職場にも着々と浸透するキャッシュレス化で何が変わるか (2019/2/26 瓦版)
キャッシュレス後進国日本が会社員のお金に着目
キャッシュレス化職場でのキャッシュの流れが変わる――。○○payが大増殖中の日本の消費市場。その流れは職場にも拡がり、新たな取り組みやサービスが続々と登場している。給与を筆頭に、稼いだお金を物理的に持ち歩くことがマイノリティになる。そんな日が来るのもそう遠くないかもしれない…。
キャッシュレス化で世界に後れを取る日本は、2025年に40%という数値目標を掲げ、その達成へ向け、さまざまな施策を打ち始めている。その目玉と一つ言えるのが、デジタルマネーによる賃金支払いだ。
キャッシュレス化加速のカギ握る職場の最新動向
現状は、現金や口座振り込みのみの制約があるが、規制緩和によってデジタルマネーでの賃金支払いを解禁する方針だ。消費者の大半を占める会社員の“資金の入口”をデジタルマネーにすれば、急拡大中の対応店舗とシンクロし、その利便性は格段に向上。キャッシュレス化は一気に加速する。
こうした動きに先立ち、職場でのキャッシュレス化もうごめき始めている。社員数1000人以上規模が主流だが、社食での支払いに電子マネーを採用する企業が増加している。IDカードと紐づけることで、明細管理や給与天引きを可能にするなど利便性を高め、快適な職場づくりの一環として社員満足度の向上にも貢献している。
ベンチャーや小規模でも利用しやすい社内向けキャッシュレス決済サービスも登場している。オフィスで新鮮な野菜やフルーツ、惣菜などを冷蔵庫の設置で提供するオフィス向けの置き野菜サービス「OFFICE DE YASAI」を展開するKOMPEITOが2月下旬にリリースした「YASAI PAY(野菜ペイ)」だ。
同システムは、昨今急拡大中のバーコード読み取り式で、無料の専用アプリをインストールすれば、すぐに使える。職場で手軽に飲食物を購入できるメリットは大きいが、小銭の支払いに不便を感じる声も少なくない。同サービスはそうした課題解決につながるもので、同社も「これまでの小銭支払いをより簡単に、最短2タップで決済が完了するので、ユーザーの利便性を高めるものになる」と導入効果を説明する。
新鮮なサラダやフルーツ、ヘルシー総菜を提供する福利厚生サービスとして拡大を続ける「OFFICE DE YASAI」はすでに累計で導入数1000拠点を突破。今回の新機能搭載で、職場でのキャッシュレス化の促進に大いに貢献しそうだ。
日本初の給与前払いサービスを展開する「キュリカ」の動向も注目だ。現在は給料日前に給与をATMから引き出し可能だが、電子マネー対応となれば、よりスピーディーで簡便な活用につながり、給与受け取りの利便性が一層向上。月給の在り方を、また一歩変革することになる。
「政府による規制緩和の流れもあり、当社でもキャッシュレスの対応は検討しております。ただし、QR決済はいま、各社が加盟店開拓にしのぎを削っており、対応については各社とのアライアンスで給与利用先を拡大していくイメージで考えています」と同社取締役の尾崎氏は説明。規制緩和をにらみながら、独自スタイルで“キャッシュレス化”への対応を目指す。
急速に拡がるキャッシュレス化は利便性が高いことがメリットだが、不正引き出しや決済業者の破綻時の対応などの課題もある。普及にはそうした部分をクリアすることが求められるが、一方で割引や独自サービスの提供、マーケティング活用など、さまざまな展開が可能で、余りある恩恵がある。
最大の“金脈”といえる職場での“キャッシュレス化”が常識になれば、日本も一気に電子マネー大国の仲間入りへ近づくことになるだけに、その成り行きは大いに注目される。
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