【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】
ネット選挙とマニフェスト (2013/4/4 早大マニフェスト研究所)
ご好評いただいている「早稲田大学マニフェスト研究所」連載。今週は議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考える「マニフェスト学校~政治山出張講座~」をお送りいたします。今回は、ネット選挙解禁に伴うマニフェストの重要性について考察していただきました。
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ネットの利点と乗り越えられる政治参加の壁
インターネットの最大の特徴は、「いつでも・どこでも・だれでも」が同じ情報を共有できる環境をつくることができることです。言い換えれば「オープン・フェア・フリー」という状態になることでしょう。
従来型の選挙は、選挙事務所や集会などへ参加しなければ候補者に会うことはできず、候補者のホームページなどをそれぞれ検索して情報を引き出して比較をしなければ、候補者の比較ができない“めんどうくさい”状態でした。わざわざ面倒なことする人は少ないですから、時間や場所の制限が取り除かれる可能性のあるネット選挙が解禁されることで、政治や選挙がより身近になり、有権者が主体的に参加しやすくなる期待が高まります。
当然、インターネットが活用されることで情報はすべてオープンになりますから、候補者の資質もいっそう問われてくることになります。
ネット選挙とマニフェスト
先週の「週刊 地方議員」で、ネット選挙が解禁されれば地方選挙はどうなるか、という内容の投稿をしましたが、ネット選挙が解禁されると、ますます候補者の政策がクローズアップされることでしょう。すなわち、マニフェストの質と当選後の実現度が重視されてきます。
当研究所は、2009年の総選挙(日本インターネット新聞社と協力)、2010年の参院選(ニコニコ動画と協力)でネット選挙解禁を狙い、「e国政」というサイトを共同運営しました。(参考:「e国政2010参院選」)
このサイトは「動画版マニフェスト」と位置づけ、候補者に自身の政治信条や政策について語っていただき、それを選挙区内の全候補者が1つのページで見られるように作成したものです。選挙時に街じゅうで掲示される「ポスター掲示板のポスターがしゃべりだしたら面白いだろうな」という発想で作成したのです。当時は、候補者も動画に不慣れな方が大半で、政見放送のような堅苦しい映像が多いのですが、それでも有権者にとっては1ページ内で自分の選挙区内の候補者の声や姿が確認でき、考え方も比較ができると好評を得ました。
ネット選挙解禁で選挙の在り方が今後、一変するでしょう。しかし、候補者が政策を語り、有権者が政策を読み比べて投票するという本来の選挙の趣旨は不変です。候補者はネット選挙が解禁されるため、従来のアナログ型選挙の手法とデジタル型選挙のミックスで大変忙しくなりますが、政策をていねいに候補者へ伝える努力や工夫に力を注いでいただきたいと考えます。そして、これまでのようなお金のかかる選挙から、ネットを使って安価な選挙へと選挙スタイルも見直していっていただきたいと願います。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
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