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市民が議員を評価する(後編)「市民の私の評価はいかほどか」 (2014/4/9 東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美)

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 日本評価学会春季第10回全国大会(2013年5月)において、「地方議員の活動評価実施時に求められる評価対象の峻別」が日本評価学会奨励賞を受賞した本田正美氏に、議員の評価に関して寄稿いただきました。今回は後編の「市民が議員を評価する『市民の私の評価はいかほどか』」をお届けします。

前編はこちら ⇒ 市民が議員を評価する(前編)「私の議会の質問を評価してください」

議会での質問を評価してわかったこと

 大村市議会議員の村崎浩史さんの議会での質問を評価するという試みについて、前回書いてきた。では、具体的にどのような暫定評価を下したのか。2012年6月定例会の例をとって見てみると、このときの村崎さんの質問通告の内容は以下の通りであった。

<質問通告の内容と、評価軸(大村市議会議会基本条例 第9条)の対照表>

村崎さんの質問通告の内容 評価軸設定で参照した、
大村市議会の議会基本条例 第9条の項目
1.水道・下水道事業について  
(1)大村市水道事業中期経営計画について (1)政策の発生源
(2)提案に至るまでの経緯
(4)市民参加の実施の有無とその内容
(6)財源措置及び将来にわたるコスト計算
(7)政策の効果
(2)情報の統合化について (1)政策の発生源
(2)提案に至るまでの経緯
(7)政策の効果
2.小中学校のバリアフリー化について (1)政策の発生源
(2)提案に至るまでの経緯
(4)市民参加の実施の有無とその内容
(7)政策の効果
3.商工観光行政について (2)提案に至るまでの経緯
(7)政策の効果
(1)地元物産品の販路拡大の手法について
(2)情報発信の手法について

参照:大村市議会基本条例第9条より

(1)政策の発生源
(2)提案に至るまでの経緯
(3)他の自治体の類似する政策との比較検討
(4)市民参加の実施の有無とその内容
(5)総合計画との整合性
(6)財源措置及び将来にわたるコスト計算
(7)政策の効果

 各項目の右に示したのが、大村市議会基本条例第9条で掲げられた各点につき、適合していたと思われる点である(「3.商工観光行政について」については、質問時間の制約などもあり、一括での質問になったため、細目についての評価になっていない)。検証会では、村崎さんの質問では上記の(3)から(5)の観点への言及が少ないことを私は指摘した。これは、上に例示した6月定例会だけではなく、9月定例会での村崎さんの質問でも見られた傾向であった。

 議員が議会で行うすべての質問項目につき、上記の7つの観点を織り込むと言うのは実際には非常に困難である。ただし、論点を明確にした質問を行うという意味では、出来る限り(1)から(7)の各点に配慮した質問を組み立てることが、議会での質問に対する高評価につながると言えるだろう。

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質問の主旨がわかりやすいことが市民から高評価

 第1回議会質問検証会では、参加者が10人弱であったこともあり、アンケートだけでなく、直接感想を伺うこともできた。そのどれをとっても、村崎さんの議会での質問に対しての評価は高かった。村崎さんが行った質問の多くでは、なぜその政策等が必要になったのかや政策等の効果はどのようなものになるのかという基本的な点が必ず押さえられていた。このことにより、質問の趣旨が分かりやすかったということが、引いては高評価につながったのだろう。

第2回の議会質問検証会を開催

 継続的に評価を行う必要があるということで、2013年5月には、第2回議会質問検証会を開催した。このときには、大村市の市民会館大会議室を使用して、40人弱の参加者を得た。この第2回検証会で回収したアンケートによる評価を見ても、概ね村崎さんの議会での質問に対する市民の評価は高かった。

 それもひとえに、村崎さんが議会で質問に立つ際に入念な事前準備を行っていることの表れであると思われるが、検証会を開催してみて、彼の説明能力の高さを実感させられたというのも事実である。あるいは、議会の質問への評価が高いのではなく、行った質問についての彼の説明への評価が高い可能性もあるのではないか。そのような疑問も生じるところである。

 そこで、2013年5月の日本評価学会春季第10回全国大会では、「地方議員の活動評価実施時に求められる評価対象の峻別」と題する研究発表を行った。これは、議会での質問への評価と質問の説明への評価の峻別の必要性を説いた研究であり、「議員の質問に対する評価手法の開発」というテーマは、学術的にも最先端を行くものであり、村崎さんのような発想と取り組みが研究分野においても新たな地平を切り開いているのである。

今後、どんな展開があるのか

 2014年4月には、第3回の議会質問検証会を開催する予定である。ここでは、新たな取り組みとして、2013年に村崎さんが定例会で行ったすべての質問を包括的に評価するつもりである。

 もちろん、地方議員の議会での活動は、定例会や委員会での質問に限られない。議会活動全般を評価するのであれば、また別の評価軸と評価対象があるだろう。しかし、いまや多くの地方議会がWebサイト上で会議録や録画映像を公開しており、特に議員の議会での言動は誰もが事後に確認しやすい状況になりつつある。まずは、議員による一般質問を市民が第三者も交えながら評価していくということが求められているのではないだろうか。

本田正美氏東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美
1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。

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