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ペイペイで不正請求被害、関係者の法律関係について (2019/1/24 企業法務ナビ

関連ワード : IT 法律 金融経済 

1.はじめに

 スマートフォンを使った決済サービス「ペイペイ」で、クレジットカードが不正に利用される事件が世間を騒がせました。ペイペイは昨年の12月4日~13日まで総額100億円を還元するキャンペーンを実施しており、その際クレジットカード情報が不正に取得され、利用されたとみられています。

 今回は不正請求がなされた場合の法律関係を中心に検討したいと思います。

バーコード決済

2.不正請求について

 個人のクレジットカードを盗み利用するほか、スキミング(スキャナーでカードの磁気データを読み取り、偽造カードにデータをコピーする手法)、フィッシング(金融機関を装ったポータルサイトをメールで送信し偽サイトに誘導する。その後カード情報を不正に入手する手法)といった方法で不正請求がなされています。今回の事件では、ダークウェブという闇サイト上に流出したカード情報が不正に使われた可能性があるとのことです。

 このように、不正請求の手口は多種多様であり、専ら被害額も多額であることから大きな社会問題とされています。

3.不正請求がなされた場合の法律関係

 クレジットカードは名義人のみが使用できますので、法律上の買主は不正にカードを使用された名義人(被害者)となります。そうすると、クレジットカードを不正に利用した者(加害者)は被害者のクレジットカードを使用して、「ペイペイ・被害者間の売買契約」を締結したことになります。少しややこしいですが、加害者が被害者の代わりに商品を買ったと考えます(民法上「代理」といいます)。しかしながら、被害者には商品を買う意思がないため代理による売買契約は原則として無効となります(「無権代理」といいます。民法113条)。

 売買が無効であれば、当然のことながら被害者は代金を支払う必要がありません。ただし、民法上例外的に被害者が支払い義務を負う可能性があります。詳しいことは省略しますが、加害者を真の代理人と誤解してもやむをえないケースでは本人(被害者)に責任が生じます(民法上「表見代理」といいます)。

4.コメント

 上述のとおり、ペイペイと被害者の売買は原則として無効となります。被害者は代金の支払請求に応じる必要はありませんし、決済が既に完了している場合には、ペイペイは代金を返還する必要があります(民法上「不当利得返還」といいます)。

 なお、ペイペイは昨年の12月27日、クレジットカードの不正利用で身に覚えのない請求があった場合、全額を補償すると発表しました。クレジットカード会社が介在していることも相まって、厳密に法律関係をひも解くと複雑な場面が生じえます(被害者とクレジットカード会社間の約款内容も異なります)。そういった複雑な法律関係を抜きにして損害を補償する趣旨であると考えます。

 本件のような不正利用を防ぐためにも、ECサイトを運営する会社は本人確認をより厳格に行うシステムを構築する必要があるでしょう。例えば、暗証番号とともに特定の質疑応答内容を事前に登録しておき、それを本人確認の際に用いるといった方法が考えられます。

提供:企業法務ナビ

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