「日本財団在宅看護センター」4期生15人が卒業―半数は年内開業へ (2018/2/13 日本財団)
半数の人が開業決まる
5期生の受講者募集中
在宅看護センターの起業を目指す看護師の育成と開業を支援する「日本財団在宅看護センター」事業の修了式が1月19日、東京・赤坂の日本財団ビルで行われた。この事業は、日本財団の助成を受け、笹川記念保健協力財団が実施しているもので、今回は4期生、計15人が8カ月間の研修を受け、卒業した。今後、年内開業を目指して準備を進める。
修了式には、笹川陽平・日本財団会長、喜多悦子・笹川記念保健協力財団会長のほか、来賓や修了生の家族らが出席した。笹川会長は式辞の中で、「高齢化社会が進み、在宅看護の普及なしには自宅で安心して終末を迎えることはできない。心豊かな終末を迎えられるかどうかは、お金ではなく、皆さんの愛情豊かなサービスにかかっている」と述べ、今後経営者としての「目配り、気配り、心配り」の大切さを強調した。
続いて、喜多保健協力財団会長が修了生1人1人に修了証を授与した。この後、来賓の福井トシ子・日本看護協会会長(代読)、清水嘉与子・日本訪問看護財団理事長、辻哲夫・元厚生事務次官が祝辞を述べた。最後に、修了生を代表して坂下聡美さん(44)が謝辞を述べた。坂下さんは8ヵ月間の研修に触れ、「私たちは大海原に出航する船のように、海図の見方から羅針盤の使い方まで手取り足取り教えていただいた。これからも苦難が待ち構えているだろうが、講師の先生方の教えを守り、『看護師が社会を変える』を実践してまいります」と、力強く抱負を語った。
この後、修了生の坂下聡美さんと丸山美智子さん(49)に研修中の苦労話や今後の意気込みを聞いた。坂下さんは北九州市から単身上京、シェアハウスに住んで研修に通った。「主人と子ども2人を置いて東京に出てきたので、家賃補助がありがたかった。主人も子どもたちの食事を作るなど、協力してくれた」と話した。坂下さんは、これまで一緒に働いてきた仲間と6月上旬をメドに地元で開業する予定だ。「気心が知れている仲間がいるのが心強い。ただ、在宅で看取りをすることがまだ一般的ではないので、地域で受け入れてもらえるかどうか心配です」と話していた。
一方、丸山さんは和歌山県紀の川市で3月から開業することが決まっている。スタッフは、常勤職員とパートなど計6人でスタートする予定だ。丸山さんは、在宅看護をやりたいと思い、日本訪問看護財団へ相談に行き、在宅看護センターのことを初めて知った。「地方にいると、こうした情報がなかなか入ってこない。このセンターのことが多くの人に知られるようになれば、受講者がもっと増えると思う」と話していた。
「日本財団在宅看護センター」事業は2014年に開始され、昨年までに35人が卒業し、29人が開業している。今回卒業した15人のうち、半数はすでに年内開業が決まっている。
笹川記念保健協力財団では、今年6月に開講する5期生の受講者を募集している。募集人数は30人程度で、5月末まで応募を受け付ける。
【メモ】「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業
地域で在宅看護センターを開設するため、起業・運営・経営を担うことができる看護師を育成する。応募条件は(1)10年程度の臨床経験を持つ看護師(2)研修終了後、おおむね1年以内の起業を意図する方。または現在、在宅看護事務所か訪問看護ステーションに勤務し、施設の機能強化を目指しうる立場にある方(管理者の同意または推薦書が必要)。受講期間は6月から翌年1月までで、受講料は40万円。希望者には受講中、家賃を補助、起業時には起業支援金40万円、機材整備などに150万円程度を支援する。
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