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増加する出戻り人材の背景に何があるのか (2018/5/9 瓦版

関連ワード : 労働・雇用 調査 

多様な働き方が救う人手不足という難局 Vol.3

社風を知る人材という元社員の目に見えない価値【前編】

いい人材がなかなか採れない…。人口減少で、あちこちでこんな声が聞こえてくる。どんな人材でもよければ、なんとか頭数を合わすことは可能かもしれない。だが、欲しいのは生産性が高く、付加価値を生み出してくれる優秀人材。高望みと認識はしていても、そうでなければ採用する価値や意義を感じづらい。

企業にとって、もはや人材不足は会社の存続を左右しかねない重要課題となりつつある。優秀な人材がいれば奪い取りたいほどの衝動さえ起こりうる状態だ。それは極端にしても、せめて“外れ”を引くリスクは最小化したい…。そうした時、選択肢として浮上してくるのが出戻り人材だ。

再雇用の実績

エン・ジャパン調べ

エン・ジャパンが、同社が運営する人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」上で「企業の出戻り」についてアンケート調査(661社)を行っている。それによると、2018年では72%が「再雇用したことがある」と回答。2016年の調査時から8%アップの結果となり、もはや“常識”となる日も近そうな勢いだ。

再雇用した理由

エン・ジャパン調べ

再雇用する理由については、「即戦力を求めていたから」が72%でトップ、「人となりが分かっているため安心だから」(68%)が続き、3位以下を大きく引き離す。見ず知らずの人材採用には当然リスクが伴う。一方で、元社員ならトップ2の理由のように企業にとって、ある程度戦力として計算できる安心感がある。外部での経験という付加価値もある。

8割以上が温かく迎え入れるという結果も

では、どんなルートで出戻りが成立するのか。トップは「本人からの直接応募」で59%。2位が「在職時の上司からの紹介」(31%)、3位「在職時の同僚からの紹介」(25%)となっている。昨今は、退職というより、“卒業”的な円満型も多く、退職後もパイプがつながっているケースも珍しくない。そうした状況が反映された結果といえそうだ。

出戻りのルート

エン・ジャパン調べ

この結果と相関するように、出戻り社員への職場の反応についても「良好」が83%と概ね温かく、再雇用は今後、慢性的な人材不足もあり、さらなる拡大が見込まれそうだ。一方で、再雇用の制度化については、わずか8%。2016年の調査時より4%減少している。この辺りは、今後の再雇用の予定についての回答で「自社に必要な能力があれば」が69%で断トツであることからも、決してなぁなぁではなく、シビアな側面がにじみ出ている。

出戻り社員への職場の反応

エン・ジャパン調べ

欲しいのはあくまでも優秀な人材――。元社員というアドバンデージはもちろんあるが、単に人となりが分かっているだけでは不十分。戦力となり得るかが、その採否を分けるということだ。出戻りルートのトップが「本人から直接」であり、企業側が制度化には消極的な側面を踏まえても、出戻りは単に“帰る場所”ということではない点は、ハッキリと線引きされているのかもしれない。

もっとも、終身雇用制度が機能していた時代は、一度辞めた人材はともすれば裏切り者扱いで冷ややかな目でみられた。だが、それも今は昔。元社員は、会社のことを知る人材として、素性の分からない人材より、半歩上をいく存在として温かい目を注いでもらえる。こうした職場弾力化は、日本全体の人材最適化にもつながり、結果的には人手不足緩和に間接的にその効果を発揮していくことになるのかもしれない。(続く)

提供:瓦版

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