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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3)◆欧州に薄日差すか◆  株式会社フィスコ 2017年2月26日

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欧州の軌道修正に静かに注目

「米国第一」相場で、米株に資金が集まる一方、様々な思惑が絡んでドル高の勢いは弱まっている。定説的には、米国主導の相場ではあるが、「今年がドルのピーク」との見立てがある。代表的な意見は、約45兆円の資金を運用するプリンシパル・グローバルのチーフエコノミストのボブ・バウア氏。曰く、「2015年は1930年代以降で最悪のリセッションだったが、昨年第1四半期から回復が始まっている。一般的に世界経済が回復している時は、マネーが米国からより成長率の高いところに流れる」。

カギとなるのは、中国経済と並んで欧州経済の動向。とりわけ、米金利の持続的上昇には、ECBと日銀の金融政策が変化する必要があると見られている。日本はデフレに近い分、半歩遅れた状況だが、デフレ終息宣言が出来る状況になれば、誘導目標は現在の0%近辺から0.25%程度に引き上げられる公算がある。ECBは夏以降にハト派姿勢が弱まり、米欧のギャップ感が縮まれば、米利上げの後押し要因となる。

3月から始まる蘭下院選挙、仏大統領選、(遠のいたが)伊総選挙の可能性、秋に独選挙と、一連の政治リスク、さらに英国とのEU離脱交渉、世論の離脱ムードの高まりと、これから不安材料の本番が始まると見られている。そのなかで、「再びデフォルト懸念」とされたギリシャの債権団との交渉が20日のユーロ圏財務相会合で、協議再開で合意した。ギリシャは7月に72億ユーロの返済を控える。昨年末からIMFの離反もあって拗れていたが、ようやく協議再開に漕ぎ着けた。もっとも、ギリシャ政府が「基礎的財政収支の黒字幅を10年間、GDP比3.5%で維持するという要求をドイツは見直すべき」との声明を出し、公的債権者が債務軽減措置を提供するかどうか不透明。

あまり大きくは取り上げられていないが、20日ポルトガル財務省はIMFに17億ユーロを前倒しで返済した。11年に受けたIMF融資の半額を返済したことになる(14年までの金融支援総額は780億ユーロ、うち約1/3がIMF)。

政治的なユーロ崩壊懸念はあるが、財政問題が直ちに影響するリスクは遠退いている。政治リスクには難民問題の行方も焦点となる。トランプ政策に対抗し受け入れ姿勢は変えないと見られるが、20日、ドイツ政府は難民申請時に携帯やパソコンデータ履歴をチェックできる新規定の検討に入ったと伝えられた。現実的には、難民審査の厳格化に向かうと考えられる。なお、2月7日に英王立国際問題研究所が発表した調査では、「イスラム圏からのこれ以上の移民流入を停止するべきか」との問いに、対象10カ国で平均55%が「停止すべき」と回答、筆頭はポーランドの71%、オーストリア65%、ハンガリー64%が続いた。ドイツでも50%を上回る。一方、「停止すべきでない」はスペイン32%、イタリア、英国が23%だが、「停止すべき」を下回る。より現実的な政策(大枠を変えずに規制内容を複雑化させるのは欧州官僚機構の特色)に徐々に変更し、リスクを乗り越えようとすると見られる。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/2/22号)

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