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最強の老後資産形成法「確定拠出年金」とは? (2016/7/15 nezas)

関連ワード : 年金 金融経済 高齢者 

 サラリーマンが老後の生活をまかなうための準備手段として(1)公的年金、(2)退職金・企業年金、そして(3)自らによる蓄えの3つがあるといわれています。公的年金はすぐに破たんするような信頼のおけないものではありませんが、今後拡大することは望めませんし、退職金や企業年金でその公的年金の分をカバーするのも困難でしょう。

 そこでどうしても、「自らによる蓄え」をしっかり考えることが大切ですが、問題はどうやって自分で老後のための資金づくりをするかです。そのための方法はいろいろありますが、おそらく最強の制度と思われるのは「個人型確定拠出年金」です。「個人型確定拠出年金」というのは個人が自分でお金を積み立て、それをあらかじめ用意されている預金や保険、投資信託などの中から自分で選んで積立金を運用するしくみのものです。これは従来からある生保の個人年金保険等とは比べ物にならない優れた制度です。

年金

「個人型確定拠出金」の最大メリットとは?

 まず最大のメリットは税制優遇です。この「個人型確定拠出年金」においては3つの税制優遇が受けられます。まずはじめは掛金の全額が所得控除されることです。これはかなり大きいメリットです。具体的にどれぐらい税金が安くなるか考えてみましょう。

 仮に課税所得が400万円の場合、サラリーマンなら月額2万3,000円、年間で27万6,000円を上限として積み立てできます。この場合、その年の所得税と住民税で合計8万4,000円が戻ってきます。これがもしサラリーマンではなく、自営業の場合、掛金の上限は月額6万8,000円、年間81万6,000円ですから上限一杯掛けると、その年の税還付額は何と23万6,400円にもなるのです。

 生保の個人年金保険の場合、所得控除できるのは年額6万8,000円ですから、それに比べるとサラリーマンでも約4倍、自営業ならなんと12倍もの所得控除を受けられることになります。

 二番目の税制優遇は運用益が非課税になることです。NISAと違って、個人型確定拠出年金は投信のような価格変動のあるものだけではなく、定期預金のような元本確保型金融商品も利用できますから、リスクを取りたくない人にとっても使い勝手が良いといえるでしょう。

 三番目は受け取る時です。年金として受け取る場合には税金がかかりますが、その場合でも公的年金等控除が適用されるため、税額は少なくなりますし、もしまとめて一度に受け取れば、「退職所得控除」が適用されるため、相当まとまった金額になっても非課税となります。退職所得控除という名前がついていても、別にサラリーマンだけが対象ではなく、自営業や専業主婦でもこの控除は使えます。

さらに大きな魅力は○○が安い?

 さらに投資信託で運用する場合の手数料が安いのも大きな魅力です。通常、銀行や証券会社の店頭で投信を買うと、購入手数料が数%かかることが多いのですが、確定拠出年金で投信を買うと、この購入手数料はありません。また、保有している間中、ずっとかかる信託報酬と言われる手数料も金融機関の窓口で購入するものと比べると大幅に安く、中には2分の1ぐらいになっているものも少なくありません。老後資産形成のように運用期間が長いと、その間に負担する手数料の額はとても大きな差になって出てきます。

 この最強の制度である確定拠出年金も今までは自営業や無職等の1号被保険者と言われる人たち、そして民間企業で企業年金のない会社に勤める人たちしか利用することはできませんでした。ところが、2016年5月に「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案」が成立したことにより、2017年1月からはごく一部の例外を除いて誰でもこの制度に加入することができるようになりました。

 特に今回の目玉は公務員が利用できるようになったことです。2015年10月に被用者年金の一元化によって共済年金と厚生年金が統一されましたが、基本的な方向としては公務員の公的年金は減る方向となります。それを補うための手段の一つとしてこの個人型確定拠出年金が公務員でも利用できるようになるのです。おそらく、かつて財形貯蓄が普及した時代のように地方においても公務員の利用が拡大することは十分に考えられます。今まではとかく手厚いと言われてきた公務員にも「自助努力」を促す流れが出てきていると考えるべきでしょう。

大江英樹 経済コラムニスト
大手証券会社で定年まで勤めた後に独立。シニアライフプラン、行動経済学、確定拠出年金、資産運用等をテーマとして執筆や講演活動を行なっている。著書に「経済とお金の超基本1年生」等がある。

提供:nezas

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