【社会】「山の日」制定、対症療法と海外メディア批判 “働き過ぎ”日本人の問題は変わらず ニュースフィア 2014年5月27日
23日の参院本会議で、2016年から8月11日を「山の日」と定める祝日法改正案が可決・成立した。
現在の日本の祝日は、元日(1月)、成人の日(同)、建国記念の日(2月)、春分の日(3月)、昭和の日(4月)、 憲法記念日(5月)、 みどりの日(同)、こどもの日(同)、海の日(7月)、敬老の日(9月)、秋分の日(同)、体育の日(10月)、文化の日(11月)、勤労感謝の日(同)、天皇誕生日(12月)の15日だ。
16日目となる「山の日」について、法案では、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日だ、としている。
日本で新たな休日が増えることに、海外も強い関心を示しているようで、ヤフーニュース(英語版)の記事には700件以上のコメントが寄せられている。
長時間労働を減らし、休暇をとりやすく
「山の日」制定議員連盟会長の衛藤征士郎氏(自民党)は、「日本では、もちろん有給休暇はあるが、休日として利用されない」「山の日の制定で、人々が休みをより多く取ることに繋がれば良いと考えている」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と話す。
長時間労働、休暇の少なさは、日本の労働者にとって当たり前のことだ、と海外各紙は問題解決が難しいだろうとみている。日本政府による2013年の調査では、日本の労働者は、平均で年間たった8.6日の休みしかとっていない。実際に認められている平均日数の半分にも満たない。
労働政策研究・研修機構の池添弘邦氏は、「多くの日本人は分かっていない」「年間の有給休暇は自分たちの権利だということを」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)とし、職場で周りに合わせ休暇をとらないことは間違った考えだ、と主張している。
しかし、実際「休暇を取るのは難しい」という、ある会社員の声をウォール・ストリート・ジャーナル紙は取り上げている。「1日の休みでも、次の日に『休んですみませんでした』と謝らなければならない」。
国際労働機関(ILO)のジョン・メッセンジャー氏は、休日制定は労働条件の改善に有効だと評価している。「会社が休みになれば、社員は仕事をできない」「だから、休むことが何らはばかられない」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
ワーカホリックな勤務は、それほど効率的ではないようだ。フランスは、先進国の中で、最も休暇が保証されているが、労働者の生産性も世界の中でも最も高い。フランスのエコノミスト、ルノー・ブロース氏は、「長時間の労働を続ければ、そのうち疲れて、生産性は落ちることになる」(ビジネス・ウィーク紙)と説明している。
女性の雇用促進で社会全体の「仕事と生活の調和」を
国民の休日をさらに設けることで、労働者が個人休暇を取りやすくなるなどとは、何だか馬鹿げた発想のようにも見える、とウェブ誌ディプロマットは批評している。日本人が法的に認められた休暇を利用しない真の原因に対処したものではない、とも指摘。
安倍晋三首相は、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を経済改革の一環に挙げ、特に女性の雇用促進を図ろうとしている。同首相は5月6日、経済協力開発機構の会合で、「ワーク・ライフ・バランスを検討することで、労働環境の見直しをすすめ、女性が輝く社会を造る」(ディプロマット誌)と目標を掲げた。
同誌は、女性の職場進出は確実に、現在の長時間労働や少ない休暇日数に影響を与えるだろう、としながらも、実際にそのバランスを改善することは難しい課題だ、とみている。