【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第57回 逗子から始まるICT改革 (2013/10/23 神奈川県逗子市議会議員 長島有里氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第57回は、神奈川県逗子市議会議員の長島有里氏による『逗子から始まるICT改革』をお届けします。
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太陽が生まれたハーフマイルビーチ
湘南逗子。街の南は、都心から一番近くて最も美しい逗子海岸に面し、周囲は深い緑に囲まれたリゾート型住宅都市。人口は約58,000人。JR横須賀線と京浜急行線の始発駅があり、東京までは電車に座ったままおよそ1時間で通勤できるなど、交通の便にも恵まれている。
高齢化率は29.52%(2013年10月1日現在)。神奈川県下の市では2番目に高齢化率が高い。かつて市を二分して争われた池子米軍住宅反対運動の副産物として市民活動が大変盛んな街だ。まちづくり条例を市民が主体となり策定するなど、市民と行政の協働がいたるところでみられる。財政的には決して余裕があるとはいえないが、市民力を活かすことで、文化の薫る質の高い暮らしが、市民の手で支えられている。
タブレット型端末導入へ
逗子市議会では、2013年度からタブレット型端末を導入した。議案や資料などを電子化してクラウドで管理し、各議員がタブレット型端末で共有している。ペーパーレスによる経費削減、職員の事務負担の軽減、会議の効率化などを目的としている。
役所というのはやたらと資料の多い世界。
議案書(案)の(案)を削除し、同じものを大量に刷り直し配布。こんな光景は日常的ではなかったか。
タブレット型端末になって以後、各議員のフォルダにどんどん新しい資料が入る。委員会審議も本会議もこれ一台で事足りる。議案書だけでなく行政計画などすべての資料もある。市民から急な説明を求められた時も、資料を提示しながらより正確な情報を伝えることができる。
委員会審議。例えば、資料請求の際、50ページにわたる景観まちづくりのガイドラインがほんの数分でタブレットにアップロードされた。以前は、白黒でコピー取りを待つのに数十分かかっていた。カラー表示になり、拡大も自在、資料内ワード検索もできるなど格段に資料が見やすくなった。
本会議ではタブレットを使い、自由にインターネットで質問に関する資料を検索することができる。答弁者側である行政に、情報量では議員は到底かなわない。しかし、タブレットを用いることでかなり補完されるはずだ。二元代表制の下、議員の力を効率よく上げていくためには、こうしたタブレットの活用は欠かせないものと思う。
逗子市では、今後議員だけでなく、市長、副市長、部長級にもタブレットが導入される。
将来的には一般質問の際、プロジェクターを用いるなど、写真や動画を活用した質問形式もできる可能性がある。10年以上前に米国・カーメル市議会を傍聴したときの光景がようやく現実のものになる。
逗子発日本再生
今年の夏、私はノルウェー・クバム市のノールハイムスンにある自治体を視察した。北欧では、早くから国民総番号制を採用。またITインフラも整備されているために、市民は、ゴミ、水道料金、住民税の納付はもとより、保育園の入所の申し込みなどあらゆる手続きをインターネットのオンライン上で行うことができる。
このため、庁舎は15時で閉庁。職員は在宅勤務をしたり、福祉の現場に手厚く配置されたりしている。市民だけでなく、公務員の働き方の自由度までも高めている。
わが国においても、マイナンバーに関する法律が施行され、2016年から地方自治体においても番号の利用を開始すると予定されている。
マイナンバーが導入されれば、市民がさまざまな行政手続きを行う際に、添付書類が不要になるといった利便性が高まるだけではない。自分の納税手続きもさらに簡易になる可能性もある。
一部の自治体では、そうした行政情報をオープンデータとしてすでに積極的に公開している。今後、北欧などIT先進国に10年以上遅れを取ってきた日本の役所の電子化が一気に加速するだろう。
“Small is beauty”逗子市は、小さなまちだからこそ、小回りが利いてモデル事業に取り組みやすいという強みがある。こうしたICT改革においても、先進的な取り組みを逗子から進めることで、逗子から日本を変えていきたい。
逗子市議会の全国に先駆けたタブレット型端末導入に対して、全国の自治体から多くの視察が来ている。逗子という小さなまちの取り組みが全国に波及していくのを実感している一幕だ。
逗子発日本再生。市民のためにも、日本のためにも現場からの変革にチャレンジし続けたい。
- 著者プロフィール
- 長島 有里(ながしま ゆり):神奈川県逗子市議会議員 1978年生まれ。藤沢市出身。立教大学法学部卒。横浜市立大学大学院都市社会文化研究科修了(学術修士)。2006年市議会議員に当選2期目。総務常任委員長。副会長を務める『逗子市議会ICT推進部会』は第8回マニフェスト大賞の「優秀ネット選挙・コミュニケーション戦略賞」を受賞。2児の母。
HP:逗子市議会議員 長島有里のホームページ
Facebook:yuri.nagashima.338
Facebookページ:逗子市議会ict推進部会
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