トップ    >   記事    >   連載・コラム    >   早稲田大学マニフェスト研究所 連載    >   マニフェストを活用した行政改革~スピード開票事例(2)指示待ち職員から自ら考える職員へ~

【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】

マニフェストを活用した行政改革
~スピード開票事例(2)指示待ち職員から自ら考える職員へ~
(2013/02/07 早大マニフェスト研究所)

政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。マニフェストをテーマとした連載「マニフェスト学校~政治山出張講座~」では、議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考えていきます。

◇        ◇        ◇

与えられることだけをこなす「従来型」の事務

 前回、長野県小諸市では県知事選の開票を、わずか17分で確定させる事例を紹介しました。21時に開票が始まると、21時20分までには確定しているのですから、驚くべきスピードと言えます。しかも、機械にほとんど頼らずに人の手で処理していくのですから、これまた驚きです。選挙の開票は、ミスが発生して正確性が欠けてしまうと台無しです。正確かつ速いという開票事務は、どのようにすればできるのでしょうか。

 今までの手法をそのまま踏襲した“従来型”の開票事務は、選挙事務の担当組織である選挙管理委員会が、当日の事務従事者となる役所職員へ「あなたは○○の係をお願いします」と、担当する役割を事前に割り振って周知します。役割を与えられた職員は、与えられた仕事を的確にこなします。これが従来型の開票事務です。

 このような進め方で何も問題はないように思えますが、ここには大きなロスが発生しています。それは「自分の担当する仕事しか行わない」ことによるものです。役割を与えられた職員は、自分の任務は確実にこなします。しかし、その前段の作業が遅くなっていたとしても、手伝うということをしません。前の仕事が終わらなければ自分のところへ仕事が来ないため、自分の担当職務もこなせず、うしろの担当者へ仕事を送っていくこともできないため、どんどん時間が経過していくのに、です。

 これは、それだけ人件費も膨らんでいく、ということを意味しています。ここには「時間の感覚」や「コスト意識」、「目的意識」がなく、ただ「指示待ち職員」の姿があるだけです。従って、開票事務の会場で熱心に動いているのは、担当する選挙管理委員会の職員だけで、ほかの人たちは無関心、というのをよく目にします。行政でよく言われる「縦割り組織」の典型例が、従来型の開票事務では見られるのです。

自発的に動く「目標達成型」の事務

小諸市のスピード開票事例は、動画でも公開されている(ニコニコ動画より) 小諸市のスピード開票事例は、動画でも公開されている(ニコニコ動画より)

 こうしたことが起こるのは、「情報の共有化」ができていないことが最大の要因です。選挙管理委員会が、正確で速い開票事務を行うために工夫をいくら凝らしても、その情報が会場内にいる全員の従事者と共有できていなければ、従事者だって動くに動けません。しかも、従事者側が「なぜ、このように事務を行うのか」という目的をきちんと理解していなければ「どうして速く行わなければならないのか」という疑問が残り、本来の動きがとりづらくなるものです。ですから、まずするべきことは、「何のために行うのか」という理念や目的を、全員と共有することです。

 次に重要なことは、「どこまで行うのか」という到達点を示すことです。到達点は全員がイメージしやすく共有できるものがよいため、できるだけ数値で表すことが望ましいのです。開票事務の場合、それは「終了時間の設定」でしょうか。小諸市は「20分で確定票を出す」という目標を掲げ、メンバーで共有しました。

 目標を掲げると、「どうすれば20分で確定票が出せるのか」という課題が明確になります。その課題をクリアするための方法をメンバー自身で考え、実行するのです。このように小諸市では、スタッフが事前準備から参加して、事務手法を考えて戦略を練っていきますので、開票当日も遅れている作業があれば、メンバーでフォローし合います。

 小諸市の開票事務組織は、その時点で何が適切なのかを判断し、状況に合った対応をしていくのです。ここでは、指示待ち職員の姿や縦割り組織の弊害など、従来の行政が悩んでいる姿を見ることはありません。目標を掲げ共有し実践する、「目標達成型」の組織の姿がそこにあるのです(小諸市の開票事務作業の動画や詳細な内容などについては、『早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ』よりご覧いただけます)。

マニフェスト学校~政治山出張講座~
マニフェストを活用した行政改革~スピード開票事例(1)長野県小諸市の場合~ (2013/01/24)
もう一度言う。主権者との情報共有を (2013/01/10)
マニフェスト型選挙で税金を取り戻せ!~マニフェストの通信簿をつけよう(2) (2012/11/15)
早大マニフェスト研究所 連載記事一覧
ページトップへ