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就活ルール廃止で中小ベンチャー企業が意識すべきこと (2018/11/15 瓦版

関連ワード : 労働・雇用 金融経済 

ベンチャーCHROの戦略的JINJI論

ますます進む就活市場の多様化

経団連の中西宏明会長が就活ルール廃止の意向を表明(2018年9月3日)し混乱を招く中、政府主導で「現行ルールの維持」の方針が先日発表されました。今後どのような変化が就職活動の現場で起こるのかはまだ不透明ですが、大企業の動きに少なからず変化があることは予想されます。

闘牛

どんな変化が起こるのか…。そこに戦々恐々としていても何も始まりません。我々のような中小ベンチャー企業は、ルール撤廃の良し悪しを議論している場合ではなく、与えられたルールの中で戦うしかないわけですから。

ちなみに2019卒の新卒採用は300人未満の企業の倍率が9倍超だそうです。この厳しい環境の中でどのような対策を打つべきなのかを考えていきたいと思います。

まず最初の大きなポイントは、学生の価値観の変化です。昨今、新卒採用の現場で感じるのは、「私は大企業志望」、「僕はベンチャー企業志望」といったようにその規模で企業選びをするという感覚が薄れてきているということです。背景には、就職活動の情報を得る手段が多様化し、それによって学生の就活に関する価値観も様々になったことがあるでしょう。

仮に就活ルールの廃止が進むと、その情報を得る期間も長期化されることになります。つまり、学生個々が今まで以上に自己判断でアクションを起こしていく傾向が強まるということです。私個人はこの流れは良いことだと思います。そもそも実力主義が進む社会で、自身の判断が将来を決めるにもかかわらず、就活ルールという決められた期間があること自体が不自然だと考えるからです。

勝ち抜くための採用ブランディング

もっとも、大企業はサマーインターンなどの実施による事実上の囲い込みで、ルールは形骸化されているようなものですが。だからこそ、今後一層多様化が予想される就活シーンにおいて中小ベンチャー企業にとって大切になってくるのは、「採用ブランディング」になると私は考えています。

ここで言う採用ブランディングで大切になるのは、次の3つ。『定期的な情報発信』『ユニークな採用活動』『それらを浸透させる口コミ力』、です。

確実にいえることは、今までのように新卒採用媒体解禁のタイミングで媒体掲載し、説明会への参加者を待つだけというやり方では勝てなくなってくるということです。その上でまず、情報発信をどう工夫すればいいのか。仮に学生が4年間企業研究をする時間があるとした場合、同様に企業にとっても4年間じっくり学生に対して情報発信をしていけるということになります。これはその魅力をすぐには理解してもらいづらい中小ベンチャー企業にとっては、大きなアドバンテージになるハズです。

IDEA

もちろん、情報は学生にとって魅力あるものでなければ逆効果です。SNSやweb媒体など様々な方法で発信しつつ、発信内容も媒体特性に合せるなどの工夫が必要です。そもそも、発信内容は企業の魅力に密接に連動するものですから、採用から逆算し、自社の魅力を戦略的に見直し、場合によっては刷新を検討していいかもしれません。

面接手法やインターンコンテンツはもちろん、リアルな仕事現場や企業活動の発信など、それらが魅力的でユニークなほど口コミを誘発します。その結果、学生間の情報交換の中でどんどん拡散されていきます。

実際、弊社のインターンに参加し入社に至った学生の中には、弊社の口コミを聞き、参加した学生もいます。このように新卒採用は今後、期間限定のプロジェクトといった考えではなく、中長期的な採用ブランディングの戦略が不可欠となり、それが新卒の採用シーンでも大きな影響を及ぼすことになると考えます。

すでに新卒の通年採用を行っている企業も増えてきました。これからさらに多様化が進む中で、学生にとっても企業にとっても新卒採用は複雑化し、その難しさは増していくことになるでしょう。だからこそ、とりわけ中小ベンチャー企業は戦える体制をいままで以上に整備し、より戦略的に激動の時代を乗り越えていく必要があると考えています。(談)

※CHRO(Chief Human Resource Officer)の略

     ◇

花咲圭祐(はなさき・けいすけ)<プロフィール>花咲圭祐(はなさき・けいすけ)
1985年生まれ。大阪府出身。2011年、株式会社スタイル・エッジ(代表:金弘厚雄)入社。各種士業クライアントのWebマーケティング支援、コンサルティングなどに従事。その後、グループ会社である株式会社スタイル・エッジREALTYの設立から名古屋・大阪・福岡の支店拡大を経験。現在はスタイル・エッジの執行役員として人事部の統括とスタイル・エッジREALTYの取締役を兼務している。

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