弁護団が「ケフィア」を告訴へ、出資法の預り金規制について (2018/9/5 企業法務ナビ)
はじめに
加工食品などに関し多額の出資金を集めていた通販会社「ケフィア事業振興会」(千代田区)が3日破産手続きに入っていたことがわかりました。破綻後も出資の勧誘を続けていたとされ、契約者側の弁護団は刑事告訴の構えを見せています。今回は出資法が規制する預り金について見ていきます。
事案の概要
日経新聞電子版によりますと、ヨーグルトの種菌の通信販売等を行っていたケフィア社は自社サイトで扱う干し柿やヨーグルトなどへの出資を募る「オーナー制度」を開始し、昨年7月の時点ではオーナー数が4万5千人に上っていたとされます。通販会員にDMを送付して勧誘し、半年後には買い戻され、10%程度の利回りがあるなどとしてオーナーを集めていたとのことです。
同社は昨年5月頃から利息の支払いや払い戻しが滞り、今月3日に破産手続開始決定を受けた旨の文書が張り出されました。負債総額は1000億円を超え、債権者は3万人に上るとされます。被害対策弁護団は出資法違反の疑いで刑事告訴を検討しているとされます。
出資法の規制
出資法によりますと、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定がある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」としています(2条1項)。そして「預り金」とは、「不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れであつて」「預金、貯金又は定期積金の受け入れ」およびそれと同様の経済的性質を有するもので、「社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わ」ず該当するとされます(同2項1号2号)。その趣旨は一般大衆から多額の資金を集め、ひとたび業務が破綻すれば多くの出資者に不測の損害を及ぼし、社会の信用制度と経済秩序を乱す恐れのある「預り金」を規制することにあります。
預り金の要件
金融庁のガイドラインによりますと、「預り金」とは「預金等と同様の経済的性質を有する」ものであり以下の4つの要件全てに該当するものとされております。
(1)不特定かつ多数の者が相手であること。
(2)金銭の受け入れであること。
(3)元本の返還が約されていること。
(4)主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること。
つまり多数の者から元本を保証した上で「金銭」を集める、いわゆる銀行の預金のような性質を持つ行為が規制の対象となるということです。たとえば金銭を集めても、金銭以外のもので返還する場合は預金のような性質はなく該当しません。また本来の「社債」は該当しませんが、社債という名目でも実質、預金のような性質であれば該当することになります。
違反した場合
出資法2条に違反し「預り金」を行った場合は3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(8条3項1号2号)。そして別途詐欺罪などの刑法犯が成立する場合は本条の適用はなく、刑法だけが適用されます(同4項)。たとえば当初から償還するつもりがなく、資金だけを集めた場合は預り金ではなく詐欺罪が成立することになります。
コメント
本件でケフィアは会員に勧誘する際、支払った額は買い戻しという形で半年後に全額払い戻され、10%前後の利回りあるとして出資を募っていたとされます。これは不特定多数の者から元本保障した上で資金を集めていることから「預金」の性質のある行為と言え「預り金」に該当する可能性があると考えられます。以上のように出資法が規制する預り金は借り入れや社債など、適法な金銭消費貸借と区別がつきにくい点があります。
また顧客から預託金などを預かることも多々あると思われます。違法な預り金となる一番の基準は元本保証と不特定多数から募るという点にあると言えます。つまり銀行の預金と同様の性質があるかで判断するのが近道ではないかと考えられます。会員や顧客から資金を募る際には以上の点に留意して出資法に違反していないかを見直すことが重要と言えるでしょう。
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