日本初の女性首相は小渕優子氏? 海外メディアの間でも注目度高まる ニュースフィア 2014年10月6日
9月3日、安倍新内閣の人事が発表された。大臣には戦後最多に並ぶ5人の女性議員が任命された。高市早苗総務相、松島みどり法務相(初)、小渕優子経産相、山谷えり子国家公安・拉致問題担当相(初)、有村治子女性活躍担当相(初)だ。
なかでも海外メディアが注目しているのは、小渕優子氏だ。小渕氏は、東京放送(TBS)に勤務していたが、1999年、当時首相であった父、小渕恵三氏の秘書に転身。直後の2000年急死した父の跡を継ぎ、衆議院議員選挙群馬5区より出馬して初当選した。海外各メディアとも同氏は有力な首相候補だと報じている。
【押しの弱さで敵を作らない人柄】
ロイターは、「日本の小渕氏、政治会のプリンセスが初の女性首相に」との見出しをつけた。
同メディアは、小渕氏について、経済産業省の新大臣は、テレビ映えする容姿、与党有力者の後ろ盾、政敵を作らない才能を持つ、と評している。
日本大学の岩井奉信教授は、「同氏が所属する派閥は、彼女を上に押し上げたいと考えている」「経済産業大臣は、重要なポストだ。そのことから同氏が首相への階段を登っていると言えるだろう」と述べた(ロイター)。
早稲田大学の中林美恵子准教授は、「小渕氏には可能性がある。しかし、まだ可能性に過ぎないとも言える」「好まれる人柄で、前に出ようとはしないし、強い信念があるわけでもない。父親と同じだ。女性の首相としてあまり国際的に活躍するタイプではない…しかし、とても自民党的な政治家だ」(ロイター)と評している。
明治大学国際総合研究所の奥村準客員研究員は、「何らかの理由で党が絶望的な情況に陥れば、彼女を選択する声は高まるだろう。しかし、そうはならなくても、彼女が将来の首相候補であることに間違いはない」と述べた(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙)。
小渕経産相に課せられた初めての試練は、国民のあいだで不人気のため、実行に注意を要する原発再稼働という政策だ。安倍晋三首相は、好感度の高い同氏の優しいもの言いと、2児の母という肩書きで、再稼働に対する、特に女性有権者の反対を和らげようとの狙いがあるのだろう、とロイターはみている。
【女性議員の人気にあやかりたい自民党】
男性が支配する政治の世界は、経験年数がものを言う。小渕氏が女性でしかも年も若いということは、安倍晋三首相の後継者として、これまでは考えられない人選だったかもしれない。しかし、人気のある男性議員が少ないこと、アベノミクスの成果について疑念の声が消えないことが、元首相の40歳の娘を首相候補レースの出場者に加えさせた、とロイターは報じている。
安倍首相の支持率はどうにか50%を超えている。しかし、首相はその人気度を経済回復のための公約実行の可否に多くを委ねている。もし安倍首相の次期後継者が男性だったとしても、小渕氏が首相就任への途上にあることは明らかだという。
小渕氏は、2008年に戦後最年少で入閣。今回もいまだ40歳と日本の政治界では弱年だが、年齢よりも男性社会の国会で女性議員であるということの意味は大きい、とサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙はみている。
菅義偉官房長官は、内閣人事について、「(安倍内閣は)女性に快適な環境作りを政策の柱であると考えている。約束したことは実行する。新内閣の人事は、その方針によると思う」と答えている。
【タカ派とは一線を画す小渕氏】
新内閣では、ほとんどの大臣が安倍首相のタカ派的政策を積極的に支持しているが、小渕氏は彼らより穏健な立ち位置だ。日本最大の保守系組織「日本会議」と関係がある大臣が多いと言われるなかで、関係がないとされる4人のうちの1人だ、とロイターは報じている。
また、靖国神社参拝を支持する国会議員のグループには所属していない。ただ、代わりの職員は参拝させている。
シンガポールのメディア『アジア・ワン』は、小渕氏が、安倍首相の進める全ての政策に賛同する必要はない、としている。中国に友好的であった父親のように、彼女自身も領土問題で悪化している日中関係を改善しようと働いていることを取り上げた。
2013年12月、国会議員訪問団の一員として同氏は北京を訪問。中国の首脳らとの会談を待っていた。しかし、時を同じくして安倍首相が突然靖国神社を参拝。中国側は不快感を示し、直前になって予定を中止した(アジア・ワン)。
小渕氏は、「父の影響を受け、韓国・中国の日本との関係に尽力している」「顔と顔を突き合わせ話しをしなければ、両国がお互いに悪い印象を持ち始めてしまう」(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙)と発言している。
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