緊急を要しないのに110番、119番すると? (2016/1/13 法、納得!どっとこむ)
警察庁のまとめによれば、2015年1月から11月に全国の警察が受理した110番は約842万件で、前年より10万件減少したとのことです。
また、「一人で寂しい」というような緊急を要しない通報も約11%減少し、約184万件でした。
減少傾向にはあるものの、通報全体の21.9%を占めています。千葉県では、実際に「蛇が出た」「庭先でタヌキが寝ている」という通報が入ったとのことです。この他にも無言やいたずらが約14万件あったそうです。
このように、110番や119番に無言電話やいたずら電話をかけたり、緊急性を要しないのに110番や119番をするとどうなるのでしょうか?
無言電話・いたずら電話については、刑法の偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
刑法は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者」を処罰することを定めています(刑法233条)。
店舗の営業を妨害するために3ヶ月の間に約970回にわたり昼夜を問わず無言電話をかけた非常に悪質なケースで、裁判所は偽計業務妨害罪の成立を認めています(東京高判昭和59年4月27日)。
110番や119番に無言電話・いたずら電話を繰り返し行う場合、警察や消防機関の適正な業務を妨害するものとして非常に悪質と判断された場合には、この罪が適用されるおそれがあります。
偽計業務妨害罪となった場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
偽計業務妨害罪とまではならなくても、軽犯罪法により処罰される可能性もあります。
軽犯罪法は、「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」や「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」は、拘留又は科料に処すると定めています(軽犯罪法1条16号、31号)。警察への虚構犯罪通報や、消防署への虚構災害通報等はこれらによって処罰される可能性があります。
実際、上述の千葉県における無言・いたずら通報のうち11件17人については、軽犯罪法違反容疑で書類送検されています。
さらに、無言電話・いたずら電話・緊急性を要しないのに119番した場合には、消防法により罰せられる可能性もあります。
消防法では、「正当な理由がなく消防署…に火災発生の虚偽の通報又は」「傷病者に係る虚偽の通報をした者」について、30万円以下の罰金又は拘留に処する、と定めています(消防法44条20号)。
近年、救急車の不適切利用が問題となっています。風邪で病院に行きたいが交通手段がない、酒に酔った人から明らかに移動手段として使われる、といった救急車の不適切利用が増加しており、明らかに意図的で繰り返し行うような悪質なケースには消防法の罰則をもって対処するという意思を明確にしている自治体もあります。
緊急性のない警察への相談・要望は「#9110」(警察相談:全国)、救急車を呼ぶべきかどうか迷った時の相談窓口として「#8000」(小児救急電話相談:全国)、「#7119」(成人向け救急電話相談:東京や大阪など)がありますので、そういったものを利用するのもよいでしょう。
提供:法、納得!どっとこむ