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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第86回 議会報リニューアルに続く、あきる野市議会の議会改革と委員長奮闘記 (2014/5/21 東京都あきる野市議会議員 子籠敏人氏/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第86回は、東京都あきる野市議会議員の子籠敏人氏に寄稿いただきました。議会報リニューアルから約1年、進み続けるあきる野市議会の報告です。

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◇      ◇      ◇

議会報リニューアルから、改選後の議会改革の動き

 2013年2月に議会報をリニューアルしたあきる野市議会は、その直後の6月に改選期を迎え、7月から新たな議員構成となりました。最近の議会トピックスは、何と言っても議会だよりのリニューアル、「ギカイの時間」発行に伴う全国からの視察ラッシュです。

 そんな中、新議員で臨んだ初の定例会閉会後の10月に、新議長の発議により、全6会派からの代表者で構成する新たな「議会改革推進委員会」(議員8人で構成、以下、推進委員会)が設置され、協議が始動。私も委員会メンバーとなりましたが、個人的には「自分が委員長」に指名されるという、青天の霹靂(へきれき)からのスタートでした。

想定外の推進委員長に就任して、考えたこと

東京都あきる野市議会議員 子籠敏人氏

東京都あきる野市議会議員 子籠敏人氏

 正直なところ、自分が委員長に指名されることは全くの「想定外」で、私もベテランの先輩議員になってもらおうと考えていました。しかし、初日の協議で全会派から推挙を受け、これを自分としても重く受け止めて「わかりました!私も腹を決めます!」と受諾しました。ちなみに、その時の委員長就任あいさつも「私も腹を決めましたので、皆さんにも特段の協力をお願いします」といったもので、さっそく委員会開催の頻度についても「月に1、2回は行い、定例会中も開催させてもらいたい」と精力的に作業を進めていく意向を示しました。内心的には「チャンスと思って、いっちょやったろう!」というスイッチが既に入っていました。

 そして、本格的に議論をスタートさせるにあたり、私が委員長としてまず考えたのは、議論の進め方として「短期的に結論を出せるもの」と「時間をかけて結論を出すもの」の両方を並行して扱い、すぐに判断が下せそうなものについては積極的に結論を出すように努めて、次の定例会に即反映させていくということでした。

 この思いの背景には、前任期で経験した議会改革の反省がありました。当市議会では、前任期の4年間の間にも、「より開かれた議会運営」を目指し、前半には「議会改革検討委員会」が、後半には「議会改革推進委員会」が設置され、私も後半には委員を務めていました。しかし後半の委員会では、市民サイドから出された議員定数削減を求める陳情により、議員定数の問題が最大の議題となり、委員会内でも賛否の平行線が続く中で、多くの時間やエネルギーが費やされ、議員定数についてはもちろん、ほかの議案もほとんどアウトプットができなかったことが脳裏に焼きついていました。

 また、改革委員会の結論の出し方として一般的に良くあるパターンに、「すべての協議事項について結論を出した上で答申書をまとめて議長へ提出し、合意した事項について議会へ反映させる」といったステップが多いかとも思いますが、私は結論が出た事項については、その都度、鋭意、議会運営に反映させていくことが、当市議会の掲げる「より開かれた議会運営」のためにも望ましいと考えました。幸い、これについては議長も同じ考えを示してくださったので、進めやすくなりました。

小さなアウトプットの積み重ねが、大きな改革実現のエネルギーに

 私は「小さなアウトプットを重ねていくことが、より大きな改革を実現させるエネルギーになる」と考えています。と同時に、委員長として、限られた期間の中でより多くのアウトプットを出すための「進行管理」に神経を注いでいます。

庁舎入口掲示

庁舎入口掲示

 ちなみに、推進委員会では、まず、この委員会で扱ってほしい改革項目について、全会派からリストを提出してもらい、リクエストの多かったものから協議のテーブルに乗せました。そして12月定例会では、常任委員会の傍聴を「制限公開」から「原則公開」へ改める条例改正をさっそく行い、3月定例会では、庁舎入口に定例会の日程表を掲示する取り組みをはじめ、傍聴者への配布資料の拡大や予算特別委員会での予算書の閲覧、また議員に対しては議場への一部電子機器の持ち込み可などを実施。この1つ1つの改革は小さなものかも知れませんが、委員会協議の序盤で、これらの成果物を着実に出すことができたことは、今後の委員会運営にとって非常に価値あるステップであり、精力的に合意形成をしてくれた委員会メンバーに、委員長として感謝しているところです。また、この成果は、委員会全体としても着実に改革の歩を進め、手応えと更なる改革へ取り組んでいく気持ちやエネルギーにつながってきていると感じています。

視察ラッシュと議会改革への連動も

 冒頭にも記しましたが、最近のわが議会トピックスは、何といっても議会だよりのリニューアルに伴う全国からの視察ラッシュです。

 あきる野市議会には、2013年2月の議会報リニューアル以降、特に同年11月にマニフェスト大賞の「ネット選挙・コミュニケーション戦略賞」の部門で優秀賞をいただいてから、全国各地より視察が相次いでいます。私はこの波もわが議会のある改革を進める強力なきっかけになると考えていました。それは「議員による視察対応」です。

多摩市議会視察

視察対応の様子

 以前、第53回の寄稿でも記しましたが、これまであきる野市議会では、議会運営に関する視察団が来庁した際には、基本的に議会事務局職員が応対していました。しかし、「議会の視察は議員が対応すべき」だし、議員が説明や質疑応答を重ねることで、議員の説明力やプレゼン力も高まり、議会のレベルアップにもつながる。加えて、説明後の質疑でよく質問される「改革点の合意形成をどのように成し遂げたのか」といった点などについては、議員間同士の方が本音で伝え合え、視察団の満足度も高いと感じていたからです。

 そこで、この点についても推進委員会で協議した結果、全会派の賛同を得て、市議会だよりを担当している議会報編集特別委員会のメンバーを中心に、視察対応を行っていく体制にこの4月から変わりました。

最大のテーマは、議会基本条例への取り組み

 委員会条例の改正に始まり、傍聴者への資料配布の拡大や、庁舎入口への議会日程の掲示など、「開かれた議会運営」に向け、いろいろなアウトプットを重ねているあきる野市議会の議会改革。これからも推進委員会では、政務活動費マニュアルの作成やICTの推進など、大小さまざまなテーマについて協議を進めていく予定ですが、その中でも最も時間をかけて取り組んでいく予定なのが、「議会基本条例」についてです。議会基本条例については、推進委員会の設置直後から調査研究を行っていく方針が合意され、推進委員会内での協議に加えて、全議員の理解を深めるために、推進委員会の主催で、先進地の埼玉県所沢市議会や東京都調布市議会への視察を行ったほか、有識者である法政大学の廣瀬克哉教授を講師に招いて勉強会を開催するなど、検討を進めています。

所沢市議会

所沢市議会への視察模様

うれしい便りも

各地でリニューアルされた議会報

各地でリニューアルされた議会報

 最後に、本市の議会改革から話は少しズレてしまうかもしれませんが、うれしいニュースを1つ。それは、議会報リニューアルの視察にこれまで来訪された議会の中で、東京都の羽村市議会をはじめ、茨城県の鹿嶋市議会で、このほど議会報のリニューアルが成され、刷新された市議会だよりが当議会に届き始めました。このほかにも、リニューアルへ向けたステップとして、わが議会が行った市民アンケートと同じ手法を実施している市議会も各地で相次いでいるなど、私たちが提供したノウハウが各地に伝わり、全国的な議会報の底上げに寄与してきている実感をつかみ始めています。これからもこれに満足せず、リニューアル先進地として議会だよりのブラッシュアップと、より手に取ってもらえる議会だよりへ工夫を重ねていきたいと思います。

「あきる野市方式」の議会だよりアンケート

「あきる野市方式」を採用した守谷市の議会だよりアンケート

著者プロフィール
飯島雅則氏子籠 敏人(こごもり としひと):東京都あきる野市生まれの40歳。「縁あって生まれた地域のために生きる!」をモットーに、高校時代から地域の様々なボランティア活動に熱中。そして立教大学経済学部を卒業後、地元の地域新聞社に記者として入社。その後、時事通信社での勤務を経て、2009年の市議選で初当選。現在2期目で会派の幹事長として奔走。議会では1期目で福祉文教委員会委員長、2期目では環境建設委員会委員長を務めているほか、昨秋に設置された議会改革推進委員会の委員長も務める。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了(社会デザイン学修士)。現在、同研究科博士後期課程在学中。
HP:あきる野市議会議員 子籠敏人のホームページ
Facebook:子籠 敏人
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