[埼玉・志木市]多世代の集う「ふれあい館 もくせい」は、「たあたん」の家? (2016/10/10 あんびるえつこ)
この記事は「広報しき 平成28年10月号『じぃじばぁばだーいすき 多世代の集う場所ー ふれあい館「もくせい」 ー』」を紹介し、コメントしたものです。
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今週、気になったのは、埼玉県志木市の『広報しき 平成28年10月号』に掲載されていた巻頭特集の記事です。赤ちゃんからおじいちゃん、おばあちゃんまで、多世代が集い交流できる場所、「ふれあい館 もくせい」の取り組みについて紹介されていました。
「ふれあい館 もくせい」には、子どもから高齢者まで、自由に利用できる場「多世代交流カフェ」を設置。ここでは日替わりで体操講座などが行われているほか、お昼には学校給食と同様のランチを食べることもできるなど、高齢者が足を運びやすい工夫がされています。同カフェには、おもちゃがあるので、放課後になると小学生たちも遊びに来るのだそう。なるほど、ただ場所を提供するだけでなく、そこにいろいろな仕掛けをすることで、人が集い、交流しやすくなる工夫がされているというわけです。
「ふれあい館 もくせい」には、ほかにもNPOがおこなう多世代交流の場「さんまあるカフェ」があるほか、「放課後子ども教室」も一つ屋根の下に設置されています。
私が子どもだったころ。小学校から帰ると、母が外出中で、家の鍵が開かないことがたびたびありました。そんな時、私は近所の「たあたん」の家に一目散に走っていきました。「たあたん」は「おばあちゃん」が訛ったものですが、私は祖父母を早く亡くしていたためそう呼んでいただけで、親類関係はありません。しかし私が訪ねていくと喜んでお茶とお菓子を出してくれて、その日学校であったことを楽しそうに聞いてくれたのです。最初は家の前で困っている私を「たあたん」が招いてくれたことから始まったのですが、それ以来、私にとって母のいない日は寂しいどころかラッキーな日となりました。母は母で、「たあたん」の家に行っていると安心だったようで、恐縮しながらも外出先からまっすぐに「たあたん」の家に駆けつけていました。
しかし、そんな「たあたん」との関係は、私が小学2年の夏休みに引っ越したことで終わってしまいました。でも今でも、あの「たあたん」が黙って笑顔でうなずく姿を思い出すことがあります。そのたびにポッと心が温かくなります。私が今、街で小さい子を見かけると、放っておけなくなってしまうのは、自分が「たあたん」のような存在になりたいという思いからなのかもしれません。
『広報しき 平成28年10月号』には、「異なる世代との交流は、子どもにとって、その関わりの中から、多くの知識や人間関係の築き方を学ぶ機会となります。一方、おじいちゃん、おばあちゃんの世代にとっては、子どもたちとのふれあいが生きがいに繋がっています」と書かれていました。「ふれあい館 もくせい」は、現代の「たあたん」の家なのかもしれません。私にとって、そこは安心とぬくもりの場所でした。「ふれあい館 もくせい」の取り組みが各地に情報として流れ、各地に「たあたん」の家ができることを願わずにいられません。私も「たあたん」が与えてくれたぬくもりのバトンタッチを、地域でしていきたいと強く思っています。
- [筆者]「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事 あんびるえつこ
- [参考]広報しき 平成28年10月号