7割超の国民「軽症ゆえ救急車を使わず、自分で病院を受診せよ」との勧奨を受け入れ―内閣府世論調査 (2017/9/12 メディ・ウォッチ)
救急車を利用したことのある人のうち、15.2%は「夜間・休日で病院の診察時間外だったから」、11.1%は「救急車で病院に行ったほうが早く診てもらえるから」と答えている。また今後、症状が軽い人については「救急車を利用せず、自分で病院を受診する」という取り組みについて、67.6%の人が積極的に進めるべきと考え、7割超が「軽症ゆえ、自分で病院を受診してください」との勧めを受け入れる―。
こういった状況が、内閣府が9月11日に公表した「救急に関する世論調査」結果から明らかになりました。
「救急車のほうが早く診てもらえる」などの不適切な救急利用が1割超
救急搬送される人員は高齢者で伸びが大きく、中でも軽症者・中等症者の伸びが大きくなっています。また一部には「タクシー代わりに救急車を利用する」という不謹慎な患者の存在もしられています。このように軽症患者によって救急隊や救急対応の医療機関が多忙になれば、重篤で一刻も早い救急医療を真に必要としている患者が不利益を被ってしまいます。このため救急医療体制の充実と並んで、「国民が適切に救急医療を受診する」ことの重要性が指摘されています。
そうした中で内閣府は、全国に居住する18歳以上の日本国籍者3000人を対象に、救急医療に関する意見をアンケート調査、有効回答は1790人となりました。
まず、「救急車を呼んだこと、あるいは誰かに呼んでもらったことがあるか」については、全体では44.9%があると答えており、年齢階級別に見ると、50歳代(56.4%)、60歳代(49.1%)で多くなっています。
この44.9%の人に「救急車を呼んだ、呼んでもらった理由」(複数回答)を聞いたところ、「自力で動ける状態ではなかったから」52.2%、「生命の危険があると思ったから」41.7%という答えが多く、「自分自身で重篤な状態」と判断して救急車を要請する人が多いことが分かります。しかし、▼夜間・休日で病院の診察時間外だったから15.2%▼救急車で病院に行ったほうが早く診てもらえると思ったから11.1%▼どの病院に行けばよいか分からなかったから5.1%▼病院へ行く交通手段がなかったから3.4%―と、およそ救急搬送が必要ないと思われても仕方のない理由も一定程度あることが改めて分かりました。
ところで、患者は医療の専門家ではないため、自分が重症なのか軽症なのかを判断することは難しいのが実際です。救急要請をした理由の3番目にも「症状が重いか軽いか分からなかったから」(19.4%)があるとおりです。しかし、行政サイドも救急安心センター【♯7119】(救急車を呼んだほうがよいかなどの相談窓口)や小児救急でんわ相談【♯8000】などを用意していますが、国民の認知度はきわめて低調なことが明らかになっています。
7割弱の国民が「軽症者は自分で病院を受診してもらう」取り組みの推進を求める
では、症状の軽い人については「救急車を利用せず、自分で病院を受診してもらう」という取り組みについて、国民はどのように考えているのでしょうか。
この点、全体では67.6%とおよそ7割が「積極的に進めるべき」と考えていることが分かりました。もっとも年齢階層別に見ると若干の違いがあり、40歳代以下では7割超が「積極的に進めるべき」と考えていますが、60歳代では「積極的に進めるべき」と考える人が64.8%に減り、70歳以上では58.8%にとどまります。
また119番で救急車を要請した際に「症状が軽いので、(救急車を使わず)自分で病院を受診してください」と勧められた場合、73.6%の人が「その勧めを受け入れる」と回答しています。ここでも若い人ほど「勧めを受け入れる」割合が高く(30歳代では86.1%)、70歳以上では66.0%にとどまります。
なお、119番窓口で「症状が軽いので、(救急車を使わず)自分で病院を受診してください」と勧められた際には、「すぐに受診できる病院の紹介」を行ってほしいという声が7割以上あり、ほかに▼民間救急車などの紹介を行う▼医学的基準に基づいて救急車の必要性を判断する―ことなどを求める声も少なくありません。
ごく一部だが、風邪や擦り傷での救急車要請を「適正」と考えている
一方、救急車が現場に到着した際に、救急隊員が「症状が軽いので、(救急車を使わず)自分で病院を受診してください」と勧められた場合でも、72.6%の人が「その勧めを受け入れる」と回答しています。しかし50歳代、70歳以上では「勧めを受け入れる」人の割合が7割を切っている点が気になります。また、ここでも▼すぐに受診できる病院の紹介75.7%▼民間救急車などの紹介26.8%▼医学的基準に基づく判断25.8―などをセットで行うべきとの声が多くなっています。
なお、「救急車を利用してもよい」場面として、▼救急車以外の移動手段が思いつかない▼意識はあるがなんとなく不安▼交通事故から長時間経ったが、念のため診察してもらいたい▼病院・診療科が分からない―などは不適切と考える人が6割近くいますが、いずれの場面でも「適切」と考える人が一定以上いることも事実です。なお、「手足の擦り傷や日焼け」「軽い風邪」「お金をかけずに病院に行きたい」という理由について、ごく一部ではあるものの「適切」と考える人がいる点に注目する必要がありそうです。「モラルの低下」を嘆くだけでなく、冒頭に述べた「重篤で真に救急医療が必要な患者」が不利益を被らないよう、そろそろ一定のペナルティなどを考慮することが必要なのかもしれません。
このほか、心臓マッサージや人工呼吸などの応急手当については、「できない」という人が6割を占めている(70歳以上では8割弱)ものの、一定数の国民は応急手当講習を受けてみたいと考えている(▼45分程度の救命入門36.5%▼3時間程度の救命講習23.5%―など)ことなどが明らかになっています。
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