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【LM推進地議連連載/地方議員リレーコラム】

議会改革ブレークスルー 10のセオリー~議会改革の先にあるもの~(2012/08/15 流山市議会議員 松野豊/LM推進地議連)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載コラムを掲載しています。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信中です。第14回は、千葉県流山市議会議員の松野豊氏による「議会改革ブレークスルー10のセオリー~議会改革の先にあるもの~」をお届けします。

議会改革の目的とは

 自治体議会の改革や自治体づくりの知恵と経験の共有を目的とした勉強会「市民と議員の条例づくり交流会議2012」が7月28、29日、東京・市ヶ谷の法政大学で開催されました。交流会議では法政大学の廣瀬克也教授が基調講演を行い、「議会改革のアウトプット(取り組み)=“議会改革が進んだことで、何が変わったのか?”は見えてきたが、アウトカム(成果)=“それが成果として何を生み出したのか?”が見えていない」という主旨のことをおっしゃっていました。(参照:政治山取材記事)

 確かに議会基本条例は、2006年5月18日に施行された北海道栗山町議会を手始めに、すでに全国250を超える自治体議会で制定され、さらには全国50を超える自治体議会で制定が検討されています。また、議会報告会の開催も全国各地で例が見られるようになってきました。いわゆる“アウトプット”は見えてきたと言えます。しかし、議会改革の先にあるもの、つまり「議会改革が進むと、市民生活の何がどう変わるのか?」といった“アウトカム”が、なかなか見えてこないのが現状です。

 そして、議会改革自体は着々と進んでいるものの、相変わらず議会内では会派や政党間の牽制などがあり、チームとして一枚岩になっていない自治体議会が散見されます。

 議会は議事機関(注1)です。個別具体の議案の賛否については、議員同士や会派間で議員間討議を重ねてオープンな場(委員会や本会議)で、大いに論争をすればよいのですが、議会改革については、議事機関として執行機関と対峙するという二元代表制のもとで、会派党派を超えて1つにならなければいけません。

 また、議会改革のアウトカムを考える時には、そもそも地方自治や自治体議会の目的は何か? ということを確認しておく必要があると思います。

 地方自治の目的は「住民の福祉の増進」(注2)です。日本国憲法や地方自治法に照らして考えると、自治体議会とは、選挙によって選ばれた市民の代表である議員の集合体で、民意を反映する場であり、行政における最高の意思決定機関であるということです。

 このことを踏まえたうえで、私が考える地方議会改革のアウトカムは、以下の通りです。

1. 議会や議員のコンシューマー(シチズン)インサイトが強化されることにより、民意の反映が推進される。

2. 他自治体からの視察が増えて(1)地元経済が活性化する、(2)議員全員が交替制で説明員を務めた場合、改革に中心的に関わってきた議員以外のスキルアップが図られ、改革への理解が深まる。

 「市民に開かれた議会」を目指して、議会の情報公開や議会への市民参加が推進されていくことで、議会や議員のコンシューマー(シチズン)インサイトが強化され、その結果、議会の最重要ミッションである「民意の反映」のクオリティが向上していくのだと思います。つまり、市民の方々にとっては「議会改革が進むと、市民の意見が市政に反映されやすくなり、市民(皆さん)にとって、より住みやすい街になりますよ」ということです。

議会改革≒自分改革

流山市議会議員 松野豊氏

 議会改革というと、議員も市民も職員も「自分は、こんなによい提案をしたのに、議会がOKしてくれなかった。うちの議会(議員)はダメだ」といった発言をする人がいますが、逆に言えば「自分の提案が議会(議員)を説得する域にまで達しなかった」ということです。議員も市民も職員も他者を批判するのではなく、原因はすべて自分にあると考えたほうが、物事は一歩前に進むのではないでしょうか。

 “修身斎家治国平天下”
 つまり、『議会改革≒自分改革』なのです。

 とはいえ、「議会改革が大事なのだ!」と声高に訴えても、抵抗勢力から言わせれば「議会改革ばかりが議会や議員のミッションではない」ということになります。

 ではどうすれば、市民のための議会改革を一歩前に進めることができるのでしょうか? 「地方議会改革を推進したいけれど、なかなかうまく前に進まず困っている」という現職地方議員の方々向けに「議会改革ブレークスルー 10のセオリー」というタイトルで2011年に書いたブログを改訂しましたので、ご一読いただければ幸いです。

議会改革ブレークスルー 10のセオリー~改訂版~

【Theory1】
議会改革は議員同士のコミュニケーション改革。
【Theory2】
地方議会に関わる法律(主に日本国憲法や地方自治法)や、仕組み(議会制民主主義、二元代表制など)を正確に理解して自分自身の腹に落とす。
【Theory3】
議員全員対象の研修会を企画して、大学教授などの学識経験者から、語ってもらう。
【Theory4】
議会改革先進地に議員個人や会派単位だけで行くのではなく、議会運営委員会や議会改革特別委員会等、議会の委員会として行く。
【Theory5】
議員(個人)の活動と、選挙のための活動、会派の活動、議会としての活動の棲み分けを明確にする。
【Theory6】
自分の手柄にしない。議会は合議制の議事機関。
【Theory7】
議員同士の議論の様子を公開中継する。
【Theory8】
議会内で合意形成できたものは、決議等で議決をして機関決定する。
【Theory9】
議会事務局を味方につける。
【Theory10】
議会基本条例を制定する。

◇        ◇        ◇

(注1)議事機関…日本国憲法第8章 地方自治. 第93条 【地方公共団体の機関】第1項 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。(記事に戻る)

(注2)住民の福祉の増進…地方自治法 第1編 総則 第1条の2 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。(記事に戻る)

流山市議会議員 松野豊
著者プロフィール
松野 豊(まつの・ゆたか):1969年11月19日千葉県流山市生まれ。麗澤高校卒業後、株式会社リクルートで人材採用戦略立案や組織風土改革に従事。流山市議会議員(現在、4期目)。超党派若手地方議員で「東葛ステイツマンクラブ」発足(初代代表幹事)。NPO 法人地域政策研究所設立、中央学院大学法学部特別講師(2006年3月退任)。NPO法人ドットジェイピー理事。「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」発足(初代共同代表)。「せんたく 地方政府創造会議 議員連合」事務局長補佐(2009年8月解散)。『流山市議会を議会改革で日本一にする』と公言し、本年5月に日本経済新聞社が発表した地方議会改革度ランキングでは、全国810市区議会の中で流山市議会が全国1位にランキングされた。 ※プロフィールの詳細
HP:流山市議会議員 松野豊(まつのゆたか)の五感
Twitter:@matsunoyutaka
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