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【龍馬プロジェクトリレーコラム】

第50回 住民全体の利益を目指す候補者の厳しい実情 (2015/3/20 倉掛賢裕/龍馬プロジェクト 選挙部長)

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「地方から日本を変える」を合言葉に、日本全国の国会議員や地方議員などが超党派で集まった『龍馬プロジェクト』。政治山では、龍馬プロジェクトの思いに賛同した若手議員によるリレーコラムを連載しています。大分市議会議員で龍馬プロジェクトの倉掛賢裕氏による「住民全体の利益を目指す候補者の厳しい実情」をお届けします。

◇        ◇

 みなさんは選挙でどのような候補者に当選してもらいたいですか。

 多くの方は、特定の支持組織を持たない志高い候補者に当選してほしいと願っているのではないでしょうか。ところが実際の選挙では、そのような候補者はなかなか当選することができません。なぜでしょうか。

 理由は主に3点あると考えています。

 1つは「利益」がないこと。これは利己益と言い換えてもいいと思います。

 特定の個人または企業・団体・組合などの組織だけに都合の良い利益をもたらす候補者を「良い政治家」と考える有権者が、まだまだ多いということは周知の事実だろうと思います。こうした候補者は当選後も支持組織などのために一所懸命働きます。こうして利害関係という強い絆で結ばれた組織票が生まれ、住民全体のためではなく、組織のために働く政治家が生まれます。

 反対に、住民全体の利益を考え、公平な目線で政治に関わる候補者は一部の人のためだけには働きませんので、時として一部の人々にとっての不利益をもたらすことがあります。例えば公立学校の統廃合や国民健康保険料の値上げなどの政策は、学校が廃止される校区の住民や健康で病院にかからない方にとっては不利益となりますが、住民全体のことを考えると大変重要な政策だと訴える政治家も必要です。ところが、こういう耳の痛いことを訴える候補者は不利益を受ける方々からの支持は得られにくくなり、組織票のようなまとまった得票は見込めないのです。

 2つ目は「資金力」がないこと。

 特定の企業・団体・組合等の組織に支持される候補者は、組織の利益のために立候補するわけですから組織からの資金的バックアップも受けやすくなります。政治献金という形でなくとも、企業などの組織に所属したまま立候補し、当選後も臨時出勤という形で企業などからの給料も議員報酬とは別に受け取り、社会保険や厚生年金などの福利厚生も手厚く受けているといった事例もあります。こういった候補者は落選する確率も低く、仮に落選したとしても、借金を抱え失業するといったリスクが回避されています。

 また、上記のように特定の有権者に便宜を図れば、その見返りとしての寄付を受けやすくなるということもあり、ここでも住民全体のために公平な目線で働く政治家は寄付が集まりにくいということになります。

 資金力がないと、政策や議会報告などのビラを思うように作れないとか、郵送等の政治活動が大きく制限されてしまいます。この政治活動が思うようにできないと、組織に頼らない候補者は選挙での当選が大きく遠のいてしまうのです。

 それが3つ目の「知名度」がないことです。

 特定の支持組織がなく住民全体の利益を目指す候補者の場合、企業や団体・組合などで政策や考えを訴えられる機会に限りがあります。支持組織を持つ候補者は「利益」でつながっているので、政策や考えに関係なく支持を得られますが、住民全体の利益を目指す候補者は広く有権者に訴えていかなければなりません。じゃあどうやって広く訴えていくかとなると、街頭演説や政策ビラの配布、戸別訪問、SNSやHP等の活動になっていきます。

 これまでの話から分かるように、住民全体の利益を目指す候補者には上記の「利益」や「資金力」の差は埋めることができません。その2つを埋めることは、全く違う目的のための政治家になってしまうということなのですから。つまり、組織に支えられていない候補者は、政策を含めた「知名度」を上げていくことでしか選挙での集票力の差を補う方法がないのです。そして、政策や考えを知ってもらおうと活動すればするほど、資金が必要になってくるという苦労を抱えることになります。

 より幅広い民意に支えられ、その声を住民全体の利益に反映させようと高い志を持つ候補者ほど、こうした大きなリスクと戦いながら頑張っているということを知っていただけると、また選挙や政治家を見る目が変わってくるかと思います。

 昨年、悪い方で話題になった「政務活動費」ですが、本来は議員の活動を評価してもらうためにも、議会報告の広報誌(ビラ)を議会開催ごと選挙区全戸に配布することができるぐらいの費用は最低限認めるべきだと思います。議員は有権者に対して報告する責務があり、有権者にはその活動を評価する材料が必要です。政務活動費による活動を有権者が評価し、その評価こそが投票行動に反映されるべきだと考えています。当然ながら、その使途は全額領収書を公開するなど、そういった土壌づくりに今後とも努めていきたいと思っています。

倉掛賢裕著者プロフィール
倉掛 賢裕(くらかけ まさひろ) 大分市議会議員
1973年11月2日川崎市生まれ。父親の転勤で4歳から大分市で育つ
大分県立大分豊府高校、広島経済大学経済学部卒業
広告代理店勤務を経て平成10年政治家嫌いから政治の道を志し、故郷大分の代議士事務所に飛び込み私設秘書を務める
2005年から会社員
2009年大分市議会議員当選 現在2期
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