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【四條畷市長 東修平 #3】企業の競争環境が地域経済を強くする (2018/9/11 HOLG.jp

(第2話から続く)

感度の高い部長と課長を抑える

加藤:働き方改革を進める際に、幹部に動いてもらうのは難しくなかったですか?

東市長:やはり人生経験が違いますから難しさはあります。でも、反応してくれている幹部から順に声をかけていくのが大事だと思います。あと、課長から謀反を起こされると部長は仕事ができなくなるので、課長を握ることが大事です。その際に何より気を付けているのが、その分野について事前に勉強しておくこと。

東修平 四條畷市長

 例えば、高齢福祉の分野で介護保険事業についてメスを入れなあかんとなれば、誰よりも介護保険に詳しくならないと課長と議論できない。理念だけで話しても「実務もわかってないのに、なに偉そうなこと言いよんねん」となる。そうなったら終わりですよね。

 あとエリートである財政課も難しいです。財政課だけが首長の暴走を唯一止められるというプライドもある。地方財政という複雑で難しいものを把握し、新しい制度を勉強してしっかりと議論できる状態にすることが、職員に腹落ちしてもらうために重要だと思っているんです。

 人によっては「リーダーは方向性を示して任せたらええねん」って言いますが、改革のまさにその瞬間においては、それでは無理だと思います。

2年目は全庁へ展開

加藤:働き方改革を進める中で課題はありますか?

東市長:リーダー研修を受けた人たちとそうでない人には意識の差がありますし、モデル化でやった課とやってない課にも差があります。ですので、2年目の今年はいままでやったことを横展開して全庁に広げていきます。

 まず、昨年度に研修を受けた人たちが、今度は教える側となり周囲へ啓蒙をしてもらいます。それとは別に全庁で働き方改革のプロジェクトチームメンバーを公募し、時短、任期付などを問わず、手を上げた人は誰でも全員参加ができる組織体を作っています。そこで、評価や育成方針などの制度から広く議論して、自分たちの職場がどうありたいのかということを、みんなで考えてみんなで決めてもらう予定です。

 目標としては、年度末くらいに大阪中の自治体の人事課などにお声がけし、四條畷の取り組みと変化について発表がしたいです。究極的なゴールは四條畷でやったことが他市に広がって、日本全体が良くなっていくことですから。

文化を根付かせようとする文化が生まれればいい

加藤:どのくらいの期間が経てば、働き方改革の文化が根付きそうですか?

東市長:それには時間がかかると思っています。ただ、『文化を根付かせようとする文化』が生まれ、その推進力さえつけばいいと思っています。少なくとも市長任期4年の中で職員たちが自走してくれるようになれば、感度の高い職員がその先の成果を作ってくれると思います。

揺らぎが起きにくい目標を掲げる

加藤:市民に向き合うというのは、最終的には住民の満足度みたいなものが重要ですよね。そこは数値化をしないのでしょうか?

東市長:いわゆるアンケートで取れる住民満足度で、「いいまちだと思いますか?」「自分のまちを他人にも勧めたいと思いますか?」とかって、良いとは思うんです。そういうのも取りますけど、そうした主観的な質問は、質問の仕方や誰が聞くかで答えが変わったりするじゃないですか。

 なので、我々が追うべきものは、「要介護認定率が前年度より下がった」とか、揺らぎが起きにくいものを目標として置ける組織にしていきたいです。

長く住んでいる人こそがメリットを享受できるまちにしたい

加藤:あくまでもいまの地域や住民に目を向けるということですか?

東市長:もちろん、四條畷市のベッドタウンとしての持続可能性を追い求めると、自然減に対応するくらいの若い世代には一定程度当然入ってきてほしい。だから、シティプロモーションなどを考えると思うんですけど、うちとしてはいま住んでない人ばかりに宣伝をするのは違う、と。

 長く住んでいる人こそがメリットを享受でき、その人たちが「四條畷エエで、住んでみ」と話をしてくれるのが理想です。まちに住んでいる人がどれだけまちの良さを感じているかが重要で、四條畷はそれを一貫してやっていこうとしています。

短期的な施策と長期的な施策を並行して進める

東市長:いわゆる市民満足度みたいなものを高めるのは当然時間がかかりますよね。だから、いまはまず現実に起きている不満を拾い集める。昨年12月に、市内の各地域をまわって対話会を行った際は、事前に地域の課題について要望を出してもらって意見交換をしました。そして今年も、春と秋の2回ずつ、だいたい計50回ほど各地域で対話会を行います。その際、以前にいただいた地域の声と、それに対する市の対応を一覧化し、「実行済み」「着手済み」「2、3年以内に実行」「長期的にやる」「地域にお願いしたい」「やらない」など、全部をオープンにしていきます。

 市長である僕が対話会を行っているので、質疑応答でいわゆる組織の縦割りは存在せず、答えはイエスかノーとはっきり出せます。そういう短期的な改善をずっとやりながら、並行して働き方改革で時間を生み出して、長期的に満足度を高めていく。最終的にはこれらのプロセスが、現場レベルでできるようになるというのがゴールです。僕が外に出てやり続けるのは、組織運営上、本来は良くない。誰が市長でも持続可能な仕組みを作らないと意味がありません。

指標を職員が決めるから推進力が生まれる

加藤:先ほど、指標の話で「要介護認定率」が例にあがりました。このような指標はいつ頃、決定するのでしょうか?

東市長:これは難しい部分があります。これを言うといやな感じになりますけど、僕の中には具体的に計るべき指標が概ねある。でも、僕が一人突き進んで指標を置いちゃダメなんです。部課長たちが「これや!」と自発的に決めてやらないと推進力は出ません。

 もちろん、部長に対する働きかけは着任後から行っています。従来からある部長マニフェストの見える化を進め、今年度からは数値目標を公表しています。そして、四條畷市の部長マニフェストで特徴的なものは、予算執行率の記載があることです。とにかく行政は予算執行率が高い方が優秀となりがちですが、工夫によっていかに低い予算執行率で目標が達成できたかがわかるようになっています。本来、少ない予算で最大の成果を目指すべきですよね。

 だから、予算を使い切らなかったことが市民からも評価されるように変えていきたいです。その時に、指標や目標がなかったら予算を全額使わないといけなくなる。だから、施策の具体的な目標を立てることが重要です。

競争環境を整え企業を伸ばすことが地域経済を強くする

加藤:自治体が予算を減らしたときに、地域経済を回してないという批判めいたものはないのでしょうか?

東市長:批判に対しては、本当にそうなのかなと思うんですね。もちろん、例えば四條畷市は道路整備に課題があるので、そうした必要な部分にはきっちりと投資をします。ただ実際は、皆さんが思っている以上に短期的な視点でお金が使われていたりするのも事実です。地域商業振興という名のもとに数百万円を団体に補助していたものの、それらがバーゲン時のガラガラくじの景品購入に使われているという状況もありました。そういうのは、すぐに終わらせてもらいました。

 それと、入札でも地域業者育成と言って地域を優遇しますが、優遇し過ぎるのは違うと思います。人口減少社会において、発注数は昔と違って減っていく一方です。そうしたなか、真に厳しく競争するから企業が強くなって、他の地域でも仕事が取れるようになる。それによって、その企業の売上が長期的に伸びるわけじゃないですか。

加藤:それを公言できる市長はあまりいませんよね(笑)。補助金が企業の自立的な成長を阻害するとは、よく言われます。

東市長:むしろ、競争環境を整えて企業の力を伸ばすことが地域経済を強くすることだと思います。その一方で、産業振興に関する予算はかなり増やしているんですよ。それは補助金とかではなく、考える場、いわゆるプラットフォームを提供するような形で予算を充てています。

「補助金を切ってくれてよかった」

加藤:地域団体からの抵抗はないのでしょうか?

東市長:嘘みたいな話ですが、補助金をもらったものの使い方に困っているというところもありました。着任直後、商工会に対する複数年度にわたる補助金を、成果があまり見えなかったために途中でしたがスパンと切りました。すると、実は商工会としても持て余していて、「切ってくれてよかった」と言われました。

 心ある人たちはもらった後に悩んでいるんです。それなら、行政の責任でカットしていって、例えば大学との連携や、新たな技術などを学べる場とかにお金を使いたいですね。

(第4話へ続く)

※本インタビューは全5話です。

提供:HOLG.jp

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