【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】
第11回 「部会に卒業はない!」マネ友としての継続的な実践 (2015/9/24 熊本市 市長政策総室 政策企画課 池田哲也)
「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的にリーダー育成する、自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第11回は熊本市 市長政策総室 政策企画課の池田哲也さんによる「部会に卒業はない!~マネ友としての継続的な実践」をお届けします。
部会参加による気づき
私は、2013年度に人材マネジメント部会(以下、「部会」)に熊本市の部会参加1期生として参加し、組織や職員のあり方について研究する中で、市役所の風土や職員の意識を変えていくためには、どうすればいいのか真剣に考えるようになりました。
それまでも「市民目線で物事を考えなければならない」「組織の縦割りはよくない」といったことは、私自身意識はしていたものの、それを変えるための具体的な行動には移せずにいました。
そのような中、部会に参加し、出馬幹也部会長や鬼澤慎人部会長代行をはじめとする幹事団の皆さんの考え方に触れることで、「実践に移さなければ、何も考えていなかったことに等しい」ということがわかりました。
部会では、ありたい姿を実現するために、「立ち位置を変える」などどのように考え、実践に移していくかの考え方を学ぶとともに、行動への一歩を踏み出す勇気を与えてもらいました。今後、私が市役所生活を送っていく中で「みんなが笑顔で仕事ができる市役所の風土を作っていきたい、作らなければならない」ということを気づかせてくれた1年になりました。
気づきから実践へ
熊本市は、職員数約6,400人と巨大な組織であり、係が違えばやっている仕事がまったくわからないなど、小さな組織の中ですら縦割りで業務を行っているような状況です。
部会参加1期生だった私たちは、夏合宿での施策発表に向けて、自分たちが何に取り組んでいけばいいのか大いに悩みましたが、まずは職員間のコミュニケーションを活発化させ、市役所の組織風土を変える職員の意識改革のためのきっかけづくりが必要だと考え、オフサイトの勉強会「つながるカフェ」を立ち上げました。この「つながるカフェ」は、オフサイト(現場を離れた場所)で、部局・役職・職種・年代の枠を越えてつながる場を提供し、市役所内の職員間の交流を活発化させ、「職員がわくわくしながら仕事ができる市役所」を目指すための仲間作りを目指しており、「キーパーソンインタビュー」「外部講師による講義」「一つのテーマを決めてのダイアログ(対話)」等の活動を月1回行っています。2期生もこの活動に共感してくれ、「つながるカフェ」と連動した“出張版”として区役所を会場とした「ゆるカフェ」や、ママたちを対象とした「ママカフェ」を開催しています。
最近は、新しく来てくれる職員や若い職員の参加も増えつつあり、約2年間の活動を経て、私たちの活動が市役所内に少しずつ浸透してきているようです。
活動を続ける中では、「前例がないからできない」といった役所内に蔓延するドミナントロジック(思い込み)とも戦わなければならないこともありますが、キーパーソンを巻き込んだりすることによって、仲間と一緒にそれを乗り越えることで、一歩一歩着実に変革の輪が広がっていくことを実感しています。
地域での実践へ
2014年12月に大西一史市長が就任し、「直接市民と向き合い、地域の声を拾い上げ、市政に反映させていく」という「地域主義」の理念のもと、職員が市民の中に飛び込み、対話する機会を積極的に設けながら、市民と行政が一体となったまちづくり推進の取り組みを行っています。私は、4月の人事異動で、新しい総合計画策定の担当になりました。
計画を策定していく過程では、市民目線(「立ち位置を変え」)で、市のありたい姿を考え(「価値前提で考え」)、市民との「対話」により地域の現状や課題を把握し、ありたい姿を実現するために「一歩前に踏み出し」て、どのように取り組んでいくのかを考えるという部会で学んだ考え方が、とても役に立っています。
計画の策定にあたっては、計画の案を作成する段階から「市民の意見を聴いて、真に市民と行政で共有できるものにする」との基本方針に基づき、部会で学んだダイアログの手法を生かしたワークショップを開催することとしました。現在、「めざすまちの姿」などについて語り合う全7回のワークショップ(うち2回は市長も参加)に加え、3つのテーマごとにどのような取り組みを行うべきかについて話し合う全54回の市民懇話会を現在開催しているところです。
マネ友とのつながり
私が部会に参加した2013年度研究会の福岡会場メンバーで、マネ友のつながりを継続していくために「人マネ九州部会OB会」を立ち上げました。会長を私が務めており、2015年1月には、第1回のマネ友の集いを熊本市で開催し、2014年度の熊本会場のメンバーも含め、21人が参加しました。部会で一緒に学んだ仲間たちと熊本県のマネ友の和田さん(第3回連載記事参照)が所属する自主学習グループ「くまもとSMILEネット」で開発された対話型シミュレーションゲーム「SIM熊本2030」を体験し、改めて人マネで学んだ対話の大切さを実感しました。夜の懇親会には、出馬部会長も飛び入り参加していただき、楽しいひと時を過ごしました。
こういった場で、マネ友のがんばっている状況を見聞きするのは、自分ががんばっていくためのモチベーションにつながっています。今後もマネ友のつながりを大事にしていきたいと思います。
マネ友としての活動の継続
「部会には卒業がない」
これは、最後の研究会で出馬部会長から贈られた言葉です。1年間の部会参加をもって「修了」ではなく、「ほんとうの笑顔」を拡げるためのマネ友としての活動は続いていきます。
私の周りにも市役所を変えたいと考えている職員は数多くいますが、実際、行動に移している職員はあまりいません。その人たちが市役所を変えるための実践に一歩踏み出せるような風土づくりに取り組んでいきます。
研究会の最後の論文で「決意表明」した「みんなが笑顔で仕事ができる市役所」を目指して。
- ■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
- 安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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