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【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第25回 ほんとうのいいチームを作りましょう (2016/12/1 長野県伊那市 建設部 建設課 国県事業対策係 北原教正)

関連ワード : 伊那市 公務員 長野 

「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。

◇        ◇

 私は2015年度に伊那市第3期生として人材マネジメント部会に参加しました。1~3期生は伊那市人材育成基本方針の改定を見据え、出馬部会長にお越しいただくなど、年間を通じて3回の部課長研修を開催しました。

 伊那市は係長試験に合格しなければ、係長へは昇格をしません。仕事に対して前向きな者でなければ合格できないような試験内容にもかかわらず、合格者の中にも昇格に対する不安の声を聞く機会があったことから、私たち3期生は部課長から下の職層、私も含めた新任係長を対象にダイアログを開催し現状把握を行いました。

 新任係長が持つ「不安な点」の多くは日常業務に対しての意見が多かったものの、「係長として何をしたいか」という点では「明るい職場づくり」や「人間関係を保つ」などの職場の雰囲気、環境づくりを意識した意見が多く(アンケート結果で70%)ありました。さらに「心に残った言葉」では、ほとんどが業務そのものではなく、「チームワーク」や「コミュニケーション」など組織を意識した言葉が出されました。

 同時に開催されていた出馬部会長の部課長研修のテーマは「伊那市役所を“いいチーム”にする」でした。このような背景から「いいチーム」を参加者で考え、いいチームを作るにはどう取り組めば良いのかを考えました。

新任係長ダイアログ

新任係長ダイアログ

『チーム』の3条件:「目的を共有している」「役割を分担している」「何かあったときに、助け合える」

 野球チームをゼロから作ろうと考えた時に、まず最初に必要なのは、集まった人材の特徴をお互いが知ることだと考えました。ホームランバッターなのかアベレージヒッターなのか、外野が得意なのか、内野が得意なのか、そのようなことを知り、打順や守備位置を決めると思います。この「お互いを知る」という部分において約600人の市役所職員の相互理解をする必要があると感じました。

 まずは業務時間外に開催している「職員自己啓発学習ゼミナール(SUIゼミ:Step Up Ina)」において、「いいチームを目指して」をテーマに副市長へ講座をお願いし、普段接することが少ない課長補佐以下級を対象として講座を開催しました。職場の先輩として職員へのアドバイスをお話しいただき、ダイアログも行いました。話の内容はとても有意義でしたが、参加者が30人と自分が予想していたより少なく、このようなSUIゼミや人マネが開催する時間外勉強会は今後工夫が必要と感じました。

SUIゼミ

SUIゼミ

 また、併せて人マネ研究会に参加している状況を庁内広報にお知らせしました。そこに、あるべき姿と思える組織として、私も加わっている「南アルプス北部地区山岳遭難対策協議会(救助部)」(略称:南ア北部遭対協)についても掲載したのですが、職員から反応がなかったことにショックを受けました。

 自分は少なからず組織を良い方向に変えることができると考えていましたが、まったくできませんでした。夏期合宿で幹事団からの言葉に心が震え、その後に行動を起こしましたが、そこから見えた現実、現状に落ち込みました。それでも人マネに一緒に参加していた「仲間」や「マネ友」と、夏の幹事団からいただいた言葉のおかげで小さくても次の一歩が踏み出せました。

庁内広報

庁内広報

 新任係長ダイアログを再度開催し、それぞれがあるべき係長職像を考えてもらいました。お互いを知り、他部署の職員を知ることで自分が困ったときに助け合える横のつながりを作る一助になっているものと信じています。この新任係長ダイアログは、今年度も引き続き開催しています。

 自分ができることに取り組もうと、年度末に「2015年度を振り返って」と題して課内ダイアログを開催しました。

 2015度一部の部局で行った「ダイアログを取り入れた予算編成」を全部局で行うことを2016年度人マネ参加者が庁議で提案、説明を行い、全部局長了承のもと、現在2017年度予算編成が行われているところです。私の所属する建設課においては、ダイアログを元に新たな施策の実現に向け現在調整を行っています

 また、「伊那市職員の知恵の引継ぎ」と題して、2016度末で定年退職を迎える職員、すなわち、『これまでの伊那市を創ってきた職員』から、『これからの伊那市を創る職員』へ、自分の経験やアドバイスなどを話してもらう会を開催しています。

 伊那市は2006年に旧伊那市、高遠町、長谷村が合併し新伊那市となりました。私は60人あまりの職員数であった旧長谷村役場職員でした。合併当時、見ず知らずの職員との事業調整等に不安だったことを記憶しています。合併して10年、多くの職員とも親しくなり、皆さんに助けられて仕事をしています。伊那市職員として、伊那市民のために働く想いは皆同じだと思います。

「市役所組織をいいチームにし、伊那市の未来を語り、歴史を創る」

 2015年度第5回研究会および論文でのコミットメントを忘れずに、「伊那市民のため」「自分のなすべき仕事を行い」「困った時に助け合える」そういった状態が継続される組織を目指し、微力でも今後も取り組んでいこうと思います。

長野県伊那市 建設部 建設課 国県事業対策係 北原教正さん

長野県伊那市 建設部 建設課 国県事業対策係 北原教正さん

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■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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