第35回政治山調査「安倍内閣支持層でも反対多数―軽減税率で消費増税は可能か」 (2016/2/5 政治山)
2014年4月に5%から8%へ引き上げられた消費税ですが、2017年4月には10%に引き上げられる予定です。政府では景気や消費者動向への配慮から軽減税率の導入を検討していますが、増税と軽減税率の導入について国民の理解は深まっているのでしょうか。政治山では、全国の18歳以上の男女を対象に1月25日から1月28日まで、インターネット意識調査「政治山リサーチ」を用いた調査を実施しました(回答数2,211)。今回はその概要をお届けします。
2017年4月の増税には過半数が反対
まずはじめに「予定通りの増税」に対しては、「賛成」5.3%と「どちらかといえば賛成」10.9%を合わせて16.2%で、「反対」35.5%と「どちらかといえば反対」18.8%を合わせた54.3%に遠く及ばなかった(グラフ1)。
5%から8%への引き上げを半年後に控えた2013年9月の政治山調査では、2014年4月に8%、2015年10月に10%へ引き上げる方針に対して「賛成」34.3%、「反対」34.8%と賛否が拮抗していたことから、当時よりも増税への抵抗感は格段に増していることが分かる。
安倍内閣支持者でも賛成3割、反対4割
上記の設問に対する回答を、安倍内閣を支持するまたは支持しない人ごとに見てみると、内閣支持層でも「賛成」11.5%、「どちらかといえば賛成」20.3%で、「反対」20.2%、「どちらかといえば反対」20.6%を下回った。支持しない層に至っては実に7割以上が否定的で、肯定的な回答は1割にも達しなかった。
支持政党によって異なる軽減税率の賛否
また、「増税時の軽減税率導入」については「賛成」18.8%と「どちらかといえば賛成」17.6%を合わせると36.4%で、「反対」14.8%と「どちらかといえば反対」8.1%を合わせた22.9%を大きく上回った(グラフ2)。
これを支持政党ごとに見てみると、公明党支持層では「反対」5.8%、「どちらかといえば反対」7.7%といずれも平均値を大きく下回った。一方、共産党支持層は「反対」29.6%、「どちらかといえば反対」11.1%、社民党支持層は「反対」20.0%、「どちらかといえば反対」26.7%と平均値を大きく上回った。
軽減税率対象品目、新聞購読費はアルコール以下
次に、軽減税率を導入する際に対象とすべき品目についてたずねたところ、「食料品(外食除く)」57.0%がもっとも多く、「水道光熱費」49.0%、「医療費」46.8%と続き、生活に欠かすことのできない商品やサービスが上位を占める結果となった(グラフ3)。
また、ニュースなどの情報取得を対象品目とすべきかで物議を醸した「新聞購読費」は7.9%(174人)で、「インターネット利用料」の16.0%、「NHK受信料」の12.4%を下回り、同率の「アルコール」(175人)よりも回答者数は少なかった。
「軽減税率の対象品目次第で増税もやむなし」で通るか
今回の調査では、前回の増税(2014年4月)前に実施した調査結果(2013年9月)との比較や増税後の検証を試みたが、全体的に5%から8%への引き上げに対する評価は厳しいものとなった。
「コンビニのイートインコーナーで弁当を食べるのは外食なのか」などと品目ごとの是非に振り回されるメディアの影響もあってか、軽減税率の対象品目次第で増税もやむなし、という回答も見受けられたが、やはり反発は根強い。
年明けから続く不安定な経済状況や政治とカネの問題による閣僚辞任によって、景気低迷への懸念や平等性への疑義、そして政治そのものに対する信頼が揺らいでいる中、予定通りとはいえ増税を決断するのは容易ではなさそうだ。
本調査レポートについて
本調査の詳細なレポートでは、性別や職業などの属性と各設問とをクロス集計した結果もご紹介しており、「政治山会員」の方は会員ページにてご購入いただけます。
<調査概要>
調査対象者 | 全国の18歳以上の男女 |
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回答者数 | 2,211人 |
調査期間 | 2016年1月25日(月)~1月28日(木) |
主な質問 |
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調査手法 | インターネット調査(政治山リサーチ) |
調査実施機関 | 株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー |
- <著者> 市ノ澤 充
- 株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー シニアマネジャー
政策シンクタンク、国会議員秘書、選挙コンサルを経て、2011年株式会社パイプドビッツ入社。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」の運営に携わるとともにネット選挙やネット投票の研究を行う。政治と有権者の距離を縮め、新しいコミュニケーションのあり方を提案するための講演活動も実施している。