手話への理解、様々な演技で訴える―手話パフォーマンス甲子園が鳥取で開催 (2016/9/29 日本財団)
全国高校生「パフォーマンス甲子園」
言語条例初制定の鳥取県で第3回大会開催
全国に先駆けて「手話言語条例」を制定した鳥取県に高校生が集まり、手話を使いさまざまな演技を競う「手話パフォーマンス甲子園」が9月25日、同県倉吉市にある県立倉吉未来中心・大ホールで開かれました。ろう者と聞こえる人が互いを理解し、一緒に生活することができる社会を築くという条例の理念の下に、この大会は2014(平成26)年から始まりました。今年は3回目です。全国30都道府県から初参加の30チームを含む61チーム(65校)の参加申し込みがあり、予選のビデオ審査を通過した20チームが熱戦を展開、熊本聾学校(熊本県)が優勝しました。
鳥取県は13(平成25)年10月、手話を言語と認め、手話を普及する、全国初の手話言語条例を制定しました。この理念を念頭に大会は、全国の高校生が手話を使ったさまざまなパフォーマンスを繰り広げる場をつくり発信することで、多くの人に手話を身近なものとして理解してもらうとともに、手話とパフォーマンスを通じた、交流の推進や地域の活性化に寄与することを目的にしています。主催は平井伸治・同県知事が会長を務める実行委員会、日本財団は特別協賛の立場で第1回大会から支援を続けています。
秋篠宮家の次女佳子さまは前回に続き大会に臨まれ、開会式で「毎回全国から集まった高校生が熱意を持って舞台をつくり上げていく姿に深い感銘を受けております。これから行われる手話パフォーマンスが皆様の努力の集大成となることを期待しております」などと全て手話を使ってあいさつをされました。
来賓あいさつで尾形武寿・日本財団理事長も手話を交えて「日本財団は『手話は言語』ということをたくさんの人々に理解してもらうために努力しています。皆さんが楽しく、生き生きと演技をすることが、手話の素晴らしさを日本人に発信することになります。一年間、この日を目指して頑張ってきたと思います。皆さんの演技を心より楽しみにしています。頑張ってください」と激励の言葉を送りました。
これに先立ち、平井知事が主催者を代表してあいさつし「本年4月、障害者差別解消法が施行されました。しかし法律が作られたからといって、それが目的ではありません。皆さんと一緒に行動することが大事だと思います」と述べて、障害を知り、ともに生きることの大切さを訴え、手話を広めるために若い命の演技で感動を与え、未来を変える力になってほしい、と呼び掛けました。
石野富志三郎・全日本ろうあ連盟理事長は来賓あいさつ(長谷川芳弘・副理事長が代読)で、全国初の手話言語条例の制定、ことし6月の「全国手話言語市区長会」、7月の「手話を広める知事の会」の各設立、そして「手話パフォーマンス甲子園」の開催も含め、鳥取県が率先して手話言語の普及に取り組んでいることに心から感謝する旨の言葉を述べました。その上でこれから演技をする高校生に「練習を積み重ねてきた中で、手話でコミュニケーションをしたり、アイコンタクトで音のタイミングを伝え合ったり、自然とお互いがベストな方法を見出すことができたのではないでしょうか。今日は自分たちの思いや気持ちを惜しみなくパフォーマンスで表現してください」と励ましました。
全出場チームが紹介された後、前回第2回大会の優勝校、奈良県立ろう学校が優勝旗を返還。米子高校の田中幸喜君(3年)が「リオのパラリンピックに出場した障害のある多くの選手の活躍が感動を呼んだのと同じように、本大会開催にご支援、ご協力をいただいた皆様への感謝の気持ちを込めて、若さ溢れる感動のステージを展開することを誓います」と選手宣誓をして、各チームの演技に入りました。
演技時間は1チーム8分以内。手話を使った歌唱、ダンス、演劇、ポエム、コント、落語、漫才などのパフォーマンスで、せりふと手話が正しく表現されているか、表情も使って分かりやすく表現されているか、演技者が表現したい内容が伝わり理解できるか、チームとしての一体感があるか、構成や演出がよく工夫されているか、などが審査のポイントとされました。
演技の司会は早瀬憲太郎さんと松本若菜さん。早瀬さんは、ろう者として学習塾「早瀬道場」を設立。塾長としてろう児の国語指導などを行っています。15年3月までNHKEテレ「みんなの手話」に講師として、長年にわたり出演してきました。松本さんは鳥取県米子市出身。07年「仮面ライダー電王」で女優デビュー。その後、ドラマ・映画に出演する傍ら、鳥取県の「とっとりふるさと大使」を務めるなど多分野で活躍しています。
優勝した熊本聾学校は2回目の出場。男性3人(全員2年生)と女性1人(1年生)の手話落語部4人組。昨年参加の2人に新入部員2人を加え、4月の熊本地震を体験した部員の作文をシナリオにして挑戦。「あの時僕たちに起きた真実を伝えたい」と、その強い思いに加え、全国から寄せられた、たくさんの応援メッセージや支援物資、義援金に感謝し、今も続く余震の中で、たくましく生きる自分たちの「いま」を見てほしいと「手話語り」を力強く披露しました。同校は「全日本ろうあ連盟賞」と「日本財団賞」も同時受賞しました。
審査委員長の庄崎(※)隆志さんは「20チームとも本当に素晴らしかった。昨年と比べレベルアップしています。優勝した熊本聾学校は4月の大震災のテーマを選び、手話で語ったことに感動しました。負けない勇気が具体的に表現されていました。表現技術も素晴らしい。準優勝の真和志高等学校、神秘的な踊りと手話歌でした。3位は奈良ろう学校、やはりレベルが高かったです。表現の世界には壁がないと感じました。賞を取れなかった高校も優れたところがたくさんありました。次回に向けて練習をしてください」と講評しました。
※庄崎隆志さんの崎は正しくは「大」が「立」です。
【結果は次の通り】
学校名(都道府県) | 演目 | 出場回数 | |
---|---|---|---|
優勝 | 熊本聾学校(熊本県) | 語り | 2回目 |
準優勝 | 真和志高等学校(沖縄県) | 演劇 | 3回目 |
第3位 | 奈良県立ろう学校(奈良県) | 演劇 | 3回目 |
審査員特別賞 | 三井高等学校(福岡県) | ボディパーカッション・歌唱 | 3回目 |
- 日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。
- 市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを日本財団は目指し、活動しています。
- 関連記事
- 手話言語法制定へ、田岡克介石狩市長インタビュー「手話は救済でも福祉でもない」
- トットリズムで日本一のボランティア推進県に
- 車いすでも安心、鳥取県がユニバーサルタクシーの配備を促進
- 障害者支援施設「Good Job! センター香芝」竣工式
- ソーシャルイノベーション関連記事一覧