リクナビがジャパンビバレッジ求人掲載停止、求人情報適正化ガイドラインについて  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   リクナビがジャパンビバレッジ求人掲載停止、求人情報適正化ガイドラインについて

リクナビがジャパンビバレッジ求人掲載停止、求人情報適正化ガイドラインについて (2018/10/16 企業法務ナビ

関連ワード : 労働・雇用 法律 

はじめに

 大手求人サイト「リクナビ」がジャパンビバレッジ東京の求人掲載を今月10日から停止していたことがわかりました。同社労働組合などからの要請に基づくものとされております。今回は厚生労働省が策定した求人情報提供ガイドラインについて見ていきます。

就活

事案の概要

 報道などによりますと、サントリーグループのジャパンビバレッジ東京では昨年12月、「事業場外みなし労働時間制」の運用が不適切であるとして足立労基署から是正勧告を受けておりました。今年4月、7月には残業代不払いにより是正勧告を受け、また有給取得に関して「有給チャンス」と称する不適切なメールが配布されるなどにより同社労組はストライキに踏み切っていたとされます。これにともない同労組およびブラック企業ユニオンは民間大手求人サイトの「リクナビ」「マイナビ」「エン・ジャパン」に対し同社の求人掲載の停止を求めていたとのことです。

求人情報提供ガイドラインとは

 WEBサイトや折込求人誌、新聞などのメディアによる求人情報は多くの求職者が利用してきました。しかし昨今掲載内容と実際の労働条件の不一致や悪質な場合はいわゆる「求人詐欺」といった事例も多く見られ改善が急務となっておりました。働き方改革が推進される中、厚労省はこれら求人メディアにおける掲載適正化を目的として、全国求人情報協会の掲載基準ガイドラインをもとに昨年11月から「求人情報提供ガイドライン」を発表しております。以下その概要を具体的に見ていきます。

求人情報提供ガイドラインの概要

1.適用対象事業者
 本ガイドラインの適用対象となる事業者はWEBサイト、新聞、雑誌といった求人メディア、それらに類するものがまず対象となります。そして職業紹介事業者や労働者派遣業者のうち、大学、自治体、NPOなど直接応募が可能なものも対象となります。登録しないと応募できない場合は別途職安法や労働者派遣法の適用対象となります。

2.倫理要項
 求人情報提供事業者は読者・ユーザーの職業選択に適切に応えるよう配慮し、求人情報は法令や社会倫理に反せず、真実なもでなくてはならないとされております。またユーザーに不利益を与えるものであってはならず、誤解を生じさせないよう平易で的確な表現を心がけることが求められます。

3.掲載明示に務める事項
 求人掲載の際に明示すべき事項として(1)休憩、時間外勤務状況、裁量労働制の場合はその旨、(2)休日、(3)社会保障、(4)賞与、(5)通勤手当、(6)定年制、(7)従業員数、(8)資本金、(9)採用実績、(10)職業訓練等が挙げられております。

4.掲載を控えるべき事項
 そして掲載すべきでない事項として(1)募集内容が法令に抵触するもの、(2)人権侵害、就職差別、雇用機会均等を損なうもの、(3)悪質商法、風紀上・倫理上好ましくないもの、(4)公衆衛生上有害な業務を内容とするもの、(5)応募者を集めるため、提供する意思のない労働条件の表示や実際の労働条件と相違する内容、実態や内容が判然としないもの、不当に経済的負担を要求するものなどユーザーに不利益を与えるもの、(6)ストライキ、ロックアウトが行われている、またはそれらが多い企業の募集などが挙げられております。

5.掲載前の確認事項
 掲載メディアは企業等からの依頼を受けて掲載するに際し、募集条件については企業等に責任があることを説明した上で、過去に求人掲載について苦情が発生したことがなかったかを確認し、適宜事業場を訪問して調査を行い、ユーザーや消費者とトラブルが多発している企業の場合は厳正な実態調査を行うとしています。

コメント

 本件でジャパンビバレッジの労組は争議行為の一種である順法闘争を継続しているとされます。またゴールデンウイークやお盆などの期間ではストライキを敢行しているとされ、これら労働争議行為の効果を維持するために各種求人メディアに同社の求人掲載停止を求めております。上記ガイドラインでは掲載を控えるべき場合として求人企業にストライキ等が発生している場合が挙がっております。リクナビはこれに基づいて掲載を停止したものと考えられます。

 以上のように近年厚労省は不適切な求人の是正に力を入れており、ハローワークだけでなく民間の求人サイトでも苦情や紛争が発生している企業の掲載は見送られるようになっております。労働争議等が発生した場合はまず真摯に対応し、適切に紛争の収束を図ることが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

関連記事
自販機大手に労基署が指導、事業場外みなし労働時間制について
ジャパンビバレッジで「有給取得クイズ」、時季変更権とは
「はれのひ」賃金不払いで不起訴、最低賃金法の規制について
長時間労働との関連は?定額残業代制度とは
ダマされた…。転職で「期待外れ」にならないための情報収集の3つのツボ
関連ワード : 労働・雇用 法律