「勇気を持って新たな一歩踏み出す時」―新たな日韓関係へ (2016/6/7 日本財団)
ソウルのフォーラムで日本財団理事長
6月東京で開催の国際シンポ前に
慰安婦問題に関する昨年12月の日韓合意を受け、両国の関係改善が求められる中、5月17日に韓国ソウルで開かれたフォーラムで日本財団の尾形武寿理事長が「新しい日韓関係の模索と韓半島の統一」の演題で講演、「冷え切った関係を打開するためにも両国および両国民が新たな一歩を踏み出す勇気を持つ時だ」などと呼び掛けました。
フォーラムの名称は「漢白統一フォーラム」。韓半島の平和的統一を目指す「東アジア総合研究所」、「漢白統一財団」、「韓国国際交流財団」が6月、日韓文化交流基金、日本財団などの後援を得て東京で開催する東アジア国際シンポジウムのプレセミナーと位置付けられ、東アジア総合研究所の姜英之理事長は「韓国で日本の右翼保守系団体の代表のように見られている日本財団が、平和に寄与する国際NGOであることを広く知ってもらうことは日韓関係を改善する上でも意義がある」と、フォーラムの趣旨を説明しています。
講演に先立ち韓国側出席者からは、「慰安婦問題合意に対し韓日両国に根強い反対があるが誠実な実行こそ必要」、「国と国の関係も個人と同じで、相互理解、相互尊重があれば前に進む」、「アジアで最も成熟した民主主義と市場経済を持つ両国が手を組み努力すればアジアの世紀が現実として迫ってくる」、「アジアの世紀が実現すれば、これに背を向け一人で生存することはできない、とのメッセージを北朝鮮に送ることになり、非核化を誘導する道にもつながる」などの意見が示されました。
これに対し尾形理事長は個人的な意見と断った上で、「日本財団初代会長・笹川良一の考えは“富国強兵”ではなく“国利民福”だった」、「中国の反日感情には、ある意味で内政が反映し民衆のデモにも官製の側面があり、その分、解決の余地がある。これに対し韓国の場合は理屈と感情が絡み複雑だ」と双方の違いを指摘しました。
慰安婦問題の日韓合意に関しては「旧日本軍による強制はなかったと思うが、女性が戦争で被害を受けたのは間違いなく、両国が合意を冷静に受け止め最終的に決着させる時期に来ている」と強調。韓半島の統一が実現した場合の日本の対応については「東ドイツと統合した際、西ドイツは経済的な危機に陥った。統一が実現すれば韓国も大きな負担を負うことになり日本もコミットする必要があると思う」などと述べ、「政治の力で日韓関係を前進させるのは難しい。民間交流こそ必要で、双方がもっと胸襟を開き、等身大の相手を理解する必要がある」と最後を締めくくりました。
これに対し漢白統一財団のイ・ザヒョン理事長ら韓国側学識者3人が、「日本財団として日韓両国の民間交流にどう取り組むのか」、「韓国には“日本は加害者、韓国は被害者”という強い思い、感情的しこりがある。この部分をうまく解消できれば両国関係は前進する」、「このまま放置すれば関係改善の壁はさらに高くなる」といった意見のほか、「日本は反省が足りない」、「日本は尊敬を集めるためにもドイツを見習うべき」といった批判も出され、日韓関係の難しさを改めてうかがわせる一幕もありました。
東アジア総合研究所によると、本番となる漢白統一フォーラムは今年で15回目。6月10日、東京・神田神保町の学士会館で開催され、日韓双方の学識者らが「日韓新時代と東アジアの未来」をテーマに講演や討論を行う予定になっています。
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