NPOやソーシャルビジネスの事業、社会的インパクト評価を日本でも (2016/7/22 日本財団)
Social Impact Day 2016
英国専門家ら招いたシンポジウム開催
日本財団は14日、社会課題の解決に向けた事業評価「社会的インパクト評価」に関するシンポジウム「ソーシャル・インパクト・デイ2016 ―いよいよ動き出す社会的インパクト評価の未来―」を、東京都港区の笹川記念財団ビルで開きました。欧米で積極的に取り入れられているこの取り組みへの理解を深めようと、NPO関係者など約300人が参加。世界的な専門家の1人トリス・ラムレイ氏の基調講演もあり、積極的な意見交換が行われました。
「社会的インパクト評価」は、社会的課題解決を行うNPOやソーシャルビジネスの担い手が、自らの事業について、社会的にどれほどの影響を与えられたのかを可視化する活動です。この結果を社会に評価してもらうことで、人材や資金を呼び込み、組織や事業の成長環境を整えることなどを狙っています。
日本では、実践例はごくわずかにとどまっており、推進する仕組みや機運も不足した状態です。しかし、海外での先進事例から有効性が確認されており、日本でも昨年度、内閣府の共助社会づくり懇親会」の中に、社会的インパクトに関する作業部会が設置されました。今年3月に推進に向けた報告書が発表されるなど、動きが活発化してきています。このたびのシンポジウムにあたっても、参加者募集の告知は期間や方法の限られたものでしたが、開催日を待たずして定員に達し、関係者の関心の高さを伺わせました。
基調講演を行ったラムレイ氏は、世界の社会的インパクト評価を牽引する英国の組織「ニュー・フィランソロピー・キャピタル(NPC)」のディレクターです。講演では、英国の先進事例を引きながら、社会的インパクト評価を推進するための様々な視点を紹介しました。
ラムレイ氏は冒頭、インパクト評価を行う目的を、(1)事業を振り返り改善すること、(2)事業を他者に説明できるようにすること、(3)事業に関連する研究に貢献すること、(4)事業への投資を考える人・組織の決定を助けること――の4つに分類し、それぞれが関連して存在していると指摘しました。また、NPCが英国の慈善団体などに対して行った調査結果によると、「インパクト評価を行ってよかったこと」として最も多かった答えは、上記の目的①である事業の改善であったものの、インパクト評価を行う一番の動機の関しては、「出資者・寄付者からの要望」が最も大きかったことなどを紹介しました。
また、ラムレイ氏は様々な概念や事例を紹介した後、「インスパイアリング・インパクト」と呼ばれる事業を紹介。これは、優れたインパクト評価を推進することを目的に、2022年まで10年にわたり全英で行っているもので、具合的には、より多くの組織に対し、彼らの事業の社会的インパクトを測定することを促したり、1つの事業体が評価を通じて得たことを同じ分野の他の事業体にも共有したりしているそうです。ラムレイ氏は、このような取り組みを通じて、インパクト評価を行う人材や組織の体系を整えていくことの重要性を訴えました。
シンポジウムではそのほか、2つのパネルディスカッションが行われました。基調講演に続く第1部は「社会的インパクト評価の『価値』を語る」、第2部は「社会的インパクト評価を推進する『仕組み』を考える」がテーマ。この分野で活躍している日本の団体の代表や研究者が登壇し、活発な議論が展開されました。
- 日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。
- 市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを日本財団は目指し、活動しています。
- 関連記事
- 年間2万4千人―「いのち支える自殺対策のモデルに」
- 「水着を買えず授業を休む…子どもたちの貧困は遠い国のことではない」―担当者インタビュー(1)
- 子どもと高齢者の予算配分は1対7、貧困は「可哀想」ではなく「経済問題」―担当者インタビュー(2)
- みんなでつくろう!バリアフリー地図―2020年東京パラリンピックに向けて
- ソーシャルイノベーション関連記事一覧