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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ】

第12回 議員間討議の充実による議会力のアップ~千葉県流山市議会の改革の取り組みから~ (2014/2/13 早大マニフェスト研究所)

関連ワード : ダイアローグ 千葉 神奈川 
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早稲田大学マニフェスト研究所によるコラム「マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ」の第11回です。地方行政、地方自治のあり方を“マニフェスト”という切り口で見ていきます。掲載は、毎月第2木曜日。月イチ連載です。今回は、「議員間討議の充実による議会力のアップ ~千葉県流山市議会の改革の取り組みから~」をお届けします。

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 議会は、議論をし、物事を決める場所です。しかし、現在、全国のほとんどの議会が、審議といいながら、執行部に対する質問と応答の場に化していると思われます。執行部に対する質問も場合によっては必要だと思います。しかし、問題なのは、それだけで終わっていることです。重要なのは、執行部の説明、質疑の後に、しっかりと議員間で討議することだと思います。議会のミッション(使命)は民意を反映することです。議論される議案には、メリットとデメリットが必ずあります。それを住民の代表である議員が多角的、複眼的な視点で自由に議論をし、合意を作り出すことが求められています。場合によっては、議論の過程の中で妥協案や、新しい提案が出てくるかもしれません。また、議会報告会などで、住民の意見を事前に確認することが必要になるかもしれません。「議会基本条例」の中に、議員間討議をうたっている議会は多くあると思いますが、現実に議員による自由闊達(かったつ)な討議が行われているか甚だ疑問です。

自由討議をする流山市議会議員定数等に関する特別委員会

自由討議をする流山市議会議員定数等に関する特別委員会

 話し合いを表す英語に「ダイアローグ(対話)」という単語があります。ダイアローグは、「ディベート(討論)」のように、相手の意見を否定したり、物事に白黒をつける話し合いの手法ではなく、お互いに相手の意見を聞き合い、相手の立場に立つこと、それぞれの考えを理解した上で意見を相対化し、新たな解決策を導く話し合いの手法です。議会での議論、議員間討議は、ダイアローグにならなければならないと思います。今回は、千葉県流山市議会の取り組みを事例に、議員間討議のあり方と、その実践の方法論を考えたいと思います。

流山市議会の議会改革の取り組み

 流山市議会は、2012年に日本経済新聞社産業地域研究所が全国810市区議会を対象に実施した議会改革度ランキング(情報公開度、市民参加度、運営改善度)で全国1位を獲得するなど、議会改革のトップランナーです。

 2001年の「地方分権検討協議会」の設置をスタートに、本会議のインターネット中継、議会費の予算策定(要望)、一般質問での一問一答方式の導入、専門的知見の活用など、最先端の改革の積み重ねの集大成として、2009年3月に「議会基本条例」を制定しました。その後も、役選人事のオープン化、議長立候補制度の導入、議会報告会の開催、委員会へのパソコン持ち込み、プロジェクターやホワイトボードの活用、委員会のUstream中継、スマートフォン電子採決、SNSの公式ページの開設、産官学連携による議会独自ホームページの共同研究、議会サポーターの公募、議会報告会へのファシリテーター活用、無作為抽出型の市民アンケートの実施、公聴会の開催など、「市民に開かれた信頼される議会」を目指し改革を継続しています。

 流山市議会の議会改革は、新しいことに積極的に挑戦しようとする進取の姿勢と、丁寧な合意形成の積み重ねにより実現しています。また、議会改革の最終的な質的成果(アウトカム)として、オープンガバメント(=市政の見える化と市民参加促進による民意の反映)をゴールとしています。


流山改革の歴史

流山改革の歴史

流山市議会の議員間討議改革

 流山市議会の「議会基本条例」にも、第16条(自由討議の保障及び拡大)で、議員間討議について規定されています。そうしたこともあり、流山市議会では、委員会における議論の仕方についての改革にも積極的に取り組んでいます。

 2013年3月に議論がスタートし、立ち上がった「議員定数等に関する特別委員会」では、議員の身分に関わるテーマということもあって、積極的に自由討議を実施しています。議員定数に関しては、議員の意見が分かれるテーマでもありますし、そもそもの議会の存在意義、委員会の役割、住民の意見をいかに反映させるか、財政問題など、論点もさまざまあります。それぞれの論点について、各議員の意見を聞き、意見の相対化を行っています。議員定数のテーマは自由討議にもってこいである一方、従来は数の論理で、議論の深まりなしに多数決で決められていたケースが多かったと思います。流山市議会では、「議会基本条例」に規定されていることもあり、議員定数に関する参考人招致や公聴会を開催し、より深い議論を行うことに努めています。

ワークショップの手法を活用した流山市議会広報広聴特別委員会

ワークショップの手法を活用した流山市議会広報広聴特別委員会

 もう1つ、ダイアローグ形式による自由討議を実践しているのが、「議会広報広聴特別委員会」です。この委員会では、2013年の10月に開催された委員会で、「現状の広報広聴の問題点や課題、目指すべき方向について」というテーマで、ワークショップの手法を取り入れてダイアローグ型の自由討議を試行しました。ワークショップ開催の大きな目的の1つは、流山市議会の広報広聴機能の意義や思いを自分たちの言葉で表現することとされています。

 やり方としては、委員を2グループにまず分け、そこで議員間討議(ダイアローグ)をしてもらいます。他者の意見を否定するのではなく、より良いアイデアを出すことが出来るように、各自は前向き、建設的な発言をするのがルールです。ホワイトボードや付せんを活用して、各議員の意見がなるべく多く出るようにしています。また、参加メンバーは委員会の委員10人のほかに、議会広報サポーター2人(市民への情報発信の充実のため公募で引き受けていただいた方)、議会事務局職員2人にも参加して協議会方式で開催し、多様な意見を反映させる工夫がされています。

ワークショップの成果物

ワークショップの成果物

 会議は、何かを決めて、新しい行動を起こすために行われます。この取り組みは、付せんを活用して参加者のたくさんの意見を拾い、ホワイトボードを利用することでそれを共有、視覚化、意見の集約が行われるダイアローグ型自由討議の1つのやり方であると思います。なお、この様子はUstream中継(録画)で見ることが出来ます。

※「H25.10.21 議会広報広聴特別委員会 Ustream中継

議員間討議を妨げるネック

 議員間討議を妨げるネックは、大きく2つに分けられると思います。1つは議員の意識とスキルなどのソフトの問題、もう1つはファシリティ、設備などのハードの問題です。

 まず、議員の意識とスキルの問題ですが、冒頭で述べた通り、審議を執行部への質疑と応答と思い込んでいる議員が多くいるということです。まずはその思い込み、ドミナントロジックを打ち破ることがスタートです。それから、会議を運営するスキルも必要になります。とりわけ、委員会を仕切る委員長のスキルは重要になります。これまで委員長は、与党会派の2期目3期目の議員が、年功序列で順番になることが多かったと思います。つまり、委員会の議論を仕切れるか否かは、委員長の要件には入っていませんでした。会議を仕切った経験などの場慣れも必要ですが、会議の議論が深まるように進行するファシリテーションの技術が、委員長、そして各議員に求められます。そうした研修、訓練が必要かもしれません。また、委員会をネット中継することは、開かれた議会、情報公開だけではなく、議員に緊張感を持たせ、委員会での議論の深まりにつながると思います。

逗子市議会のプロジェクターを活用した委員会審議

逗子市議会のプロジェクターを活用した委員会審議

 次にハードの問題ですが、議会の委員会室は、ホワイトボード、プロジェクター、スクリーンなどの設備がない議会がほとんどです。パソコンの持ち込みすら認められない議会も多いです。民間企業の会議室では、当たり前に導入されています。ホワイトボードは、議論が空中戦になり、話が錯綜(さくそう)する状況を、視覚化することに大変効果があります。また、プロジェクターを活用して資料や写真を映写しながら議論することにより、多様な情報に基づいた議論を行うことが可能になります。第11回のコラムで紹介した、議員だけでなく理事者も含めた「オールタブレット議会」を実現した神奈川県逗子市議会でも実践されています。

 こうしたハードの問題の大きなネックになっているのは、旧態依然とした各議会の「会議規則」だと思います。ICT(Information Communication Technology)は日々進化しています。民間企業はそれに対応し、新しい会議の手法を開発しています。議会だけが、取り残されてはいけません。「会議規則」のフレキシブルな運用、変更が必要だと思います。

※「流山市ICT推進基本計画

議論する議会を目指して

 議論をする場である議会にとって、議員間の自由な討議は欠かせません。しかし、それができている議会は少ないと思います。議員間討議があることでその先に、議案の修正や、政策型の議員提案条例が生まれてくると思います。議会改革のアウトカム、市民の実感は、そうしたところにあると思います。ダイアローグ型の自由闊達な議員間討議の定着と充実で、地域の議会の議会力が大きくアップしていくことを期待しています。

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佐藤淳氏

青森中央学院大学 経営法学部 専任講師
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員
佐藤 淳
1968年青森県十和田市生まれ。早稲田大学商学部卒業。三井住友銀行での12年間の銀行員生活後、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。現在、青森中央学院大学専任講師(政治学・行政学・社会福祉論)。早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員として、マニフェスト型の選挙、政治、行政経営の定着のため活動中。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
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Twitterアカウント(@wmaniken)
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