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特集「ネット選挙元年2013」

ネット選挙解禁でどう変わるのか?<有権者編>2/3

現状の選挙におけるネットの活用

 現状では、ネット選挙運動が禁止されているという前提のもと、候補者のホームページやSNSアカウントは、告示日前日の23時59分59秒には更新を終えて、告示日当日からは基本的に更新をせず、そのまま放置することになります。ブログやツイッターに「明日から更新ができなくなります。最後の書き込みです」といった更新を行うのが通例となっています。

グラフ1

一般的な候補者のページアクセスの推移。有権者がどのタイミングで情報を得たいのかが分かる(一例)

 私は2006年から、クライアントのホームページについては、アクセスログ解析を行っています。そこから見えてきたのは、選挙運動期間中に候補者サイトへのアクセスが最も増えるのは告示日・公示日ということです。選挙がスタートするとテレビや新聞で大きく取り上げられますので、そこで初めて選挙が行われていることを知ったり、興味を持ったりする有権者の方が多く、ネットで検索して候補者のホームページにたどり着くという、いわゆる「続きはwebで」の流れになっています。

 選挙2日目からは、情報が一切更新されないわけですから、アクセスは当然下がります。選挙戦最終日や投開票日当日に少しアクセスが増え、当選したら跳ね上がります(当選後1日のアクセス数だけで、ホームページ開設から選挙戦最終日までのアクセス数の合計を上回ることもあります)。この傾向は、地方選挙や国政選挙を問わず、私がこれまで関わってきた選挙に共通していました。

 これは、有権者の関心が最も高まるタイミングに、候補者側からは有効なアプローチが何もできないという状態だった、ということを意味しています。今回の改正によって、選挙期間中にもホームページやSNSの更新を行えるようになる、しかも候補者や政党だけでなく有権者も、というのが今回のネット選挙運動の解禁です。

有権者の書き込み

 候補者が書き込みや更新を控えたとしても、第3者が書き込みを行うケースもあります。私が2012年に関わったある地方選挙においては、支持者がフェイスブック上で候補者と一緒に写った写真を公開し、選挙運動と解釈されるような書き込みがあり、警察から注意を受けました。選挙対策本部(選対)としては、事前に選挙期間中は候補者の写真や名前の入った書き込み、選挙運動にあたる内容をネットに書き込まないよう注意していましたが、もともと上意下達で命令が行き渡るような組織ではありませんし、ネット上の情報拡散のスピードの速さにはとても対応できませんでした。

 県警の担当者の方は、違反になる可能性がある書き込みが掲載されたフェイスブックページをすべて印刷して、付せんとマーカーを引いた、厚さ10cmほどにもなる資料の束を持って説明に来られ、取り締まる方も大変だと苦笑いしました。こんな馬鹿げた状態は早く終わりにしたいものです。

ネット選挙運動の解禁でどう変わる?

 では、ネット選挙運動が解禁されると何が変わるのでしょうか。候補者はホームページもSNSの更新もできるわけですから「立候補の届出なう!」とか「選挙ポスターの掲示板のくじ引きで1番ゲット!」といった臨場感のある情報発信もできますし、「今日は急きょ◯◯駅東口に△△さんが弁士として駆けつけてくれます!」といった選挙につきものの予定変更もすぐにお知らせすることができます。興味や関心を持ってサイトやSNSアカウントにアクセスしてくれた有権者に対して、タイムリーな情報発信と投票依頼が行えますし、SNSのフォロワーがそれを拡散してくれるのは、大きな利点と言えるでしょう。

 有権者にも大きなメリットがあります。サラリーマンであれば、朝の出勤時に駅頭で演説やビラ配りをしている候補者を見かける程度で、選挙との接点があまりありません。拡声器が使えるのは8時から20時までですから、仕事を終えて帰宅するころには終わっていることも多いでしょう。個人演説会に参加したり、選挙事務所に行ったりするというのも、抵抗を感じる人が多いのではないでしょうか。

 ネット選挙運動が解禁されれば、各候補者が選挙期間中も積極的な情報発信を行いますので、これまでよりも手軽に候補者に関する多くの情報を入手することができますし、候補者の主張や人となりの違いをネットからの情報によって比較することもできるようになります。

 個人的には、ネット選挙運動の解禁によって、これまで選挙や政治と縁がなかった人たちが関心を持つきっかけになれば、と期待しています。15年前から「学生向け議員インターンシップ」を行っているNPO法人『ドットジェイピー』が、インターンに参加した学生を対象にアンケート調査を行ったところ、インターンに参加する前は「必ず投票へ行く」と答えたのは全体の41%だったのに対し、インターンに参加した後は83%に増加したそうです。インターンを通して、政治家や政治の現場を体験することによって関心が高まった結果、投票への意識も変わっていったのではないでしょうか。

 選挙はよく「祭り」に例えられます。限定された期間に、多くの人が集まって1つの目的に向かって協力していくキャンペーンですから、選挙に携わっている人たちの間には、「独特の熱気」が生まれます。ネット選挙運動の解禁によって選挙の情報公開が進み、選挙の臨場感をネットを介して1人でも多くの人に味わってもらうことができるのではないか、そして選挙が少し身近なものへと変わっていくのではないかと期待しています。

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