ドイツ経済相は今週訪米予定で、米商務長官や通商代表との会談が注目される。メルケル独首相は(ECBの金融緩和策を批判する格好で)「ユーロは弱過ぎる」と叫び、昨日はユーロ高ドル安に振れた(一時半年ぶり高値の1.1263ドル)。日本政府はそこまで踏み込まないと思うが、為替の安定に一段と配慮することになると考えられる。

今期業績予想を発表していない新日鉄住金の栄副社長はロイターのインタビューに答え、「今期増益必達、米国がリスク」との考えを示した。ロイターが集計したアナリストの今期経常利益予想平均は3076億円(前期1745億円)。平均5000円/トンの鋼材値上げに取り組んでおり、その成否が課題。カギを握る中国情勢では、「秋の共産党大会までは景気刺激策は継続する。年度前半は心配していない」と述べた。株式市場は当面、輸出関連株中心の物色動向、中長期投資ではその先を睨んだ安値拾いが基本となる展開が想定される。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/23号)

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