AI時代に躍進できる企業の絶対条件とは (2018/4/24 瓦版)
AIが人生を左右するチカラを持ち始めている
AI(人工知能)の普及が加速している。様々なジャンルでAIが活用され、業務に革新をもたらしている。膨大なデータをクールに解析し、正確無比、偏見ゼロの“正解”を瞬時にはじき出すその仕事ぶりは、感情やバイアスが邪魔しがちな人間の弱点をカバーし、いまのところ社会を豊かにする技術として、頼もしく進展を続けている。
アルファ碁が世界トップの棋士を破ったように、AIが特定分野においては人間を凌駕することはもはや周知の事実だ。その進展とともに、社会での活用シーンは増大し、比例して人生の分岐点での利用も当たり前になりつつある。
例えば人事分野では、一次面接をAIで代替する企業が現れている。金融ジャンルでは大手金融機関が、来年度から融資判断にAIを活用することを決定した。医療領域では、画像解析で人間では難しい癌を発見――。いずれも、結果によっては人生が大きく左右される場面だ。
その力を使えば、人間では不可能だったことも可能になる可能性もある。それほどまでにAIのポテンシャルはすさまじいものがある。だからこそ見逃せない重要な視点がある。倫理的な視点だ。
例えば採用の場面で、ある特定タイプの人物は落とすよう設定する、独善的な条件設定で融資の審査落ちにする、などだ。AIを活用する企業に都合があるのは当然だろう。だが、そこに都合だけで不条理な設定が組み込まれるなら、AIは一転して、差別や偏見の増幅装置になりかねない…。感情を持たない、AIの負の側面ともいえるだろう。
AIを最大限に活用するために忘れてはいけないこと
マイクロソフトはさきごろ、AIによるソリューションの開発とその展開の中核にあるべき6つの基準を設定し、発表した。基準は次の6つ。プライバシーとセキュリティ、透明性、公平性、信頼性、多様性、説明責任。これらの基準が、同社の AI 製品とサービス設計の規範となっている。さらに同社では、製品がこれらの基準に準拠するかを制度的に確認するための社内委員会も設置している。
どの基準もAIの進展プロセスで軽視できない倫理的観点である一方、これまでのモノづくりでは十分に考慮されていなかった側面もあり、しっかりと向き合う必要があるだろう。なかでも透明性については、「どのようにしてAIが判断したかを人々が理解できるようAIシステムの機能に関する背景情報を提供し、潜在的な偏見、エラー、予期せぬ結果を容易に特定できるようにしなければならない」とあり、AIの“暴走”を抑止する必要性を示している。
前述の採用や融資の場面で、AIが落とす判定を下したとする。その場合、理由を説明することは当然の責務だ。まさか「AIが判定しましたので」の一言だけでは、済まないし、当事者も納得しないだろう。その意味で、この透明性については、どう捉え、どう対応するかが、今後AIが社会を豊かにするものになるかどうかの分水嶺といえるかもしれない。
まだまだ社会への影響力は微少だが、だからこそいまからでも取り掛かるべきAI活用に伴う倫理問題。ここをキチンとクリアできなければ、AIは、社会を無味乾燥にこそすれど、豊かにはしてくれないだろう。AIを最大限に活用し、事業を加速できるとすれば、同時にそれがもたらす負の側面への十分なケアもできる。それが、AI時代に躍進する絶対条件。そうでなければ、AI進展の先に明るい未来はないだろう。
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