健康を経営の軸に据えることがなぜ重要なのか (2017/12/14 瓦版)
ウェルネスアワードを受賞した経営者はなぜ健康を重視するのか
健康経営がジワジワと浸透している。社員は人財。そうした視点を重視し、第一に社員を会社の資産として捉える。人件費はそこへの投資とし、業績の向上はその結果として実現する。少子高齢化による人材不足などを背景に、社員満足度向上を重視する企業が増大。優秀人材の吸引力向上も相乗効果となり、業績を伸ばす企業が増え、次世代型の起業成功法則となりつつある。
「私が健康を意識し始めたのは、20歳ぐらいのころ。以来、34年、ずっと健康維持に努めています」。こう明かすのは、さきごろ『WELLNESS AWARD OF THE YEAR 2017』経営者部門を受賞したGMO会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏。その理由はいたって、シンプル。自分が人生でやりたいことを成し遂げるためだ。そのために最も重要となるのが、「健康」と同氏は明言する。
「21歳の時、やりたいことを全て手帳に片っ端から書きました。当時、自分の理想と現実が全く異なっていて、成功者の行動を知り、それを実践したカタチです。それをさらにピラミッドの表にして優先順位を付けるのですが、それらを実現するための幹となるのが健康。だから健康維持は徹底しています」
実現したい目標があるとする。そのためには、自身のパフォーマンスを最大化する必要がある。不健康では、まともな目標さえたてられないかもしれない。現在、4000人以上の社員のトップに立つ同氏は、激務ながら時間をねん出し、徹底した健康管理を実践。54歳とは思えない若々しさをキープしている。意識するポイントは5つ。(1)食事(2)睡眠(3)運動(4)検査(5)ポジティブシンキングだ。これらを34年間欠かすことなく実践することで、若い時に定めた目標を次々とクリアし、経営する会社も規模の拡大を続けている。
まさに健康経営の象徴といえるような熊谷氏の崇高なまでの健康意識。あくまで健康であることが自身のパフォーマンスの最大化につながるというブレない信念のもと、「楽じゃない。苦行と思う」といいながらも心と体の健康をキープし続ける姿勢は、お手本とするにふさわしいだろう。同賞で個人健康部門を受賞した高橋淳氏の事例は、高齢社会の働き方として尊敬に値する。
95歳の現役パイロットが元気な理由
高橋氏は御年95歳。シャキッと伸びた背筋や言動からはとうてい大正生まれには思えない佇まい。メガネをかけているが、実は視力は1.0。肉体の衰えもない。さらに驚きは、なんと現役のパイロットなのだ。その秘訣はどこにあるのか。「これまで年のことを意識したことがない。嫌なことを断る時だけ、年のせいにしていますよ」と高橋氏。もはや説明する必要もないだろう。10代でなると決めたパイロットの仕事を80年近く続けていること自体が、ストレスを溜めず、健康であり続けることにつながっており、その循環で今に至っているのだ。
社会人の大先輩である高橋氏には、多くの名言がある。“なんでも平等じゃない。だけどどんな状況にいても、楽しいことも必ずある。それを見つけて楽しく過ごすようにすればいいの”。腐っていることが恥ずかしくなる言葉だ。愚痴ばかりのサラリーマンには染み入りそうなこんな言葉もある。“いくら好きな仕事に就いても、楽しい仕事ばかりじゃない。生活のために嫌な仕事だってしなきゃならないこともある。家族を抱えていたらなおさら。でも、振り返ってみると、その嫌な仕事が後々、自分に力になっている”。人生100年時代といわれる昨今。ちょっとやそっとのことでめげている場合ではない…。
心と体の健康を支援する「人」や「企業」「サービス」「プロダクト」に焦点を当て、表彰する同イベント。その他各部門でも賞が贈られたが、ウェルネスをキーワードに経営や活動を捉えると、単に健康維持に留まらないあらゆるものの土台に「健康」が位置していることが際立ってくる。企業を中心としたこれまでの規模の拡大は、「健康」を犠牲にして成り立ってきた側面がある。これからは、まず働く人の健康。売上げアップや規模拡大はその結果としてついてくる――。働き方が過渡期にある中、企業の成功モデルもその根幹部分が大きなパラダイムシフトを迎えようとしているのかもしれない。
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