【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第22回 ネット選挙解禁で地方議員選挙はどうなるか (2013/3/28 早大マニフェスト研究所)
ご好評いただいている「早稲田大学マニフェスト研究所」連載。今週は各地の議会改革や独特の取り組みなどをご紹介する「週刊 地方議員」をお送りいたします。今回は、今夏の参院選で実施されると言われる「ネット選挙」が地方議員選挙に与える影響を考察した、「ネット選挙解禁で地方議員選挙はどうなるか」をご紹介いたします。
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政治・行政手法が一変
今夏の参院選でネット選挙解禁が実現しそうです。メールやツイッターの使用が認められるなど、解禁といってもほんの部分的なものにすぎませんが、これまでかたくなにネット選挙解禁を拒み続け、公職選挙法を改正しようとしてこなかった国政の姿勢が大きく変わったことは歓迎したいと考えています。
一度解禁されると、瞬く間に他のコンテンツの活用も認められてくることが容易に想像できます。例えば、東日本大震災の影響により統一地方選挙が延期となっていた地域の選挙では、選挙公報のウェブ掲載が認められました。それまでは総務省も頑として選挙公報のウェブ掲載を認めてこなかったのですが、昨年11月に集中した東北地区での地方選挙を皮切りに、今では選挙公報のウェブ掲載が“当たり前“となっています。このことからも、ネット選挙が一旦解禁すれば、セキュリティなど乗り越えなければならない課題はあるにしても、今後はさらに拡大していくことでしょう。
そのような環境になれば、選挙手法も一変するでしょう。選挙にインターネットが活用されるということは、今よりもインターネットを活用する議員が多く登場してくることとなり、議会の運営手法や執行部とのやりとり、行政手法への提言などあらゆる機会でインターネットが活用されることとなりますから、ネット社会への対応に後れを取っていた役所の仕事の在り方も一変することでしょう。
地方議員選挙はどうなるのか
現時点では、国政選挙のみのネット選挙解禁ですが、地方選挙も国政選挙に準ずるというこれまでの流れを踏襲すれば、地方選挙もネット選挙が解禁されることは時間の問題です。それでは、地方議員選挙はどうなるのでしょうか?
実は、あまり考え方は変わりません。メールやツイッターが解禁されても、これらは単なる有権者と候補者をつなぐ道具にすぎませんから、候補者に求められる基本的な要素は変わりません。もちろん、インターネットが使えない候補者はこれからの選挙は苦戦するでしょうが、インターネットが使えるようになりさえすれば問題がないことです。
候補者が最も大切にしなければならないことは、「課題発見の視点」「政策提言力」「問題解決力」「コミュニケーション力」等これまでの議員に求められる資質と何ら変わりがないのです。例えば、ネット選挙が解禁され、メールやツイッター等へどのような情報を発信するのですか?「○○駅に到着なう」とか「○日に集会やります」などの情報を流すだけでは有権者の心はつかみにくいのではないでしょうか? 議員や候補者の何げない日常情報を知ることで親近感がわき、政治をより身近に感じるといった点では効果があるでしょう。しかし、それだけでは有権者から“飽きられる”恐れがあります。
候補者は「自分の理念」や「自分の政策」をとうとうと語れなければなりません。有権者にとって“「この候補者はなにがやりたいのか」がわかる”ように情報を伝えていく、そこにインターネットも活用するという順序で考えていく方が本来の在り方だと考えます。
今、ネット選挙解禁の話題であたかも黒船襲来のときのような盛り上がりがありますが、基本的なことを押さえていなければ、ネット活用が逆に墓穴を掘ることになります。その意味でも、これからはすべて情報がオープンになりますから、候補者の資質はますます問われてくるでしょう。「自分がどの点に課題を持ち」「どのような手法で」「どのような解決後の姿を描いているのか」について、有権者へ訴えていく視点を常に持ち合わせていただきたいと考えています。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
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