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2050年 オランダはサーキュラーエコノミーになる (2016/11/2 EcoNetworks

今年9月、オランダ政府から大きな目標が発表されました。

欧州レベルでは2015年の12月にサーキュラーエコノミーに関する
政策パッケージが発表されていましたが、
その一歩先を行く形になります。

70ページほどの方針を見てみると、
世界をリードしていくという本気度が伝わってきます。

最終的に目指す姿は、
2050年までに完全なサーキュラーエコノミーを実現すること。

2050年の社会では、すべての原材料は環境に悪影響を及ぼすことなく利用・再利用され、
新しい原材料が必要になった場合には、持続可能、
かつ環境や健康に悪影響を与えない方法で取得されます。

中間目標は2030年。1次原料の使用量の半減を目指します。

背景にあるのは、危機感。

面積が小さく、人口密度が高い小国で、資源を他国に依存しています。
54の主要な原材料のうち、オランダでは68%が輸入です。
海外に依存するということは、地政学的な緊張関係の原因となり、
安定供給が脅かされると社会が不安定化することにつながります。
 
リスクの視点だけではなく、経済・雇用機会としての期待も高く、
15~84億ユーロのGDP成長、54000の雇用創出が見込まれるとの試算もあります。

サーキュラーエコノミーにおけるビジネスの形としては、
・サプライチェーンでは原材料がより高効率に利用され
・新しく原材料を使う場合には、化石燃料由来のものは避け、
持続可能な形で生産されたもの、再生可能なもの、広く入手可能なのものを使用し
・新しい生産方法、製品設計、消費の形をつくっていく
ことを目指します。

注目したいのが、変革を進めていく上での政府の役割。
考えられる障害を特定し、どのような方向に変えていこうとしているかを具体的に示しています。

たとえば、法規制の領域では、
廃棄物の定義を変えていくほか、
化学物質や有害廃棄物などの国際的な規制と
整合性をとっていくことも必要になってきます。

また市場のインセンティブを設計するため、
外部経済の内部化や炭素市場の設立、廃棄物への課税に取り組むほか、
政府調達の推進や障害になる補助金の撤廃を進めるとしています。

その他にも、資金や知識・イノベーションの促進の観点もありますが、
政府の役割として重要になってくるのが、国際協調の進展。

1ヵ国では当然できないことのため、
いかに他国を巻き込み、国際的な潮流としていくかが重要になります。

こうした政策パッケージを読んでいて、改めて大きな挑戦であることを感じました。

●新しく興隆している経済、ビジネスの形を積極的に取り込んでいくことが必要。
たとえばシェアリングエコノミー。循環型経済におけるビジネスモデルの1つであり、
様々ある課題を1つ1つクリアしながら、前向きに社会に取り入れていくことが求められます。

●生産者の責任範囲の拡大。これまでの拡大生産者責任(EPR)の概念が
さらに広がっていくことが想像されます。

●消費者の意識を高めていくことは重要ですが、
ふわっとした啓発では変化が加速しないため、
より抜本的に消費者の考え方や生活様式を変えていくことが必要になります。

●他国との摩擦を減らし、共通のゴールに向けて足並みを揃えられるか。
ある意味では、グローバル化し、市場をさらに開放しようという流れに反した、
経済を閉じようとする行為でもあります。

自国だけでなく、世界全体として発展していく道筋をどう描いていくのか。
持続可能な形での資本主義・自由経済のあり方とは。
そんなことも考えていく必要がありそうです。

報告書の発行者を見てみると、
環境省のほか、経済省、さらに外務省の名前があります。
省庁の壁を越えて、社会全体として目指す意志が伝わってきます。

提供:EcoNetworks

著者プロフィール
野澤 健

野澤 健 Takeshi Nozawa
代表取締役/CEO。調査分析/エンゲージメント部門を担っています。

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