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【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第8回 対話型職員育成制度の浸透を基軸とした市役所変革への挑戦 (2015/6/25 広島県三次市 総務部総務課職員係 高松大吾)

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「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的にリーダー育成する、自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第8回は広島県三次市 総務部総務課職員係の高松大吾さんによる「対話型職員育成制度の浸透を基軸とした市役所変革への挑戦」をお届けします。

組織・職員のあるべき姿を語るダイアログの風景

組織・職員のあるべき姿を語るダイアログの風景

ターニングポイントとなった部会への参加

 三次市は2007年から人材マネジメント部会(以下、部会)に参加し、私は第4期生として2010年にベーシックコース、翌2011年にアドバンスコースに参加した。当時も今も人材育成業務を担当しており、最大のミッションは「人事評価制度の導入」だったので、部会への参加は大きなターニングポイントだった。

 三次市では、2006年度に目標管理制度を導入していたが、職員からは「無駄なことをやらされている」「制度が複雑すぎて理解できない」「人材育成につながっていない仕組みである」という声が挙がっていて、「やらされ感」で制度が運用されていた。

 市としてはそうではなく、市が目指す状態につながっていく実感、人材育成につながっていくような実感が持てる人材マネジメントシステムを改めて導入していかなければならない、という考えに至った。個人的には「この問題を早く何とかしなければ」という焦燥感に強く駆られてもいた。結果、ほかの自治体が導入している制度・ノウハウをそのままダウンロードして問題に対処しようとしたのである。しかし、やはりと言うべきか、そういう方法は経営層らには簡単に見透かされた。当時の副市長からは「まずは課長職から教育を始め、徐々に風土・意識を高めていけ」という指示が出されたのである。

部課長ダイアログで市長が開会挨拶

部課長ダイアログで市長が開会挨拶

人事評価と組織活性化

 出馬幹也部会長とタッグを組ませていただき、市役所変革の道を共にまい進することになったのはその時からである。2011年度、まず私たちは課長としてのあるべき姿、組織としてのあるべき姿、そのための職員としてのあるべき姿を話し合っていくことから始めた。部会の中では当たり前のように行われていたダイアローグ(対話)の風景は、当時の市役所の会議体としては珍しく、部長級や課長級職員が一同に会して組織・職員のあるべき姿を語る風景には感動すら覚えたものだ。その風景を見るにつけ、皆が参画し、あるべき姿をテーマに語り合うことで生まれている笑顔や熱気、パワーこそが何かを動かす原動力になるのではないかと感じた。

 抽象的な「あるべき姿」ではなく、具体的に部長級・課長級・係長級職員で話し合ったあるべき職員像をもとに創り上げた制度が『対話型職員育成制度』である。2013年度には課長級で先行して導入、2014年度に全職員に導入した。

 職位ごとの行動基準を設け、自己評価する。中間期末で上司と対話面談を行い、目的意識、目標確認、動機付け、承認を行っていく。基本的にはそのサイクルを繰り返す。そうすることで職位ごとの役割について意識を高め、普段の行動に反映させていこうとするものだ。現在はさらに次のステップとして、役割意識を高めることと合わせて組織目的・目標に対する貢献度を高めるための制度設計を行っている。

 2014年度は、まずはベースとなる『対話型職員育成制度』を浸透させるため、メールマガジンを全職員に週1回送信し、理解浸透を図った。また半年間かけて職員係のメンバー(なんと6人全員が頼りがいのあるマネ友!!)で職場を回り、制度の目的、方法等を説明することと合わせ、職場活性化をテーマにダイアローグを行った。

 そこで出された良い意見は、メールマガジンを通して職員の皆に読んでもらうことで、多様な意見に触れる環境をつくることを意識した。周囲からは「ゆっくり理解するにはメルマガがいい」「とても役立ち、元気がでます」「評価は厳しくすべきだ」「一段高いところに立ってみているようだ」等々、さまざまな意見をいただいた。また、全職員を対象にした2014年7月のアンケート結果からは、「努力が他者から評価されていると感じる」職員が101人から導入後の翌年2月には198人に増え、また「仕事を通して成長を実感している」職員が同じく151人から255人に増えた。2013年度の導入から2年、徐々に浸透・効果も表れ始めている。

出馬幹也部会長とのタッグで自治体変革に取り組んだ

出馬幹也部会長とのタッグで自治体変革に取り組んだ

コツコツと歩み続ける

 「思い」だけではあるべき姿には進めない。ただでさえ日々の仕事のスケジュールに追われることに加え、人の記憶は1日で7~8割が忘れ去られてしまうという研究結果さえある。1度や2度の研修では効果は期待できない。忘れ去られたことをくよくよと考え、孤立するよりかは、いっそ皆と一緒に明るく笑って忘れたほうが精神的にも健全だ。私たちは組織で活動しているのだ。

 しかし、忘れてはならないことは自分のミッションが何で、何をやりたかったのかということである。それこそ、部会で学んだ「1人称で考える」ことだろう。意識的に周囲に「合わせる部分」と、「合わせない部分」を持ち合わせ、絶妙なバランスで使い分ける。やりたかったことに対してはコツコツと確かな一歩を歩み続けることだ(私自身歩んでいる途中だから、その先の風景を見たわけではないけれど)。

 私にとって部会とは、仕事の上でも意識の面でも大きなターニングポイントだった。部会で学ばなければ、組織活性化を真剣に自分ごととして捉えることはなかっただろうし、多様な人との出会いや異なる考え方との出会いを喜ばなかったかもしれない。何より家内からも「前向きになったね」と言われなかったかもしれない(笑)。

 さあこれからどんな風景が見えてくるか、歩み続けよう。

筆者(手前中央)と職員係の仲間たち。全員マネ友です。

筆者(手前中央)と職員係の仲間たち。全員マネ友です。

■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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