[仙台市]人生100年時代に対応!?学都仙台コンソーシアムの取り組み (2019/6/3 マイ広報紙)
この記事は「仙台市政だより 2019年6月号『学都仙台コンソーシアム サテライトキャンパス公開講座』」を紹介し、コメントしたものです。
人生100年時代に向けて、どう資産寿命を延ばすか―。先日、金融庁がまとめた指針案が話題になっています。これは年金といった「公助」には限界があるとし、国民の「自助」を呼びかける内容です。思い返せば、平成28年の年金改革法の成立時には、「100年先までの見通しを検証しており、…若い世代が将来受け取る年金は、将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込み」と言われていたものです。今でもこの文言は、厚生労働省のサイトに残っていて、異彩(?)を放っています。
しかし人生100年時代の問題は、金銭面だけではないのかもしれません。収入に反比例して増えていく時間を、いかに豊かに過ごすかという問題も、案外重要かもしれません。実はこのことは金銭にも微妙にリンクしています。消費社会に慣れ親しんでいると「楽しむ」ことの対価として、「金銭」が必要であると思い込みがちです。この「楽しむ」=「お金がかかる」という呪縛から解き放たれたときこそ、人は真に豊かな時間が過ごせるような気がするのです。
こんな長い前振りをしたのは、宮城県仙台市の広報紙『仙台市政だより 2019年6月号』に、「学都仙台コンソーシアム サテライトキャンパス公開講座」の記事を見つけたからです。サテライトキャンパスは、仙台にあるいくつかの大学と仙台市との連携で開設されたもので、大学間における単位互換制度の実施や、市民開放もおこなう公開講座などを開催するというもの。記事には市民が受講できる参加大学の先生などによる講座が紹介されていました。
こうした講座の参加費は無料で、会場は仙台市の中心部にある市民活動サポートセンターです。学びたい人が学べる環境―。社会の豊かさとは、こういうことなのだと思います。
講座のなかで、私が気になったのは宮城教育大学の島森教授による「漢詩ゆったり鑑賞講座」。若いうちは、受験やキャリア形成の名のもと、将来「お金」につながりそうなものを学びがちです。漢詩をゆったり学ぶ…といった金銭的な恩賞のない学びこそ、老後ならではの贅沢な楽しみ。こうした講座を手がかりに図書館の本と格闘するといった、大いなる学びの旅路を始められると思うと、老後も悪くないと思えてきます。しかも、この学びにはそんなに金銭は必要ありません。
「人間は死に向かって成長する」とは精神分析学者のエリクソンの言葉です。金銭とは切り離されたなかで、自分自身のうちに豊かな精神世界を築き上げていくこと。人生100年時代に忘れてはならないのは、そんな老後のあり方かもしれません。
- [筆者]「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事 あんびるえつこ
- [参考]仙台市政だより 2019年6月号